■8年越しの静かな決意
湊斗は自分の中の時計を進めるためにも、紬と想、双方の背中を再び押す。想のためにサッカー部のメンバーを集め、自分が紬から身を引くことを決める。その瞬間、全員が傷つくとわかっていても。「紬、想の横にいる時が一番かわいいんだよね。知らなかったでしょ?」と言う湊斗の言葉には、“すごく仲の良い友達”と“すごく好きな人”をとことん想っている彼ゆえに見えてしまう景色や背景が浮かび上がる。そのことに気付いてしまった自分をもう今度こそ見過ごしたくはないという8年越しの静かな決意があったようにも思えた。
第1話で「それ想に言ってやって」と高校生の紬を想の元へ送り出した湊斗が、今度は「呼んであげて。紬も、『紬』って。喜ぶから」と想にこれからを託した。紬が湊斗に想のことを相談する姿を見るのはまだ少し胸が痛む。それでも少なくとも高校時代や少し前のように、湊斗だけが双方の想いや状況を手に取るようにわかってしまい、全容が見えてしまってはいない、というのはある意味救いのようにも思える。
第3話で湊斗の指から飛んでいったてんとう虫は、第7話で想が男の子を抱っこしてとってあげた絵本のところに。湊斗が運んでいった幸運で想がどんな日々を歩んでいくのか、そしてもちろん湊斗の幸せも願わずにはいられない。
(佳香(かこ))