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別称「微笑みの障害」実は見落とされがちな聴覚障害の事情とは

幻冬舎ゴールドライフオンライン

障害のある人はもちろん、健常者にも便利で役立つ。大きめの電気スイッチや、交通系ICカード、標識やピクトグラム。シンプルで、どんな人でも直感的に理解できるーー。そんな、実は身近にあふれているユニバーサルデザインについて、知識が深まるエッセイ集。※本記事は、伊藤順子氏の書籍『コレぜ~んぶUDなんです!!』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】男性の確率は20人に1人。知覚されづらい「色覚特性」のUD事情!

聴覚障害について

『「音」を見たことありますか?』という漫画を読みました。漫画は気軽に読めて誰かの不便に気づける自分になれるとても優秀なツールです。この漫画をきっかけに、アリコさんに、手話ができる聴覚障害者はどれくらいでしょうと聞きました。アリコさんは、半分は超えているだろうと言いましたが、実際は1割程度なのだと話すと驚いてこう言いました。

「そう言われてみたら、うちのお父さんも補聴器付けとんのに、聴覚障害者や思てへんだ。よう考えたら、お父さんが今さら手話を習うはずないのに。聴覚障害者って言われた時に、生まれつき聞こえへん人しかイメージできへんだ自分にショック。おまけに、手話通訳がいればほとんど通じてると思ってたし」

高齢男性には、聞こえづらい事を知られたくない人は多く、手話を習う人も多くはないそうです。私は長い間、講演会などに「要約筆記」と「手話通訳」の両方が準備されている事を不思議に思っていました。文字化されたものがあれば、手話は不要ではないかと思っていたからです。

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何人かの人に聞いてみても、手話は手話で必要なのだと言うばかり。そこで何人かに話を聞いた末に、手話が必要なのは、言葉を覚える順番に理由があるのではないかと思うようになりました。

赤ちゃんは、最初にマンマというような言葉を耳から覚えて話し始めます。でも聴覚に障害があると、耳から言葉を覚える代わりに身振り手振りでの会話を先に覚えます。誰だって、最初に文字を覚えたりはしません。こうしてその後に手話を身に付けた人にとっては、手話が第一言語となります。

そして手話には、「てにをは」が無いだけでなく日本語と並行する別の言語であると言ってもよいほどの違いがあると言います。例えば「伊藤」という言葉は、「い」という手話と、垂れ下がる「藤」という手話になるらしく、ひらがなで書く「いとう」とは別物です。このような違いがきっとたくさんあるのでしょう。

生まれつき聞こえないろうの方たちと、途中から聞こえづらくなった中途難聴の方たちでは、求めるものが随分と違います。手話を知らない中途難聴者には喜ばれるスマホの文字化アプリですが、高齢のろう者との会話にそれを使って話をしようとして嫌がられた事があります。老眼でずっと目で文字を追うのがつらいからだそうです。

アリコさんのお父様は中途難聴で、「補聴器を付けてても、わからんもんはわからん」と怒るそうです。アリコさんは普段から楽し気に早口で話す人なので、補聴器を付けても、ハッキリしない言葉はそのまま大きなハッキリしない言葉になるだけなのでしょう。

もしかするとお父様は聞こえる音域が限られているのかもしれません。正面に立ってゆっくりと大きな口で話すとわかりやすいとはわかっていても、家族というのはお互いに甘えもありつい配慮を忘れてしまいがちです。

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