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クレイトスは”究極の不器用で優しいお父ちゃん” 声優・三宅健太が『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』主人公に感じた、子を持つ父としてのシンパシー

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特に葛藤しているときのクレイトスというのは、どんどん自分を押し殺していくんですよ。声には出さない、息遣い、表情だけになっていく。 そうなってくると、声をやってる僕らとしては表現する幅が限られたり、違和感が出ないように演技をしていかなければいけないんですが、その大きい振り幅をいかに自分の中で処理して埋めていくかというのは、本当に悩みますね。

クレイトスの気持ちには何百ページに書いても収まりきらないぐらいの葛藤があるので、 自分の心の中でセリフとセリフの間にちゃんと意識を保てるかという集中力も必要です。苦労をそのまま「苦労した」と出せればもう少し気は楽なんですけど、そうではないので。

――いまのお話を聞いていても、やはり三宅さんがクレイトスに重なる部分が多いから、そのように感じられるのかなと思います。

三宅:僕が勝手に重ねている部分はあるんですけれども……重ねちゃいますね(笑)。でも、それがあるからシーンを順不同で録ったとしても、気持ちが切れずに一声出していけるという良さもあります。

――以前にクレイトス役を務めていた玄田哲章さんと声優を交代される際、「彼の過去の演技を聞かないようにしていた」という過去のインタビューを拝見しました。今回のお仕事を経て、三宅さんの中には「クレイトスはこんな男だ」というイメージはありますか。

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三宅:もちろん先輩から学ぶものは多いにあるのですが、今回の『ゴッド・オブ・ウォー』では、「新しいスタートを切る」というお話をうかがっていました。それまでを踏襲してやるというのも1つの表現方法だし、それはそれで素晴らしいと思いますけど、今作ではそれまでにはなかった、父親という新たな材料が加わっています。なので本当に新たなクレイトスを作り上げていくなかで、僕の中では「一線を引かなきゃいけない」と思っちゃったんですよね。実際、アトレウスという新たな大きな存在が来てからのクレイトスっていうのは、僕も「生まれ変わったぐらいに思わないと演じられないよな」と思ったんです。

だから先輩には「ごめんなさい」という気持ちをもちつつ、今回は「神であるのと同時に、父親であるクレイトスをやろう」と、自分の中で区切りをつけました。本当に生きざまや戦う姿だけですべてを伝えようとする、“究極に不器用で優しいお父ちゃん”というか。

――背中で語るタイプの父親みたいな。

三宅:多分そうなれたら、また物語が違ったんでしょうね。ところが、このアトレウスがまたすごく壮明な子なんですよ。でも心情面ですごく未熟な部分もあって。アトレウスはお母さんでありクレイトスの妻であるフェイ譲りの冷静で懐の深いところをもちつつ、本人なりの頑固さを秘めている。だから、クレイトスとぶつかるんです。「背中で語ってんのね。でも、言ってくれなきゃわかんないよ!」と正面から言えちゃうし、「父さん……」と自分の中で何も言わずに納得するところもまたかっこいい。

『ゴッド・オブ・ウォー』に関しては、そういうやり取りも面白くて。背中で語りたいんだけど、語らせてもらえないお父さんという一面が見られるんです。だからクレイトスはつたないなりにも、まるで戦いの作戦を練るように、自分で言葉をちゃんと選んでいくんですよね。こういう、アトレウスとクレイトスの感情のぶつかり合いの奇妙なずれ感が、独特の関係性を生んでいるように思えます。

――アトレウス役の村中知さんとは、お仕事でお話をする機会はありましたか。

三宅:ちょうど収録が始まった当初がコロナ禍になったこともあって、現場で役者同士で 一緒になる機会がちょっと減った時期でした。ただ偶然、『ゴッド・オブ・ウォー』の収録ではないところで村中さんとお会いする機会があって、「次回からアトレウス役を担当します」と言われ、すごくドキドキしました。前作は小林由美子さんだったので、つまりアトレウスが声変わりをしたんですよね。

幼かったころと年ごろを迎えたときって、やっぱり人ってまたパーソナルが変わってくるじゃないですか。だから、今回村中さんが演じたアトレウスを聴いて、「どっちもアトレウスだ。年ごろのアトレウスはこうなるんだ」と。彼女もすごくプレッシャーだったと思いますが、僕の中にはすんなり入ってきましたね。 不思議なもんで、やっぱりアトレウスはアトレウスなんです。

――本作は北欧神話における終末の出来事が題材となっており、ストーリーは重めだと思うのですが、三宅さんの感想はいかがでしょうか。

三宅:今作の『ラグナロク』に関しては、前作から続く親子の物語にもある種の決着がつくところもあって、「クレイトスがものすごく翻弄されるストーリーだな」と感じています。前作も前作で翻弄されてはいるんですが、今回はアトレウスがさらに自立していく物語でもあるので、もちろんストーリーとしては重厚だし、彼を送り出す過程も濃厚に描かれている作品なので、親目線で見ると一抹の寂しさは感じます。

この1歩を踏み出して未来があるのか、破滅に向かうのか。アトレウスも神になるのか、悪魔になるのか。といった両極端な選択肢にもすごく翻弄されますし、今作では「本当にこのこの選択で良かったのか」という会話も多いです。ただ、世界の終末ももちろん大事だけれど、やっぱり息子のことがどうしても気になるというところは、比重として大きいというか……僕は9割そのつもりでいます。

ゲームの端々でもクレイトスがアトレウスに「お前が生きてくれていれば、それでいいんだ。ほかには何も望まない」というようなことを言いますが、そこは一貫していますね。クレイトスにとって、世界の命運うんぬんというのは、やっぱり息子を送り出してからの物語なわけで、いかにアトレウスを守るか、育てるかというところにウェイトがあるので、世界のどこよりもアトレウスという目線になりますね。

――三宅さんは、クレイトスのような強い男になるにはどうすればいいと思いますか。

三宅:僕が聞きたいですよ(笑)。クレイトスは確かに強いですよ。戦いは。でも、父としてはそんなに強くはないんですよ。彼は『ラグナロク』で前作以上に、アトレウスをはじめ、いろんな仲間に自分の苦悩や葛藤をちょいちょい出していくんですよ。その結果、いろんなことが解決したり、進む方向が見えるんです。

ということは、たとえば体を鍛えたり、いろんな知識をつけたり、クレイトス目線で言えば、武力をつけたりすることも大事なんでしょうけど、強い人は自分の弱さを言葉にできるんですよ。それを人に伝えて、自分の弱さを誰かと共有して、解決策や道筋を見つけていく。結果的には、そういうところが強いんじゃないですかね。

――周りに仲間や支えてくれる人がいることが大事だと。

三宅:クレイトスは自分の弱さを隠すのではなく、仲間や家族にちゃんと言える。そんな気がしますね。実際に演じていても、物語ではクレイトスがどんどん前に進んでいるんですよ。僕は1番できないかもしれないです(笑)。難しい。その要素を見せることによって相手に無用な心配をかけるというリスクもありますし。人に弱さを言える、そして頼ることができるようになれば、本当に強い人になれるんじゃないかな。

そういえば、旅の案内役のミーミルもそうですね。ずっと世話を焼いてくれて、いっぱいおしゃべりしてくれるから、ふさぎがちなクレイトスが徐々に感情を出してきますし。なにより、アトレウスとぶつかり合うことで、親子としての新たな道を一緒に見つけていきますからね。自分で言っていて、心が痛いです(笑)。そうありたいですよね、本当に。でも僕もクレイトスの声をやらせていただいているので、そういうところも善処して生きていきたいとは思います。

――クレイトスはどこまでいっても、人間くさいところがあるんですね。

三宅:前作と今作で、本当に人間くさくなりました。だから今回の『ラグナロク』は本当に 、“人間・クレイトスの旅”と言っても過言ではないのかもしれない。 そこはプレイしたみなさんが感じていただくことだと思うのですが、僕はちょっとそんな風に思ったり。

――ありがとうございます。では最後にプレイヤーの方に向けて、今作のどういったところを1番楽しんでもらいたいですか。

三宅:もう全部楽しんでもらいたいですよ。楽しめない場所はないと思っています。本当に物語は重厚だし、キャラクターたちのやり取りも本当に生々しく作られていますから。戦闘では前作同様、斧は投げますし、槍も使いますし、鎖が強くて爽快ですね。ユーザーさんによって楽しみたいところは違うと思うんですけど、戦闘も熱く楽しめますし、ボリュームのあるストーリーも楽しめるし、「自分で選択をしていきたいんだ」という人も、自分で選ぶ局面が多々ありますから。

どこでも楽しめるのが魅力なので、すべてを楽しんでください。本当に1個じゃないです。僕個人としては、アトレウスやいろんな大事な人たちに囲まれているクレイトスを見てくれたら、すごく嬉しいですね。どこか孤独だったクレイトスが今回の『ラグナロク』で新たなチームや家族に囲まれて物語を歩んでいる部分が色濃くでているので、ぜひ注目してみていただきたいです。
(文・写真・取材=高橋健)

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