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山本千尋が『鎌倉殿の13人』で得た役者としての在り方 「トウはお守りのような存在に」

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――頼朝や政子(小池栄子)は今後も誰かが演じると思うのですが、トウというキャラクターは『鎌倉殿の13人』だけ。山本さんだけのキャラクターになりました。

山本:本当に宝物です。演じていても本当に実在していたんじゃないかと思うぐらいのディティールを書いてくださっていて。三谷さん、プロデューサーの清水(拓哉)さんをはじめ、スタッフの皆さんが長年にわたって企画した作品に、自分がこんなに素晴らしい役で携わらせていただけたこと、改めて感謝したいです。撮影に入る前に、所作指導の橘(芳慧)先生からは、「どれだけセリフがあるとか、出番があるかは重要じゃない。あなたがどんなキャラクターで出演できるかが大事」と声をかけてもらったんです。トウとして物語の中で生きる決意ができた、とても大切なお言葉でした。

――トウは暗殺者という役柄ゆえに、誰かの死や不在を感じるときに、出番がなくてもその存在を感じるキャラクターでした。山本さんご自身はそんなトウの背景をどう考えていたのでしょうか?

山本:オリジナルキャラクターなので、どんなにトウについて“勉強”しようと思っても資料もないし、答えがありません。だからこそ、三谷さんの言葉、書いたものを一つ残さず吸収しようと心がけました。あとは、梶原さんから吸収させていただいたものも非常に大きかったです。答えがないからこそ、いろんなパターンを楽しめましたし、現場でも振り切ったお芝居ができたと思います。本当に1話、1話の台本を頂くことが、私にとっての1番の役作りでした。三谷さんからは「変に考え込まず、相手をちゃんと見ていたら、絶対にいい芝居ができる」と声をかけていただきました。そのお言葉どおり、錚々たる俳優の皆さんたちを相手に、毎日が成長の場だったなと思います。その場での反応、咄嗟に出てきたものを表現するというのは、これまでの作品ではあまりできなかったことなので、自分の中で新たな引き出しが生まれた感覚です。

――そして、なんと言っても素晴らしかったのが、善児の最後となるシーンです。トウにとって善児は師でもあり、親の敵でもあり、父でもあり……。トウとして善児のことをどんなふうに山本さんは捉えていましたか?

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山本:おっしゃるとおりで、いろんな相反する感情をトウは善児に抱いていたと思います。10歳のときに、親を善児に殺されて、そのままなぜか育てられる。いつか、善児を殺すという思いを抱きながらも、10歳だから、この人に付いていかないと、自分は生きていけないかもしれないという諦めのようなものがあったと思うんです。暗殺の技を仕込まれて、憎い人のはずなのに、育ててくれたという恩が、少しずつ自分の中で湧きたくないけど湧いていくような複雑な心。実際、梶原さんにお会いしたときに、あまりにも素敵な人すぎて、トウも恩愛の方が勝ってしまうかもと思ったんです。リハーサルでお芝居を重ねていくときも、ちょうどいい間を梶原さんが掛け合いでアドバイスをくださって。私自身が梶原さんに嘘偽りない感謝と尊敬を抱いていたことも、トウの感情と重なる部分があったように思います。トウの人生を考えると、善児を殺して自分も死ぬという選択肢もあったように思うんです。でも、そうしなかったのは、善児から「お前は生きていけ」というメッセージをもらったんじゃないかなって。善児とトウの半生が、あのシーンから少しでも感じていただけていたらうれしいですね。

ーー間違いなく伝わっていると思います。

山本:本当ですか? 自分ではわからなくて、そう言っていただけてうれしい限りです。

●三谷組常連俳優の仲間入り?

――そして、トウといえば三浦義村(山本耕史)ですね。義村からの「俺の女になれ」は衝撃でした。

山本:「トウは義村のことをどう思っているんだ?」とたくさんの人から聞かれました(笑)。やっぱりそう思いますよね。視聴者の皆さんは義村のキャラクターも知っているから、「また口説いている」という感じだと思うんですけど、トウにとってはあんな言葉をかけられるのは初めてなわけですよね。トウが関わる人間は善児と義時ぐらいで、恋を経験することはもちろん、男性と話すことだってほとんどないわけです。だから思考が停止してしまったような感じですよね。そして、義村はトウが手こずってしまうほどの強さの持ち主でもあって。トウの人間らしさと義村の強さ、両方を見せることができたシーンになったかと思います。大河ドラマであんなに激しいアクションシーンはこれまでなかったようなので、三谷さんの愛といろんなアイデアを出してくださった義村役の(山本)耕史さんには本当に感謝です。『鎌倉殿の13人』は、史実を基にした物語ではありますが、演じる役者の声も拾い上げてくださり、それを物語に反映してくださっていると思うんです。私が言うのはおこがましいのですが、そんな三谷さんの溢れんばかりの愛が作品をより一層面白いものにしているんじゃないかと思います。

――トウと義村の関係は先々の物語にも関係してくるのでしょうか?

山本:「トウは義村の側室になるの?」「トウが義村を暗殺するの?」とこれもたくさん聞かれました(笑)。私からは何も言えないのですが、視聴者の方々にそんな思いを抱かせる三谷さんの脚本はすごいですよね。そして、義村を怪しく見せる耕史さんのお芝居の力も本当にすごいです。耕史さんとの共演は本当に得難い経験をさせていただきました。

――そして、本作では『誰かが、見ている』の共演者との再会もありました。特に“父”佐藤二朗さんとは……。

山本:初日にあったのが二朗さんだったんですよ! 二朗さんは私がクランクインして1週間後にアップだったので、会えたのは奇跡的なタイミングで。でも、二朗さんはメイク室ですっぴん状態のときに、話しかけてきたんです。すっぴんで恥ずかしいから向こうに言ってと伝えたのに、二朗さんと耕史さんがずっと後ろにいたんです(笑)。でも、そのやり取りのおかげで、初めましてのメイクさんをはじめとしたスタッフの皆さんともすぐに打ち解けることができてお二人には感謝しています。

――佐藤さんのほかにも『誰かが、見ている』から『鎌倉殿の13人』に出演している方は多いです。山本さんも「三谷組」常連の仲間入りですね。

山本:まだ2回目なので、まだまだです。でも、そうなれたら幸せですね。

――絶対に3回目もあると思います。それこそ、梶原さんと三谷組での共演がありそうですね。

山本:今度はすごく親バカなお父さんと過保護な娘のような役とか(笑)。

――山本さんにとって『鎌倉殿の13人』が本当に大切な作品になったことが伝わりました。

山本:本当に素晴らしい経験をさせていただきました。これだけ錚々たる俳優陣の皆様と一緒にお芝居する機会は、どれだけしたいと言ってもできない経験だと思うんです。大先輩たちと一緒にお芝居をして、自分が目指すべき場所を改めて知ることができましたし、こうなっていきたいという思いがとても強くなりました。そして、どんなすごい役者さんも、目の前のことを丹念に積み上げているということもこの現場で学びました。私も今後も焦ることなく、目の前の仕事にまっすぐに向き合い続けて、トウのようにもがきながら生きていけるといいなと思っています。

――出演者の皆さんから『鎌倉殿の13人』へのあふれる愛をとても感じます。

山本:そうなんです。こんな仲がいいことがあるのかというぐらい、愛に溢れた現場でした。物語ではあんなに殺し合っているのに(笑)。役者さんと、スタッフさんが何よりも楽しそうな姿というのは、座長の小栗(旬)さんが作り上げてくださった輪だと思いますし、三谷さんの作品への愛ゆえだと思います。キャスト・スタッフ全員が『鎌倉殿の13人』のファンだったなって。

(取材・文=石井達也)

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