アフターにほろ苦さがあると言われるが、ほかにどんな特徴があるのだろうか。
「香りだと和柑橘以外に、柿や和梨などの日本のフルーツフレーバーがふっと上がってきます。味わいは、みずみずしくフレッシュで、果実の甘やかさと酸味のバランスが取れていて、とてもニュートラルな品種です」と教えてくれたのは矢田部氏。
さらに、出汁の旨味のニュアンスもあり、これが料理との相性を広げてくれるポイントだという。今回は6アイテムを試飲し、甲州の特徴を探ってみた。
これぞ! 甲州6選
品種の個性が表現された6アイテムを紹介。
造り手や産地による味わいの違いを知り、お気に入りの1本を見付けよう。
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『酵母の泡 甲州 NV』(日本/山梨県)
生産者:マンズワイン
品種:甲州100%
希望小売価格:1877円(税込)
問い合わせ先:キッコーマンお客様相談センター
繊細ではつらつとした泡立ち。青リンゴやメロン、スイカズラなどのフレッシュな香りが心地いい。上品なアロマとさやわかな酸が相まって口当たりは穏やかで、ブドウのみずみずしさを感じる。すっきりと辛口でライトなスタイルのスパークリングワイン。
『甲州 アイ・ヴァインズ ヴィンヤード 2021年』(日本/山梨県)
生産者:シャトー酒折ワイナリー
品種:甲州100%
希望小売価格:1870円(税込)
問い合わせ先:シャトー酒折ワイナリー㈱
熟した和柑橘やグレープフルーツ、和梨の香りに続いて、アプリコットやリンゴのコンポート、カモミールの花の甘やかで落ち着いた香りが立ち上る。果実のまろやかさが表現された、旨味を伴った余韻が続く。穏やかで厚みのあるワイン。
『プレステージクラス オランジェ 2021年』(日本/山梨県)
生産者:ルミエールワイナリー
品種:甲州100%
希望小売価格:2640円(税込)
問い合わせ先:㈱ルミエール
カキやハッサク、ミカンなどの和のフルーツに、サフランやカモミール、クローヴや紅茶などのスキンコンタクト由来の複雑なアロマ。穏やかで丸みのある酸と果実味のバランスに優れ、中盤からはほろ苦さと旨味を感じる。豊かでやさしい味わい。
『グランポレール 山梨甲州〈樽発酵〉2020年』(日本/山梨県)
生産者:グランポレール
品種:甲州100%
希望小売価格:2759円(税込)
問い合わせ先:サッポロビール㈱
グレープフルーツなどの柑橘類の香りに、アプリコットやクリ、樽発酵由来のアーモンドなど、複雑性のある香りが重なる。味わいはドライで、しっかりした酸味と果実由来の甘やかさ、樽から来る香ばしさがワインの骨格を形成。心地いい余韻も魅力。
『安心院ワイン 諸矢 甲州 2021年』(日本/大分県)
生産者:三和酒類 安心院葡萄酒工房
品種:甲州100%
希望小売価格:2980円(税込)
問い合わせ先:三和酒類㈱ 安心院葡萄酒工房
スダチやカボスなどフレッシュな和柑橘のアロマに、白桃やアプリコット、ツゲの葉やセルフィーユも香りメリハリがある。口に含むと果実味と生き生きとした酸、土壌由来のミネラルを感じ、ほのかな苦味が全体をまとめる。クリーンでキレのあるワイン。
『サントリー フロムファーム 登美の丘 甲州 2020年』(日本/山梨県)
生産者:サントリー
品種:甲州100%
参考価格:5940円(税込)
問い合わせ先:サントリー㈱
ハッサクやミカンなどの和柑橘に、パイナップルや洋ナシ、ヴァニラの甘やかなアロマ。ジャスミンやミントなどのフレッシュなハーブ香も。ふくよかな果実味に張りのある酸がボディを与え、飲み応えがありジューシー。旨味を伴った余韻が続く。
※価格などのデータはすべて2022年9月現在のものです
どんな素材も引き立てる懐の深さが魅力
6本のワインを試飲し、樋口氏は「あらためて甲州の多様さに驚くと同時に、前菜からデザートまで甲州オンリーでペアリングができると確信しました。造りも味わいも本当にさまざまなスタイルがあり、和食だけでなく、ステーキなどの肉料理や、デザートにも合わせられます」と振り返った。
矢田部氏もスタイルの多様さとペアリングの可能性に注目。
「同じ山梨でも生産者ごとに違いがありましたし、大分のものは全く個性の異なる甲州でしたね。甲州には素材によって味わいが変化し、素材の持ち味を引き出すような、そんな魅力があります。世界的に繊細な料理が主流の今、甲州は時代の流れに合っていると思います」と締めくくった。
本誌では、各アイテムの味わいやペアリングをより詳しく考察。ぜひ参考にしながら、食卓でこそ輝く甲州を楽しんでいただきたい。
プロフィール
樋口真一郎氏 Shinichiro HIGUCHI
お笑いコンビ「髭男爵」のメンバー。2015年ワインエキスパート取得、(一社)日本ソムリエ協会名誉ソムリエ
矢田部匡且氏 Masakatsu YATABE
「東京エディション虎ノ門」ヘッドソムリエ。「パークハイアット
東京」「ワイン蔵Tokyo」「ジャン・ジョルジュ東京」に勤務後、「ピエール・ガニェール」シェフソムリエを経て現職