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宇多田ヒカルの名曲に対する、完璧な“解釈”によって誕生した「First Love 初恋」

MOVIE WALKER PRESS

宇多田ヒカルの名曲に対する、完璧な“解釈”によって誕生した「First Love 初恋」

エンタテインメントに特化した世界最大級の動画配信サービスを提供するNetflixが原案・企画・製作を手掛け、監督・脚本に寒竹ゆり、W主演に満島ひかり、佐藤健を迎えたNetflixシリーズ「First Love 初恋」が11月24日(木)より独占配信される。

1999年に発表され大ヒットした宇多田ヒカルの珠玉の名曲「First Love」、その19年後に発表された「初恋」。この2つの楽曲にインスパイアされ新しいストーリーを紡ぎだす本作。それは90年代後半と、ゼロ年代、そして現在の3つの時代が交錯し、20年余りに渡る忘れられない“初恋”の記憶をたどる一組の男女の物語。満島ひかりが演じるのは、CAを目指すも不慮の事故で運命に翻弄される野口也英。佐藤健は、航空自衛隊のパイロットになるも、現在は別の道を進む並木晴道を演じる。

映画やドラマに欠かせない存在であり、物語のエモーションを何倍にも増幅させる主題歌。いわば強力な助っ人的存在だが、こと宇多田ヒカルにおいてはその貢献度が飛びぬけている。1998年の日本デビューから今日に至るまで、映画・ドラマ・TVアニメ・ゲーム・CM等、ジャンルを問わずに多くの作品に光を灯してきた。

たとえば木村拓哉主演の大ヒットドラマ「HERO」の主題歌「Can You Keep A Secret?」。リアルタイムでこのドラマを通った者ならば、冒頭の「近づきたいよ 君の理想に」を聴くだけで当時が鮮明に蘇ってくるのではないか。衝撃展開が話題を集めた「ラスト・フレンズ」の主題歌「Prisoner Of Love」、数多くの賞に輝いた「最愛」の主題歌「君に夢中」と、時代を作った作品に楽曲を提供し続けているのも彼女の特徴。CMであればやはり「This Is Love」だろう。日清カップヌードル×大友克洋がコラボレーションを果たした夢の企画で、鮮烈なイントロから始まるこの曲は無二の存在感を放っていた。

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」と「KINGDOM HEARTS」、この二つのシリーズにおいては単なる主題歌という枠を超えた領域に達しており、宇多田のテーマソングなしでは考えられない。「Beautiful World」「桜流し」「One Last Kiss」、そして「光」や「Passion」「誓い」――いずれも作品の世界観と強く結びついている。

各作品のカラーを反映しつつも、楽曲単体でも強いメッセージ性をたたえているのも宇多田の楽曲ならでは。映画『CASSHERN』(04)の主題歌「誰かの願いが叶うころ」は「誰かの願いが叶うころ あの子が泣いてるよ」「みんなの願いは同時には叶わない」という痛みを帯びた現実を鋭く言い表しており、『春の雪』(05)の主題歌「Be My Last」は「母さんどうして 育てたものまで 自分で壊さなきゃならない日がくるの?」という問いかけから始まり、聴く者の胸を貫く。「いつか結ばれるより 今夜一時間会いたい」という哀切でリアルな恋慕の表現も、脳裏に刻まれることだろう。“愛”の卓越した言語化は宇多田の武器のひとつといえるが、『DESTINY 鎌倉ものがたり』(17)の主題歌「あなた」では表題通り、大切な存在への想いを温かくも切々と訴えている。

このように、タイアップ曲の一部を見ただけでも存分に語りがいのある宇多田ヒカルだが、その輝かしい歩みに、2022年新たなる1ページが刻まれることとなった。「First Love」と「初恋」、この2つ目の名曲にインスパイアされたNetflixシリーズ「First Love 初恋」全9話が11月24日より配信されるのだ。

いま述べたように、本作は作品がまずあって主題歌を書き下ろす・提供するのではなく、宇多田ありきの企画。「劇中の重要なシーンで流れる」といったレベルを超えて、物語全体の最重要なキーでありメインテーマとして据えられている。本作は、1998年に恋に落ちた高校生の男女がたどる約20年間の歩みを切なく描いたラブストーリー。

なぜ1998年なのか?それはこの年が宇多田のCDデビューイヤーだから。北海道の田舎町で出会った高校生の也英(八木莉可子)と晴道(木戸大聖)は互いに惹かれあい、交際をスタート。ちょうどその時期、ふたりと同世代の天才ミュージシャンが列島を騒がせていた。その名は、宇多田ヒカル――といった具合に、物語にがっつり組み込まれているのだ。

そして、也英と晴道の思い出の曲になるのが「First Love」。イヤフォンを分け合い、何度も何度も聴き続けたこの曲は、その後にある事件に巻き込まれ、離ればなれになってしまった也英(満島ひかり)と晴道(佐藤健)の人生の節目で大きな影響を与えていく。あるときはタクシーのラジオから流れてきて、そしてあるときは懐かしいCDプレイヤーを再生したとき…。「First Love」が二人の初恋の記憶を呼び覚まし、各々がとる行動を変えていくのだ。

さらには歌詞も物語の展開に直結しており、サビの「You are always gonna be my love いつか誰かとまた恋に落ちても I’ll remember to love」はもちろんのこと、「最後のキスは タバコのflavorがした」もきっちりとカバーする粋な演出が施されている。さりげなく描かれるシーンであっても、宇多田の楽曲に魅了されたファンにはシンクロ具合にニヤリとさせられることだろう。

「First Love」と同様に本作の柱となっているのが、「初恋」。こちらにおいては、作品のテーマを完全に体現しており(「初恋」で描かれるテーマが、そのまま「First Love 初恋」に重なる)、全話観終えた後にもう一度楽曲を聴くとすべて合点がいくつくりになっている。これは也英と晴道だけではなく、劇中で描かれるそのほかの人物の恋模様、例えば晴道が出会う少年・綴(荒木飛羽)やダンサーの詩(アオイヤマダ)にもつながっていき、すべての初恋を経験した人々のテーマソングとして響き渡る。まさに「もしもあなたに出会わずにいたら 私はただ生きていたかもしれない 生まれてきた意味も知らずに」であり、苦悩し傷つきながらも恋に身を任せて走り出す人物たちの姿は「欲しいものが 手の届くとこに見える 追わずにいられるわけがない 正しいのかなんて本当は 誰も知らない」とオーバーラップする。

つまり、「初恋」自体が「First Love 初恋」であるという特異な状態。分かちがたいほど強く結びついているがため、具体例を述べるとネタバレにもつながってしまう恐れがあるのだが――1点だけ、観賞前にぜひ注目していただきたいポイントを最後に挙げたい。それは、以下に記す歌詞だ。

「うるさいほどに高鳴る胸が 柄にもなく竦む足が今 静かに頬を伝う涙が 私に知らせる これが初恋と」

この部分を頭の片隅に置き、心に留めたうえで「First Love 初恋」を視聴したとき、あるシーンで涙が止まらなくなるはずだ。そう断言できるほど、ドラマティックで完璧な“解釈”が本作には流れている。「First Love」「初恋」から生まれたドラマ「First Love 初恋」。その神髄を、楽曲面からも堪能いただきたい。

文/SYO

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