続けて、「墓じまいについて相談されるケースも増えています。宗派によってやり方が違うことでもめたりして、亡くなった人の声を聞いて判断したいという人がいます」という。
「孤独」の問題も目立ってきている。松田さんは語る。「家族が亡くなったり、親族が減ったりして、身内が細くなったことで孤独を感じるようになり、“自分はいったいどうしたらよいのか”という問いへの答えを見つけに来る人もいます」
ここ2、3年は新型コロナウイルス流行の影響も。「仕事面、金銭面、生活面での苦労に直面した人たち。また、コロナで身内が亡くなっても、直に遺体が確認できないまま(遺体を)焼かれてしまった人たち。パニックになっている人もいました。仏さんとの最後の別れをちゃんとできなかった人がきちんと別れを告げたいというのです」と松田さんは述べる。「コロナで暇になって妄想に取りつかれてしまった人もいました」
ペットブームの影響もあると松田さん。「単身世帯も増えてペットを家族同様に飼っている人も多い。親族がいない寂しさをペットで埋めている人もいます。ペットが亡くなったあと、“私にとっては家族”なのだから呼んでくれと言い張る人がいるのですが、イタコは人間以外の生物の魂を呼ぶことはしません」と松田さんはいう。
旧統一教会の問題については「その人が教会に助けられたと思うから献金をするのだから、個人の自由という側面もあると思う」と松田さんは語る。莫大な献金額などが問題となっているが、「イタコの場合、口寄せ料は安く(1件5,000円)決まっています」。
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それに根本的な問題として「旧統一教会は(教祖文鮮明の妻である韓鶴子という)生きている人がいわば生き仏、一番偉い人で、そこはイタコと違う点です」。
「昭和の時代は、イタコの口寄せといえば、イタコが降ろしてきた仏さんの言葉を伝えて、依頼者がそれを聞くという一方通行のスタイルでしたが、平成になると依頼客が仏さんと対話をしたいというケースが増えて、双方向になっています」
仏様、神様を呼んでくることによっての「占い」も行っている。松田さんはいう「自分の気持ち(恋心)を相手に伝えて振り向かせてほしいという人が多いのです。女性の割合が7割程度ですが、わがままな思い込みの人が多い」。そういう場合には、「ご自分で行動なさってください、どうぞ」という感じです、と松田さん。
日本人の心のありようの変化を感じることもあるが、同時に「変わらぬ心」もあると松田さんは述べる。「親を思う子の心でしょうか。苦労をかけたが、ようやく楽になってきたので、親の供養をして孝行したいというのです。そして子を思う親の心も変わりませんね」。

松田さんはイタコとして口寄せ、占いのほかにも「オシラ様遊ばせ」という神事も行っている。「オシラ様」とは東北地方に代々伝わる家の守り神で、男女一対の神様のこと。そのオシラ様をまつって、家運繁栄、五穀豊穣などを祈願することを「オシラ様遊ばせ」というが、小正月を迎える来年1月15日あたりからスタートさせる、と松田さんは語る。
「3月の彼岸までオシラ様遊ばせをやって、それから口寄せのシーズンが始まります。春を迎えて農耕の時期に入っていくので、神様をおまつりして、一年の収穫を予想、占います。それは本来のイタコの占いの姿でもあります」。
松田さんは公式ホームページ を持っている。口寄せは同サイトから申し込める。