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【エルピス 第5話 感想】岸本の強行突破に浅川がかけたひと言 2人の関係性が見える第5話

grape [グレイプ]

Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。

2022年10月スタートのテレビドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』(フジテレビ系)の見どころや考察を連載していきます。

時は2018年。12年前に起きた八頭尾山連続殺人事件の冤罪特集が深夜の情報番組『フライデーボンボン』で2回放送された後、突如棄却が決定した松本良夫(片岡正二郎)の再審請求。

冤罪を暴くことに身も心も入れ込んできた浅川恵那(長澤まさみ)と岸本拓朗(眞栄田郷敦)だったが、上層部から正式に放送と制作の中止を言い渡され、二人は何も口出しできなかった。

実際、視聴率も世間の反響も良かった。無関心でいる世の中の風向きが少しずつ変わり始めようとしたこのタイミングだ。

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数字が命の上層部だって、きっと第三弾を心待ちにしていたはずだった。

だが実際は、テレビの要となる報道にお気楽バラエティーは敵うはずがなかった。

現に、報道にいる齋藤(鈴木亮平)も制作中止の理由を、報道に検察などの大きな国家権力の圧がかかっているからだと考えていた。

制作者の墓場である『フライデーボンボン』だから捻り潰さ潰されたのではなく、バラエティーは、報道には逆らえないといったパワーバランスが働いているのだ。

そして岸本にこの話を持ちかけたチェリーこと大山さくら(三浦透子)が自殺を図っていた。

命は助かったものの、錯乱状態だったチェリーは、自分自身に殺意を向け、ベランダから身を乗り出したのだ。

松本のために真相追及していたチェリーだったが、それがかえって松本を追い詰めることになり、責任を感じているのだ。

浅川はそのチェリーの姿を見て、これ以上詮索することは危険だと判断し、引き返すことを決めてしまった。

手に入れた決定的な証言

一方の岸本はこの時、立派な髭を生やし、人が変わってしまったようだった。

友人を見殺しにした過去。『負け続けている』本当の自分を知り、彼は正義に縋ることでしか精神を保てる方法が見つからなくなっていたのだ。

それは、ここで諦めたくないと躍起になっていた、かつての浅川恵那のようだった。

「なんでこんなとこまで来ちゃったんだよ…」というぼやきは、タイヤがパンクしたまま加速し続ける自転車のハンドルをただ握り、後ろの自分が見えないようにする岸本の心の声なのだろう。

そんな彼が目を付けたのは、松本逮捕の決め手となった目撃証言だった。

当初報道された『ロン毛の男』の証言はいつの間にかすり替わり、いかにも松本を犯人に仕向けたような胡散臭い証言が取り上げられた。

これを証言した西澤正(世志男)の身辺を調べ始めると、10年前まで八頭尾山近くの町に住んでいたことが判明する。

その後も地道に現地で聞き込みを続ける中で、西澤の息子・健太の同級生だという男と接触することに成功した。

その男が語ったのは、西澤がDVをしていたという新情報だった。岸本は健太を探す理由を述べた上で、健太を介して母親との接触を試みた。

そして岸本は西澤の元妻・由美子に約束を取り付け、早速インタビューを行うが、そこで明かされたのは、隠された真実だった。

由美子は、西澤の証言を「あり得ない」とキッパリと否定する。その時刻は自宅で酔っ払って寝ており、八頭尾山で松本の姿を見ていたはずがなかったという。

そして金のために嘘の証言をしたという線も、身に覚えのない架空らしき会社からの振り込みという決定的証拠が裏付けていた。

由美子は涙ながらに謝罪し、ふと事件が起こった日のことを思い出していた。

あの日は獅子座流星群が流れる日だった。父親が暴力を振るう毎日、西澤家にとってこれが『普通』の日々となっていた。

その『普通』を変えたのは、流れ星を一緒に見ようという息子の言葉だった。そして一緒に星空を見上げたという。日常が麻痺した彼らにとって、この日は特別だった。

あの夜空だけは彼らに平等にあったのだ。そしてあの日、八頭尾山にいた井川晴美も、同じ空を。

こうして岸本は今後を揺るがす、決定的証言を手に入れた。

だがいつもなら喜んで報告する岸本の姿は、浅川の隣にいない。彼女はすでに齋藤正一という男に支配されていた。

無機質な恰好から、カジュアルな出立ちとなり、「好きな女とうまいもん食いたい」という甘い言葉に乗せられ、今日もまた、浅川の心は冤罪事件なんて忘れて、自分達マスコミの罪なんて考えず、完全に斎藤の元にあった。

そんな時、『ニュース8』のディレクター・滝川雄大(三浦貴大)から、斎藤が副総理・大門雄二(山路和弘)に可愛がられていると教えられ、浅川は驚く。

斎藤は多くは語らない男だ。知らなくていいことだと何かを隠し、優しさを見せる。

浅川はその優しさの裏側にあるものを見ようとしなかったのである。

再び距離が近づいた二人だったが、お互いの思惑をそう上手くは汲み取れないのだ。

岸本が抱えるもう1つの葛藤

一方岸本は、母・陸子(筒井真理子)との歪な関係にもケリをつけたかった。

陸子は「俺、この家出るね」と切り出した岸本の腕を掴み、「不自由なく暮らせたのは自分のおかげだ」と訴え、引き戻そうとする。

「お前を食わせているのはこの私だ!」という言葉をよく聞くが、自分が与えてきた愛をこうして裏切られるなんて思いもしないのである。

岸本は目も合わせようとしなかった。陸子は助けを求める声を無視し、大切な友人の命は一瞬にして消え去った。そしてその事実さえ、握り潰されてしまったのだ。

だが陸子も家庭を守るには権力者に倣うしか術がなかったのである。二人共、結局同じなのだ。

勝ちに留まるためには勝った者の前で平伏し、ひたすら負け続けるしかなかったのだ。

岸本はそのまま母を置いて家を飛び出してしまう。

閉じた岸本の扉を開いた唯一の人物は…

そして岸本は冤罪特集の3回目を独断で放送することに決めた。

岸本は嵌めようとした張本人であるであるボンボンガールの篠山あさみを利用しようとするも、差し替えVTRを渡す岸本の震える手を見て、事前に村井(岡部たかし)が差押えたため、放送はされなかった。

放送終わり、村井に呼び出された浅川は、その時初めて岸本が掴んだ真実を知ることになった。

浅川は、また真相が闇に葬られたことを嘆いていた岸本を呼び出し、「君は、本当にすごいことをしたね」と岸本を讃え、釈放の希望の光も見えてきたと前のめりに話した。

少し間を置き、やっと口を開いたかと思えば岸本は「俺ちょっと、雑炊食っていいですか?」と言い出す。

突然のことに失笑してしまうが、岸本は既に限界を迎えていたのにも関わらず、ずっとご飯を食べておらず、睡眠も取っていなかった。

元気に雑炊を平らげ、眠りにつく岸本を見て、浅川は安堵する。

岸本がたった一人で突っ走った結果、報道としての浅川を再び呼び覚ました。そして反対に、閉ざされた岸本の道をまた開いたのは、浅川ただ一人なのだ。

今回は、報道とバラエティー、国家権力とマスコミの絶対に逆らえぬ関係、斎藤と岸本の先輩・後輩の関係、斎藤と浅川の依存関係、岸本と母親歪な関係…と今回は特にパワーバランスに焦点が当たっていた。

それと対象に、浅川と岸本はお互いに良くも悪くも影響を及ぼし合っている関係なのだと言える。

夜がもう少しで明けようとしていた。

夜明けに岸本が感じたのは、真実を嫌う者が葬り去る闇の世界が晴れる、確かな自信なのだ。


[文・構成/grape編集部]

出典 エルピス ―希望、あるいは災い―

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