男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?
できなかった答えあわせを、今ここで。
今週のテーマは「何度も二人で食事へ行くし、“好き”とも言われた。でも進まない関係って…?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:深夜までデートしても、彼にタクシーに押し込まれる…。「好き」と言うのに交際しない男の本心とは
「裕二さんは、私こと好きなの?」
5度目のデートの帰り道。突然確信をついてくる質問を麻里から投げかけれ、僕は思わず返答に詰まってしまった。
「え…」
なんと答えるのが正解なのだろうか。でもそもそも、好きでもない女性を5回もデートに誘わない。
「麻里ちゃんのこと、好きだよ」
「本当に…?」
疑いの目を僕に向けてくる麻里。この「好き」という言葉に偽りはない。でもこの後しばらくしてから、真剣に考えてみる。
― “好き”って、何だっけ…?
結局僕はこれ以上彼女の貴重な時間を奪うのは申し訳ないと思い、このデート以降、麻里には極力連絡をしないようにした。
いいなとは思っていたけれど、いざ真剣に付き合うとなると少し違うかなと思ったから…。
A1:少なからず好意はあるからデートに誘っている
麻里との出会いは、食事会だった。男女2対2での食事会だったけれど、この日僕は仕事が長引いて少し遅れてしまった。
「遅れてしまってごめんなさい!仕事が長引いてしまって…」
『ラ カーヴ ド ノア』へ到着し、慌てて謝ると目の前に綺麗な女性が美しく微笑んでいた。それが、麻里だった。
― 美人だな。
麻里をじっと見ていると急に目が合い、僕は耳のあたりが熱くなる。
「お仕事は何をされているんですか?」
「僕は今商社に勤めています」
たぶんこの日は表面的な会話しかしていないけれど、リアクションも良くて聞き上手な麻里と話しているのは楽しかった。
「じゃあ裕二さんは下から学習院なんですか?」
「まぁ一応」
「すごいですね!」
「全然ですよ」
フォアグラの旨味と濃厚なソースの相性が抜群の「シンプルなフォアグラリゾット」は絶品で、ワインがすすむ。それと同時に、話もどんどん弾んでいく。
「麻里さんは?何のお仕事をされているんですか?」
「私はIT関連の仕事で。渋谷にオフィスがあるんですけど…」
「え!すごい大企業じゃないですか。麻里さんのほうがすごい」
「まったくですよ〜」
そしてこの会話のなかで、僕は来週行きたい店を予約していたことを思い出す。食事を綺麗に食べている麻里を見て誘いたくなってきた。
― 予約の取れない人気店に連れて行ったら、喜んでくれそうだな…。グルメっぽいし。
「麻里さん、ビストロは好きですか?気になっている店があって、実は来週末予約が取れているんですけど…。行く人がいなくて」
「え!行きたいです!そんな貴重な一席、いいんですか?」
「うん、もちろん。麻里さんに一緒に行ってもらえたら嬉しいから」
こうして連絡先を交換し、スルッと次のデートの日程まで決まってしまった。
― いい出会いだったな。
帰り際、そう思った。しかも約束の店での初デートも楽しく、その次のデートもすぐに決まったほどだ。
だからここから何度もデートをすることになるのだけれど、デートを重ねるにつれてある思いが強くなっていった…。
A2:年齢と共に、恋愛に対する熱が冷めているから
3度目のデートで『ノセ・サヴォアフェール』に行った時も、麻里はとても喜んでくれた。
「うわ…美味しい!本当に裕二さんって、いつも美味しいお店に連れて行ってくれるよね。しかもこのお店話題になっていたから、ずっと来てみたかったの!」
料理にも雰囲気にも感動している麻里を見ていると、こちらまで嬉しくなる。
「麻里ちゃんって、美味しそうに食べるからいいよね」
「そんな、恥ずかしいからあまり見ないでくださいよ」
「良い意味で言ってるんだよ!」
「知ってますよ〜」
二人で微笑みながら食事をする。たしかに、はたから見れば僕たちはかなり仲の良い男女だろう。
「最近仕事は?忙しいの?」
「うん、お陰さまですごい忙しくて…。特にこれから年末にかけては忘年会とかも入ってくるから、夜も会食続きになりそう。麻里ちゃんは?」
「私も同じ感じかな。でも裕二さんほど仕事の会食はないけど。体、壊さないように気をつけてね」
「ありがとう。麻里ちゃんも」
僕の体まで気遣ってくれるし、本当にいい子だと思う。美人だし、一緒にいると楽しい。
最高峰の料理とペアリングを楽しんでいるうちに、あっという間に時間も過ぎている。
「ねぇ裕二さん、見て!すごくない??」
ディナーの終盤に登場した、19世紀から使われているというアンティークのダックプレスに僕たち二人は思わず息をのむ。
麻里が夢中で写真を撮っている隣で、僕はその様子を微笑ましく見守っていた。
ペアリングですっかり良い気持ちになっていた僕たちは、店を後にして、ほろ酔いで麻布十番の商店街のほうまで坂を下る。
「麻里ちゃん、もう一軒行こうよ」
「もちろん!」
お酒の強い麻里といると、必ず二軒目にも行った。
二軒目に行くというのは会話が弾んでいる証拠だし、お互いまだ帰りたくないと思っているからだ。
でも僕はここから麻里を家へ連れて帰ろうとか、何とかしようという気が起こらなかった。
「今日も楽しかったね〜。麻里ちゃん、無事に帰れる?心配だから着いたら連絡してね」
「わかった。今日もありがとう。ご馳走さまでした」
麻里を乗せたタクシーを見送り、僕は歩いて家へ帰ることにした。そして帰り際、夜空を見上げながら考える。
― これって、付き合う流れなのかな…。
麻里のことは好きか嫌いかで言えばだいぶ好きだ。こうやって二人きりで何度も食事に行くくらい。
でも交際という約束された関係を想像してみようとするが、どうも想像できない。
なぜなら悲しいかな、昔のように誰かに対して胸が焦がれるほど“好き”という思いや興味が湧かなくなってきているからだ。
「ただいま」
誰もいない部屋に対し、一人で呟いてみる。綺麗に掃除された部屋は居心地が良く、僕はお気に入りの革張りのソファにどかっと座り込んだ。
麻里のことは好きだし、付き合ってもいい。
でも一人の時間に慣れすぎて、若干恋愛が面倒になっている自分がいる。
何とかしないといけないことはわかっているけれど、別に今すぐ彼女を求めているわけではない。
だから結局、麻里に迫られて気がついた。
― 僕は今、別に誰とも交際する気がないんだな…。
いつかどこかで「年齢と共にトキメキが少なくなる。なぜなら脳も老化するから」と聞いた気がする。
まさにその通りで、10年前なら僕は麻里に食いついていたし、すぐに交際していたかもしれない。
年齢とともに恋愛に臆病になる…というが、要は恋愛が億劫になっているだけだ。
それに体の関係を持ってややこしくなるほうが面倒だという理性のほうが、欲望に打ち勝っている。
「どうやって人って好きになるんだっけな…」
そんなことを思いながら、広々としたキングサイズのベッドで、ひとり快適に眠りについた。
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2022年11月27日