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オオカミ少年にならないように|杉江勇次 日本テレビ気象デスク②

防災ニッポン

台風「接近の恐れ」か「直撃」か

気象予報士の仕事をしていると話題性と正確性の担保の間で悩むことがあります。

例えば、台風の予報円が何日か後に関東地方にかかったとします。その時に「関東直撃の恐れ」とか、「首都圏上陸の恐れ」とか言えば、多くの人の注意を引きつけられますよね。ただ、5日後の予報円が関東にちょっとかかっているくらいなら、まだその確率は低いです。3日先の予報ならいいのではないかとか、あと、台風といっても、あんまり雨雲を伴わない豆台風だったら、そんなに警告を発する必要はないのではないか、とかあれこれ考えます。

テレビ局に詰めていると、ディレクターさんから「他局は『関東直撃の恐れ』と言っているのになぜうちは報じないの」などの連絡を受けますが、まだ確率が低くて判断がつかない時は、話し合って「関東接近の恐れ」に直していただいたこともあります。

自分で記事を書くときも、南の海上に台風になりそうな熱帯低気圧が発生したとして、「台風になりそうな熱帯低気圧が発生し、日本の南へ北上の恐れ」とするのか、台風をやめて「熱帯低気圧が発生し、日本の南へ北上の恐れ」とするのか、また、日本に近づくかどうかも不確実だと判断して単に「熱帯低気圧が発生した」とするのか、さまざまな伝え方を考えます。

情報を日本語で伝える時にどの程度のインパクトで表現するか。言葉を一つ一つ、吟味して考えています。

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煽りすぎてオオカミ少年になってはいけない。本当に避難が必要な時に、的確なメッセージを伝えたい。多くの気象予報士さんの共通の悩みだと思います。

複雑化する防災気象情報

いよいよ大雨が降りそうだとなった時の情報の出し方はさらに難しくなります。最近では、気象庁が出す防災気象情報も特別警報や土砂災害警戒情報、顕著な大雨に関する情報(線状降水帯発生情報)など新しいものが次々に登場し、また、大雨警報も土砂災害と浸水害に分かれているなどきめ細かくなった一方で、一般の人にわかりにくくなってきたのも事実です。

2018年の西日本豪雨の後、避難のタイミングを逃した人が多かった反省から、翌年5月、自治体が1~5の警戒レベルに合わせた避難情報を発表することになりました。それでも、その年の秋に東日本を襲った台風19号では逃げ遅れた人が多数いました。自治体が発出する避難の呼びかけには、「避難指示」と「避難勧告」があったのですが、台風19号について被災した住民に調査すると、「避難勧告」を避難開始のタイミングと考えていない人が半数以上もいたという結果が出ました。そこで(2021年に)避難勧告は廃止され、避難指示に一本化されました。国も災害のたびに教訓を探り、より良いものをつくろうと試行錯誤しているわけです。

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