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結核再燃…入院を嫌がる患者に医師は「じゃあね、こういう案はどう?」

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、桂真風氏の書籍『Passengers 過ぎ去りし人たちへのレクイエム』より一部抜粋・編集したものです。

判明した感染ルート

入院後9カ月目にようやく排菌が止まり、とうとう退院日がやってきた。

通常は排菌がなくなって2~3カ月は入院で経過を診るようにしていたが、彼女の張り詰めた精神はそれを許さなかった。

胸部レントゲン写真は入院時と比べて改善は見られず、彼女は将来低肺機能に悩まされることが予想され、炎症反応も下がり切っておらず不安だらけの退院ではあったが、主治医も看護師も看護助手、掃除のおばさんにいたるまで、この子が生きて退院できることを素直に喜んだ。

喀血や高熱の続いた時期に、そっと母親に最悪の事態も覚悟するように話したことがあったことを思い出し、私は心から良かったと思った。

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退院の日、初めて見るような晴れやかな顔で彼女は彼の車に乗り、一刻も早くここを離れたいかのようにエンジン音も高らかに病院をあとにしていった。

退院前に彼女が住む地域の保健師が打ち合わせにやってきたが、その時Nの父親が2年前に耐性結核菌感染で亡くなっていたことを知った。これで彼女の感染ルートがはっきりし、入院時の説明で感じた違和感の「わけ」もわかった。

退院後初めての外来診察で名前を呼び、視線をそちらに向けるとセンスのいい服を纏(まと)った美人がいた。一瞬誰だかわからなかったがNだった。

「へぇー、驚いた。君かあ」

私はしげしげと彼女を眺めた。入院中の化粧っ気のない、ともすれば前がはだける病衣姿でも恥じらいを見せなかった彼女とはまったくの別人であった。

「どうですか、調子は?」

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