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“生涯ライオンズ”の道を選んだ源田壮亮 「FA流出球団」から脱却する価値ある大きな決断

週刊ベースボールONLINE

『年俸3億円の5年』の大型契約



西武と5年契約を結んだことを表明した源田

「長いお付き合いをよろしくお願いします」

 ファンに向けてのメッセージを口にすると、源田壮亮は少し照れながら穏やかに笑った。来季、2023年シーズン中に国内フリーエージェント(FA)権取得が見込まれているなか、球団側から先立って『年俸3億円の5年』という超大型契約の提示を受け、快く更改した(金額は推定)。

「縁があってドラフトでライオンズに獲ってもらい、ここまで育ててもらった恩がすごくあります。今の僕があるのは、ライオンズで野球をやってこられたからだと心から思う。僕自身、ライオンズが大好きで、毎日ライオンズの一員として野球をすることが本当に楽しいですし、ファンの方もいつも熱い応援をくださいます。球団から『最後までずっとライオンズでグラウンドに立ってほしい』と言っていただいてすごくうれしかったですし、僕も『これから先も、最後までずっとライオンズで野球をやりたいです』と伝え、こういう形になりました。本当にいいのかな? と思うぐらいの評価をしていただいたのですが、僕自身、現状では、それだけの評価をいただく選手ではないと思っているので、この5年契約が終わったときに、それに見合った選手になれているように努力していきたいなと思います」

 源田の言葉からも伝わるように、この一大決心は、つまり『生涯ライオンズ』を意味する。FA権はプロ野球選手が長年をかけて勝ち取る大切な権利であり、公に他球団から自分の市場価値を聞ける最高の機会である。当然、源田自身も「ほかの人や選手と話すと、いろんな考えがあるんだなというのは感じます」と、そのことは十分理解している。が、そのうえで、「けど、僕はもうけっこう早い段階から決めていたので。今はすごく西武ライオンズに感謝しています」。潔く“ライオンズ一筋”の道を選んだ。

 この決断を、直接交渉にあたった渡辺久信ゼネラルマネジャー(GM)も心底喜びホッと胸を撫で下ろすとともに、2013年限りで西武ライオンズ監督を退いて以降、アマチュア時代から見続けてきた源田への並々ならぬ思い入れを言葉にした。

「ゲンちゃんは、都市対抗だったり、前第二球場でのトヨタ自動車とウチの練習試合だったりを見てきているので、『ここまでの選手になったか』と感慨深いです。私が監督のときにも、ショートでは何人も使ったけど、なかなか決まらなかった。その時代を知っているだけに、彼がポンと入ったことで、あの年(2017年)からチームが変わったし、落ち着いた。その功績も大きいと思う。もちろん、ゲンちゃん一人だけのおかげじゃないんだけど、あそこに一人しっかりと守れる選手がいるというだけで、だいぶ戦い方も変わってきたと思うし、実際、ガラッと変わった。チームが一番苦しんでいるところに現れた、まさに救世主だよね。当然、『残ってほしい』『抜けられたら困る』という話はしましたし、『チームの顔として将来ずっと一緒にやっていきたい』という話をしました。そのうえで、『生涯ライオンズ』と言ってもらえてありがたいです」

 誠意はしっかりと伝わった。

栗山、中村の姿を見て


 また、このタイミングでのこの決断発表が、どれほどまでにライオンズファンの心を救うことになるだろうか。ここ10年を振り返っても、中島裕之(現宏之)、片岡治大(現保幸)、涌井秀章、岸孝之、炭谷銀仁朗、浅村栄斗と、毎年のように主力選手がFA権を行使し移籍していったなか、つい先日も森友哉がチームを去る姿を見送ったばかりだった。その失意がまだ癒えぬ最中に届いた「長いお付き合いを」の言葉。まるで、「僕はずっとそばにいるので、心配しないでついてきてください」と言わんばかりの言動に、堪えきれず感涙を流したファンも少なくないはずだ。渡辺GMも「ファンの思いも汲んでくれたなと思います」と、源田の心遣いを慮った。源田の優しさ、ファンも含めたライオンズへの深い愛情があふれ出ていると言わざるを得ない。

 そしてもうひとつ、この決断にはかけがえのない大きな価値がある。

『生涯ライオンズ』といえば、21年間ライオンズ一筋を貫き、チームの象徴として絶大な人気を誇る栗山巧、中村剛也の同級生コンビの存在がある。その一人栗山は、2018年のファンクラブ向けのインタビューで次のように語っている。

「ライオンズで長いことやっていくという、新たな歴史みたいなものを作っていきたい。で、その姿をもっと後輩たちにも見せてあげて、長いことライオンズでやることがこんなにも素晴らしいことだという、希望みたいなものを見てもらいたい」

 栗山の想いは、いま、しっかりと受け継がれたのである。

「栗山さん、中村さんの姿を見ていて、『将来こんなふうになりたいな』とか『すごいファンの方たちからも愛されているな』というのもいつも感じます。僕もライオンズで長くやって、こんなふうになりたいなと、ずっと憧れみたいなものはありました」

 さらに源田にとって大きいのが、11月5日、FA権行使の上、残留を表明した相棒・外崎修汰の存在だ。

「僕の中では、ライオンズで野球をやりたいという中でトノの存在というのはすごく大きくて。同い年で二遊間を一緒にやっていて、今年も一緒にゴールデン・グラブ賞が獲れて、『また来年からも一緒に頑張ろうや!』みたいにトノが言ってくれて。『よし、頑張ろうな!』と励まし合いました。この先も『いいコンビだな』ともっともっと言っていただけるような二遊間を作っていきたいなと思います。そして、ファンの方にとって、ずっと応援できる選手というのは特別なのかなと思います。栗山さん、中村さんという特別なお二人のように、トノと一緒に僕ら同級生二人も、そんな存在になれたらいいなと思います」

 こうした言葉を、入団時からレギュラーを張り続け、日本一の名遊撃手として12球団どこからも欲しがられる選手から聞かれた価値は、あまりに計り知れない。

“新レジェンド”の誕生


 これまでの歴史から、ライオンズは「出ていかれるチーム」との印象が強かったが、これを機に、そのレッテルを剥がすべきではないだろうか。事実、2018年の炭谷、浅村以降は、今年の森を除いては、金子侑司、十亀剣、増田達至、熊代聖人、岡田雅利、外崎修汰と残留の道を選んでいる。渡辺GMも「FA選手に関しては、こちらとしたら残ってほしいと思う選手ばかり。『出ていってもいいよ』なんて選手は一人もいない。みんながみんな、生え抜きで西武の中で育って、私の立場から、最後まで一緒にやりたいなと思う。ただ、こちらは誠意を示すだけで、どうにもできない権利。その中で、ここ最近は残ってくれる選手も多くなってきているのでありがたい」と、誠意が伝わり、徐々に形勢が変わりつつあることに手応えを感じていることも確かなようだ。その意味でも、源田の5年契約は、さらに後輩たちの契約、人事にも一石を投じることになるのではないだろうか。

「ライオンズの全部が好き。嫌なところがない」と話す源田の瞳は、ただただ澄み切っていた。

「松井稼頭央新監督になります。心機一転、チーム一丸となって、松井監督のやりたい野球をしっかりと体現できるようにみんなで頑張って、必ず優勝したいと思います」

 新時代ともいえる松井稼頭央監督体制の船出に、“新レジェンド”の誕生は最高の武器であり、宝となっていくだろう。

文=上岡真里江
 
   

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