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オオカミ少年にならないように|杉江勇次 日本テレビ気象デスク②

防災ニッポン

ただ、この警戒レベルに気象庁が出す大雨や高潮に関する特別警報、警報、注意報などを結びつけているのですが、非常に複雑になってきています。

大雨を降らせるとして、今年(2022年)から予測情報が提供されるようになった「線状降水帯」や、今年(2022年)夏に100回以上も発表された「記録的短時間大雨情報」も直接は警戒レベルに結びついていません。気象庁もこの辺はよくわかっていて、気象庁と国交省で今年(2022年)から検討会をたちあげて9月に中間とりまとめが出ました。防災気象情報は今後、もっとわかりやすくなっていくと思いますけれど、現時点では、我々がテレビにのせてわかりやすくメッセージを伝えていかなければなりません。

説明:気象庁から段階的に発表される防災気象情報と対応する行動(気象庁HPから)

数値予報には限界がある

数値予報の科学的な限界もあります。雨雲が発達する時の大気の動きは複雑で、入力する値を少し変えるだけで、これからどんどん大きくなるとか、弱まるとか、方向性が全く違ってしまうこともあります。

例えば、今年(2022年)8月に山形や新潟などで大雨特別警報が出たのですが、あのとき線状降水帯ができて、当初、24時間の降水量が150ミリという予報に対し、多いところでは500ミリ以上も降ったのです。2017年の九州北部豪雨でも100ミリという予想に対し、600ミリくらい降りましたし、2020年の九州豪雨で熊本県の球磨川が氾濫した時も予想をはるかに超える雨量がありました。今年の夏も「えっ、こんなに雨雲が発達するの?」ということを何度も経験しました。

受け取る人の生活を考える

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天気自体の予報だけでなく、メッセージを受け取る人の生活も考えなければなりません。その点で、朝のニュースよりも、午後、夕方になり、夜にかけて大雨が降りそうな時の情報の伝え方は難しいです。

都合の悪いことに、線状降水帯が発生するのは夜間に多いのです。夜間の方が上空の温度が冷えて対流が不安定になりやすい。ほかの条件も重なって、昼間はさほどでなくても、未明から明け方にかけて線状降水帯が発生する頻度が目立って高いのです。

明るいうちは避難するにも周囲を見渡せますが、夜に大雨の中、避難するとなると、見えないところで側溝があふれ出したり、マンホールの蓋が開いていたりするかもしれません。早めに避難した方が良いのですが、避難、避難と煽りすぎてもいけません。夜に入り、どこまで雨雲が発達していくのかを見極めなければならない。

大雨は人命に直結しますので、自分がどう伝えたかはいつもシビアに見つめ直します。うまく伝えられた時よりも、見立てを超える雨が降ってしまった時の落ち込みの方が大きいです。「なんでこうなったんだろう」という自問自答の繰り返しです。

※杉江勇次さんの日本テレビ気象デスク③ 東京の雪予報は気象予報士泣かせ

<プロフィル>
杉江 勇次(すぎえ・ゆうじ)
気象予報士、日本テレビお天気キャスター・気象デスク
1968年千葉県松戸市生まれ。中央大学理工学部卒業。富士通でシステムエンジニアとして3年間勤務。退社後、1996年ウェザーマップ入社。TBSでおはようクジラ、ニュースの森などの天気予報を務めたのち、2002年から日本テレビで昼の天気予報を担当。「ズームイン!!サタデー」や「news every.サタデー」に出演するほか、朝から夜にかけて、様々な番組で天気予報のほか気象デスクも担当している。特技のドラム演奏で天気を表現するドラマチック天気予報も行っていた。

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