11月23日から日本代表戦も始まる『FIFAワールドカップカタール2022』。サッカーワールドカップと言えば、テレビ局ごとの中継テーマも毎回話題を呼ぶ。その時代の顔に相応しいアーティストによって、広く支持されるアンセムが生まれ得るからだ。今大会も充実のラインナップとなったテーマ曲をピックアップしていきたい。
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King Gnuはワールドカップを含めた「2022NHKサッカーテーマ」として「Stardom」を書き下ろした。トライバルなビートを軸にし、終盤には日本代表サポーターチーム・ULTRASによるコーラスもまじえたエキサイティングな展開を持つこの1曲は彼らの掲げる“トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル”に改めて立ち返るような意欲作だ。
歌詞は選手の心情を代弁するような静かな鼓舞が込められている。これまで高い上昇志向を持ちながら活動を続け、今月には東京ドーム公演を成功させるなど文字通りスターダムを駆け上がったKing Gnuだからこそ描ける頂上へ向かうまでのリアルな精神性も刻まれている。バンドと選手の志が渾然一体となったドラマチックな1曲に仕上がっている。
幾田りらはフジテレビ系列の番組公式テーマソングとして「JUMP」を提供。清涼感たっぷりのポップナンバーで、燃える闘志というよりも祝福や解放のイメージが浮かぶ1曲だ。彼女もまた、この数年間の内にシーンで存在感を示してきたシンガーである。挑戦者として自分に語りかけてきたような言葉たちが、選手たちへのエールとして輝いている。
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「JUMP」にも「Stardom」と同じく大勢で合唱できるようなシンガロングできるコーラスメロディが用意されている。コロナ禍を経て、歓声も増え始めたスタジアムを象徴するかのようなシンガロングパートの存在は、応援歌としてのエネルギーを高めているように思う。
ABEMA・テレビ朝日の番組公式ソングとなったのはLiSAの「一斉ノ喝采」。ハードでアッパーなロックチューンであり沸々と湧き起こるような闘志に溢れた1曲だ。時にダンスミュージック的な展開やジャジーなアレンジも交えられ、その予測不可能な曲調は実にスリリングで、熱戦の行方を示唆しているかのよう。
掛け声のようなパワフルなコーラスパートもあり、ライブの場所でも大きな盛り上がりを予感させる。オーディエンスとの一体感や巨大なスケール感に満ちたワールドカップテーマソングはアーティスト側にとっても重要な楽曲になり得る可能性が高い。
DISH//は、日本サッカー協会(JFA)のサッカー日本代表の応援プロジェクト「SAMURAI BLUE 新しい景色を2022」公式テーマソングとして「DAWN(in 2022)」を提供。「DAWN」は019年にリリースしたアルバム「Junkfood Junction」の収録曲であり、バンド結成10周年のリテイクプロジェクト『再青プロジェクト』の一環として「DAWN(in 2022)」が生まれた。
「DAWN」は北村匠海(Vo)「新しい景色を沢山見せてくれた曲」(※1)とコメントしており、ファンとDISH//が約束を交わし合うような歌詞が印象的だ。信頼を託し合うような歌詞が選手とサポーターの関係性のようにも聞こえるということもあり、応援歌として抜擢されたのだろう。アーティストが自身のホームで育てたアンセムが逆輸入のような形で起用されるという、稀有なケースとなった。
スポーツ大会のテーマソングはやはり試合結果や見どころの多さによってその印象が大きく変わっていく。この大会の行方はゆず「栄光の架橋」やSuperfly「タマシイレボリューション」のような”国民が知る1曲”を生むかどうか、という未来の分かれ目でもあるのだ。その点にも注目しながら試合を観るというのも面白いかもしれない。