テニスコートの隣の芝生広場では、中西による走り方教室が行われた。
「体を思い通りに動かせるようになるために、頭も使うメニューをします。頭も体も疲れますよ」(中西)
との言葉に、参加者の期待が高まるのが感じられる。
メニューは、3~4チームに分かれてのチーム戦形式で行われた。
一つ目と二つ目は、地面に並べたフープを使ったゲームだ。フープの中を両足でジャンプしながら進んだり、フープの中に置かれたテニスボールを順番に移動させたり。普段はなかなか行わないような動きをしているようで、息があがりがちな参加者もちらほら。車いすユーザーは、フープの横を移動してゲームに参加。お互いに応援しながら競い合うことで、自然とチームに一体感が生まれていく。
中西が笑顔で鼓舞する中、参加者も負けん気を前面に出しながらチャレンジ広告の後にも続きます
三つめは、4個×5列に並べられた5色のコーンの順番を入れ替え、同色の列を5つ完成させるというもの。移動してよいコーンは、1回につき2個までのため、効率よく完成させるためには、パズルを解くときのように頭を使う必要がある。チーム戦なので、スピードも大切だ。しかし、芝生の上では車いすが進みにくい。そのため、あるチームでは、自然発生的に同じチームの健常の子が車いすを押してサポートするシーンも。健常もパラも関係なく、一つのチームとして共に戦い勝ちを目指す、ということが自然と体現されていた。
最後は、陸上競技の練習で行われるマーク走。
「歩幅を一定に保つ練習です。速く走ろうとすると歩幅が大きくなりがちなのですが、効率よく走るためには、歩幅を広げ過ぎないことが大切なんです」(中西)
歩幅を一定に保つ大切さを説く中西。走るコツはパラも健常も同じだスピードに乗ってからも歩幅をキープするため、「腕をしっかり振って、足をさばいて」とアドバイス。このとき、車いすユーザーは別チームを作り、コーンの間を蛇行するスラローム走として行った。中学校では陸上部に所属しており、この夏から吉田テニス研修センターで車いすテニスを習い始めた本田遥士くん(中2)は、「陸上にもこんな楽しい練習方法があるんだと思った」と、まさに目からうろこの体験となったようだった。
最後は参加者に修了証を手渡し。パラアスリートと直接触れ合う貴重な機会となったどの参加者も、普段はやらないような動きにチャレンジしてクタクタになりつつも、充実の表情を見せていたのが印象的だった。修了式では、2チームに分かれて、それぞれ国枝と中西から終了証を手渡しされたのも、いい思い出になったに違いない。何より、障がいのある人とない人が当たり前に交じり合う光景に、東京大会のレガシーを強く感じるいいイベントだった。
「試合前に緊張したことがない」(中西)、「試合前は緊張状態を保ちたいから、こういう人とは話しません(笑)」(国枝)。二人の楽しいかけ合いに、イベントの雰囲気も一気にほぐれたtext by TEAM A
photo by Atsushi Mihara