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伊東歌詞太郎×芦名みのる、『夜猫』を通じて考える“ペットと人間の関係性” 亡き愛猫への想いを昇華した「ひなたの国」制作秘話

Real Sound

芦名:本当にいい歌なんで、皆さんにも聞いてもらいたいですね。キー下げないと歌えないけど(笑)。そういう経緯もあったので今回の『夜猫』の主題歌も楽しみにしてたんですけど、先に曲名(「ひなたの国」)が送られてきて、「いやいや、“夜”やぞ!?」と思って(笑)。

伊東:(笑)。僕もずっと猫を飼っているんですけど、夜は一緒に寝るんですよ。それで腕のところに猫が来ると、太陽の匂いがするんですよね。「ああ、今日も日向ぼっこしてたんだな」と。

芦名:その話を聞いてやっと納得しました(笑)。

伊東:よかった。「ひなたの国」は、僕が飼っていた“みみちゃん”に向けて書いた曲でもあり、みみちゃんがくれたような曲でもあって。ちょうどこのお話をいただいた時期に亡くなってしまったんですけど、飼い主冥利に尽きると言いますか、手の中で看取ることができたんです。その1〜2時間後くらいに、サビのメロディが思い浮かんで。ミュージシャンとしては正しいんだけど、人として、愛した飼い猫が亡くなって時間が経たないうちに曲を作るのはどうなんだろう? という葛藤もありましたが、結局形にしたんですよね。

芦名:いいと思うよ。一緒に過ごした日々だったり、亡くなったときの喪失感、ありがとうという気持ちもそうだけど、すべてが作品になっていくので。病院でも、ペットを亡くした飼い主さんに「これでよかったんですかね?」って聞かれるんですよ。それはもう気の持ちようだし、よかったかどうかは証明できないじゃないですか。でも、伊東さんのみみちゃんに対する思いが楽曲として昇華されたことは、本当にいいことだと思います。

猫を飼い始めてから看取るまでのすべてが描かれている歌(芦名)

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伊東:ありがとうございます。飼っている動物に対してもそうだし、おそらく人生全部がそうだと思うんですけど、いちばん忌むべきものは“後悔”じゃないかなと。

芦名:後悔はときに呪いになってしまうからね。反省はいいんだけど、悔いが後悔につながると、なかなか先に進めなくなるんですよ。その経験を活かして、次に行けるのがいちばんいいんだけど。僕も猫を飼っていて、慢性腎臓病で、もう長くはもたない。獣医師でさえ、「もう少し早めに処置しておけば」と思ってしまうことがあるけど、この経験で得たものを次に活かさないとと思うんです。「ひなたの国」は、猫を飼い始めてから看取るまでのすべてが描かれている歌ですよね。〈君が隣で眠るから 愛してる もう大丈夫だよ〉という歌詞が最高によかったです。このアニメは柔らかい気持ちで観終わってほしいし、エンディングはフータくんがキュルガと眠る絵で終わりたいと決めてたので。

伊東:一緒に眠る静かなシーンにしたいという話は、プロデューサーの方からも聞いていて。みみちゃんを看取ったことと、フータくんとキュルガが眠るシーンは僕のなかで乖離はないんです。あと、曲のアレンジに関しても“距離感”を意識していて。僕が猫を飼い始めたときは、ワンルームに“1人と2匹”という状況で。そのときの近さを音でも表現したかったんですよね。メロディ、歌詞、ボーカル、ドラムの音色までいろいろな要素があるんだけど、視聴者の方のコメントを見ると「歌い方がやさしい」という感想がけっこうあって、「ちゃんと伝わってるんだな」と。

芦名:病院に来られる方も、「いい歌ですね」と言ってますよ。

伊東:ホントですか?

芦名:病院では僕がアニメを作っていることは言わないようにしてるんですけど、『夜猫』のポスターを貼ってるんですよ(笑)。なので飼い主さんが帰り際に「先生、観てますよ。歌もいいですね」と言われるんです。

責任感を持ってほしいという思いはある(伊東)

伊東:よかった! 動物が好きな方に響いているとしたら、正解でしたね。猫を飼ったことがない人でも「動物ってかわいいな」と思ってもらえたらなと。もちろん、本当に飼うときは責任も伴うんですけどね。僕、保護犬や保護猫のNPO法人に関わっていて。

芦名:めっちゃ偉いな。

伊東:いえいえ。僕の場合、猫を飼っていいことばっかりだったんですけど、責任感を持ってほしいという思いはあるので。

芦名:病気になれば治療費がかかるし、命とともに歩む覚悟は必要ですよね。犬や猫の場合、自分より先に死ぬことが多いじゃないですか。もちろん悲しさはありますけど、看取れるって、いいことだと思うんです。

伊東:確かにそうですね。僕が後悔していないのは、手の中でみみちゃんが死んでいったからなので。僕が通っていた病院の獣医さんはすごく誠実で、治療費も最初にしっかり金額を提示してくれたんですよ。猫の場合は金額による治療内容の違いはそんなになくて、「ペインケアにどこまお金を使えるか?」ということなんですね。そういう部分も丁寧に教えていただけたのですごく信頼できたし、納得して最後まで治療に向き合えたのもよかったです。

芦名:僕も大変そうな仔の場合は最初に「治療費はいくらまで出せますか」とハッキリ聞きますね。猫の飼い主には「10歳を超えたあたりから貯金しておいてほしい」とも言っています。よく思うんですけど、動物を飼って、家族にした時点で“負け”なんですよ。飼い始めたら、最後まで一緒にいるということだから。ただ、厄介なのは人間のほうなんですけどね。

伊東:わかるような気がします。僕、家庭教師をやっていたことがあるんですけど、猫を飼っている元生徒から「動物は裏切らない。人間の業の方が怖い」と先日言われて、「確かにそうだよね」と思いました。

芦名:人間は社会やしがらみに捉われてるから、余計に業が深くなるんですよね。だからこそペットを見ると癒されるのだと思います。そういえばこの前、獣医師を目指す学生に“人を好きでいること”をテーマに話をしたんです。

伊東:どういうことですか?

芦名:治療を途中で辞めたり、病院に来る頻度が落ちたりすることもあるし、動物の病気の向こうには、飼い主の問題があることが多いんです。若いときに「飼い主を直すことも獣医師の仕事だよ」と言われたことがあるんですが、メッチャいいこと言うなと。

「猫っていいね」と思ってもらえるだけでいい(芦名)

伊東:そういう意味では、キュルZさんはキュルガを本当にしっかり見ていることが漫画を通して伝わってきますよね。五感全部で猫を捉えて、それを見事に絵にしていて、いち飼い主としてとても素敵だなと。

芦名:客観的な観察力が抜群だよね。

伊東:そうなんですよね。たとえばキュルガがフータくんに寄っかかる場面もそう。信頼している飼い主に対しては、“全部いきます”という感じで体重を預けてくるんですけど、その感じがめちゃくちゃリアルに描かれていて。あとは猫の柔らかさ。脇を持って持ち上げると体がビヨーンと伸びるし、持ち上げた位置から降りるときは、液体みたいに“ドルン”という感じになるんです。「これをどうやってアニメにするんだろう?」と思ったんですけど、芦名監督が獣医師だと知って、「なるほど」と。そのときに思い浮かんだのは、レオナルド・ダ・ヴィンチなんですよ。ダ・ヴィンチは人体解剖学にも長けていて、骨格、筋肉を熟知したうえで絵を描いたことで、ルネッサンスにつながった。芦名監督がやられていることも、そういうことだと思うんですよ。

芦名:確かにアニメーターと“動き”の話になると、「体の構造を理解してる?」ということを言いますね。それに『夜猫』は音響もすごく重要で。リアルな猫の音にするのか、マンガ的な音を付けるのかは考えました。

伊東:なるほど。キュルガがフータくんの手を舐めるシーンがありますけど、舐めるときのザラっとした音も抜群でした。猫の舌ってちょっと痛いんですけど、その感じがすごく伝わってきて。

芦名:声優陣も素晴らしいですね。キュルガの声優のオーディションのとき、音響監督の郷文裕貴さんに「監督からは『“猫キャラ”は要らない。“ガチ猫”でオーダーが来てます』と伝えて」と言っていたんですよ。オーディションには160人も参加してくれて。仕事とは言え、160人の“ニャーン”を聞いてると、ゲシュタルト崩壊するよ(笑)。

伊東:(笑)。キュルガ役の高垣彩陽さん、すごいですよね。

芦名:そうなんですよ。じつはフータくんの声の日野聡さん、ピーちゃん(フータ君の妹の高校生)の声の種﨑敦美さんも、キュルガ役の最終選考に残っていたんですよ。アフレコのとき、日野さんがめっちゃ悔しがってました。「キュルガやりたかった!」って(笑)。

伊東:気持ちはわかります。『夜猫』の曲を他のアーティストが担当してたら、僕も絶対悔しかったと思うから(笑)。

伊東:猫好きの人の猫愛、ときどき怖いよね(笑)。音響のことで言えば、キュルガの喉がゴロゴロいう音もいろいろ試したんですよ。自分が飼ってる猫の“ゴロゴロ”も録ってみたんだけど、なかなかうまくいかなくて。高垣さんが「私やってもいいですか」と言ってくれて、録ってみたら素晴らしかったんです。音響監督と二人で、録音しながら「超たのしい!」と盛り上がってました(笑)。

伊東:すごい(笑)。そもそも猫って、あまり鳴かないじゃないですか。キュルガが鳴く頻度も適切で、回によってはほとんど声を出さないこともある。

芦名:高垣さんが“ゴロゴロ”言ってるのみっていう(笑)。じつは『夜猫』は声と音だけでも「猫がいる」と分かるように作っていて。音響的にかなりチャレンジしてるんですよ。関わるスタッフが最高のクオリティを出し合って、いい意味で殴り合っているアニメですね。

伊東:もちろんアニメなのでデフォルメされているところもあるし、可愛く描かれているんだけど、動きや音はすごくリアル。そのバランスがいいんですよね。猫を飼っていたことがある人が見れば「わかる〜」って思うだろうし、そうじゃない人も必ず「かわいいな」と感じるというか。奥深いアニメだし、いろんな人に楽しんでもらえると思いますね。

芦名:うれしいです。

伊東:さっきも言いましたけど、もし猫を飼うんだったら責任を持つべきだし、治療のことも考えなくではいけない。でも、このアニメからは、そこまで考えてほしいとは思っていなくて。あくまで「猫ってかわいいな」と思ってもらえたり、動物への愛を感じてもらえるだけでも、すごくいいことだと思うんです。

芦名:好きだなとか、いいなと思えば、その対象に優しくなれますからね。たとえば隣の部屋の猫の声が気にならなくなったり、保護猫に興味を持つかもしれない。伊東さんが言う通り、「猫っていいね」と思ってもらえるだけでいいなと。そして、キーが高くて僕は歌えないけど、最後は「ひなたの国」でアニメの余韻を楽しんでほしいですね。

伊東:最後まで(笑)。今度一緒にカラオケに行きましょう!

伊東歌詞太郎「革表紙」についてのコメント

 アニメ『虫かぶり姫』は本が大好きなエリア—ナ姫が主人公。僕も本が好きなので、主題歌の話があったときはうれしかったです。

 エリアーナ姫はクリストファー王子と婚約していて。二人ともすごく誠実に相手のことを思っているし、些末なことですれ違ったり、ちょっとだけ疑心暗鬼になったりするけど、「芯の部分でつながっていて、ずっと一緒に生きていくはずだ」という安心感があるんです。一生を共に過ごすなかで、今よりも5年後、10年後、数十年後にはさらに素敵な二人になっているだろうなと。そう思ったときに浮かんできたのが、“革のブックカバー”だったんです。革製品は新品よりも、何年も使って、撚れや擦れがあったほうがカッコいい。それは愛の象徴だな、と思って曲を仕上げて行きました。アレンジもブックカバーを手渡せるような人と人との距離感というか、ストリングは入れつつも壮大にはせず、ゆったり楽しんでもらえるかなと。

 本好きな人には特におすすめのアニメ作品なので、少女マンガをあまり読まない人にもぜひ観て欲しいですし、「革表紙」もいいねと思ってもらえたら嬉しいですね。

■リリース情報
『革表紙/ひなたの国』
発売中
1,320円(税込) [ZMCZ-16032]
M1:TVアニメ『虫かぶり姫』エンディングテーマ
M2:アニメ『夜は猫といっしょ』主題歌

■ライブ情報
『Live Classics Vol.3 ~Starlight symphony~」
2022年12月23日(金)
Open 18:00 / Start 19:00
*アフタートークあり(10分程)

会場:品川インターシティホール
(〒108-0075 東京都港区港南2-15-2 品川インターシティ)
前売:7,900円(税込) ※別途ドリンク代必要
席種:全席指定
お問合せ:DISK GARAGE  TEL:050-5533-0888(平日12:00~15:00)

【TICKET】
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・ローソンチケット

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