いまのような「検索エンジン」の役割を果たすのではなく、「動画を見て楽しむ」というエンタメ要素が強かったなと感じています。
ーー最初のころはVlog形式で発信していましたよね。
竹脇:そうなんです。初めはニューヨークのヘルシーな情報やライフスタイルについての発信をしていました。
ただ、1年くらいYouTubeで動画投稿していても、まだそのころはチャンネル登録者数が300人ほどだったんです。
ひとつのターニングポイントになったのが2019年9月にアップした「ハンドクラップダンス」の動画でした。「2週間で10キロ痩せるダンス」をノーカットで踊ってみたところ、予想以上にバズりまして(笑)。この動画がきっかけで、チャンネル登録者数が一気に10,000人まで増えたんですよ。
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上げた動画が100万回再生に達するという初めてのバズを経験したことで、夫のダーウィンもYouTubeに興味を持つようになって。
もともと私がフィットネスインストラクターを志していたのを知っていたので、「ありのままの『まりな』で、フィットネス動画をやってみたら?」と夫から背中を押してもらったんです。
そこで、2020年1月くらいから宅トレに特化した動画を投稿するようになりました。
■取り繕うのではなく、素の自分を出したことで共感が広がった
ーー奇しくもコロナの前触れだった時期ということもあって、自宅で気軽にできるフィットネスやトレーニング系の動画は需要が高まっていました。このころはどのような心境で活動していましたか?
竹脇:とにかく明るく、ポジティブなものを届けたいという一心でしたね。2020年2月には10万人、そして2020年5月には100万人とチャンネル登録者数が増えていきました。でも、このような急激に知名度を上げる経験って、そう起きることでもないじゃないですか。なので葛藤ではないんですけど、“見られる立場としての責任”みたいなのはどこかで感じていましたね。
それこそ、バズる前までは動画を撮る上で「完璧に取り繕うこと」が必要だと思っていたんです。フィットネスの先生って、息も乱さずに綺麗な体の動かし方を披露し、一切疲れている姿を見せないで生徒たちを鼓舞させるというイメージを持っていました。
私も最初はそれに習おうとしていたんですが、バズった後でいろいろと自己分析してみると、全力で体を動かして疲れている姿を見せた方が、視聴者から受け入れられることがわかったんです。変に取り繕うとはせずに、素を出すこと、ポジティブなギャップを見せることが最善だと気づき、その後は「自分の持ち味として活かしていこう」という気持ちに変わりましたね。
ーーありのままの自分をさらけだすというか、堂々とフィットネスに取り組む姿勢を見せたことで、視聴者の共感を得ることができたわけですね。
竹脇:画面に向かって1人で動画撮影をしていますが、いまだと1日に500~1000個ほどコメントが来ていて、画面越しの向こうに「こんなにも運動を頑張っている人がいるんだ」と感じています。
たくさんの仲間がいて、繋がれる、一緒に頑張れる。YouTubeはまさに安心できる居場所になっていると思います。
私がYouTubeを始めてからは、視聴者と向き合うのではなく、同じ方向を向くことを大切にしています。先生と生徒の関係ではなく、フィットネスを楽しむ仲間同士が、横並びで頑張り合える関係性を育めるように心がけていますね。
■企業とのコラボも普段の動画コンテンツと変わらないスタンスで制作
ーー現在のチャンネル登録者数は300万人以上に上り、広告コンテンツを受けることも増えていると思います。通常の動画と企業コラボの動画を作る上で何か違いはありますか?
竹脇:そんなに大きくは変わらないですね。企業コラボだからといって、動画のテイストや雰囲気を変えるとかはないです。
というのも、私のチャンネルと親和性のある企業や、自分が普段から愛用している商品を扱っている企業とお付き合いしていて、全く関連性のないものは基本的にお受けしていないんですよ。
ーー竹脇さんの動画コンテンツの並びを見ていても、どれが企業コラボかわからないくらい、自然と溶け込んでいるのがすごく印象的でした。
竹脇:いつもの動画コンテンツに合わせる形でコラボする商品を扱い、広告色が出ないようなナチュラルさを意識していますね。
私のチャンネルを見てくださる視聴者の方々は、ダイエットやトレーニングなど何かの目的を持っているため、特に企業コンテンツではなくてもごく普通におすすめの商品やトレーニンググッズを紹介しているんですよ。
なので、企業コラボの商品を紹介するときも、あくまでその延長線で考えていて、視聴者の方々にも違和感なく、自然と商品の魅力が伝わっているんじゃないかなと思っています。
ーーそれでは最後に今後の目標について教えてください。
竹脇:私がやりたいのは「もっと自分を好きになる」人を増やすことです。自己肯定感を上げるためには、美容でもファッションでも料理でもいい。その手段のひとつとして宅トレがあり、フィットネスは頑張ったときの達成感や身体の変化を感じられたときの喜びを実感しやすいものだと考えています。
学校や会社の成績など、順位を意識する機会がどうしても多い世の中ですが、宅トレに関しては人と比べるものではなく、自分の身体のために頑張れるもの。身体の調子が上がれば心にもそれが現れ、ポジティブマインドを持つことができ、一番手軽に自己肯定感の向上につながるのがフィットネスです。今後も“宅トレを当たり前の世界に”をミッションに、さまざまな活動に取り組んでいきますので、応援のほどよろしくお願いします!
(取材=安田周平 構成=古田島大介)