とにかく穂香を演じる伊原六花の四股が美しい。誰もが見とれる美しい四股だけでなく、すり足、鉄砲、股割りなどの相撲独自の動きを難なくこなすのは、ダンスとバレエの経験がある上、相撲の稽古を数か月重ねた伊原ならではだろう(難なく四股を100回連続で踏めるようになったそう!?)。
わんぱく相撲で男の子を倒した経験があり、「相撲はバランスの奇跡。体の小さい者が大きい者を倒せるスポーツ」と話す穂香は、いつか男女一緒に同じ土俵で戦うことを夢見ている。手持ち無沙汰になると電柱相手に鉄砲をするぐらい、誰よりも相撲を愛し、誰よりも相撲に本気で打ち込んでいる穂香だが、相撲部のOBたちには存在すら無視されているという状況。もちろん、男子たちの試合に出ることはかなわない。

神事をルーツに持つ大相撲は女性が土俵に上がることを禁じているなど、伝統という名のもとに旧来の男性優位の日本社会を色濃く残している部分がある。一方で、女子相撲に有力選手が登場し、アマチュアの大会には女子の部も増えてきている。また、オリンピック競技として相撲を認めてもらうために女子相撲の普及を進めていく動きもある(オリンピック競技には女子での普及実績が重要)。映画『シコふんじゃった。』には女子マネージャーの正子(梅本律子)が男性にふんして土俵に上がる場面があったが、女性相撲部員の穂香はその存在を一歩も二歩も推し進めたものだ。竹中直人演じる青木が、男女が共に相撲を取る未来を夢想しているのも、30年前に正子の奮闘を目の当たりにしていたからだろう。
「今しかできないことを、本気でやってみな。本気でやれば、きっと楽しくなるから」とは青木の言葉だが、何にも熱くなれなかった亮太たちが熱くなったとき、どのような姿を見せてくれるのか。何より、自分の好きなことを貫く穂香が、どのように「ガラスの天井」ならぬ「ガラスの土俵」をうっちゃるか。今後配信される後半が楽しみだ。
オリジナルドラマシリーズ「シコふんじゃった!」はディズニープラスにて独占配信中