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【小説】「私たちはもう友人よ」…言葉と国が違っても涙する

幻冬舎ゴールドライフオンライン

人生を変えてくれた恩人を訪ね異国の地に根を下した少年、武。朝鮮戦争の休戦開始から数年後の韓国と日本を舞台に彼と家族たちのその後を描いた物語、感動のフィナーレ。※本記事は、丹波燐氏の小説『二つの墓標 完結編』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

前編

宿も決まったし、一息ついたのか弘はポツポツ話し始めた。すずのことは気になったが努めて正直に語った。途中からおばさんは前掛けを目に当てて聞いている。見れば皺は多いものの自分たちとさほど歳は変わらないと感じた。いつの間にか主人もおばさんの横で茶を飲みながら聞いている。

『ボーッボーッ』と海の方から汽笛が聞こえた。港はまだ眠っていないのだ。

「そうかえ、そうかえ……私たちの息子も十九の歳に釜山(ぷさん)橋頭堡(きょうとうほ)の戦いに駆り出されたのよ。八月の暑い日だった。あなたの息子さんも一緒だったのじゃないかい? それから一気にソウルを目指したらしい。途中のテグから葉書が届いたよ。『かあちゃん、ソウル奪還はもうすぐだ。金日成をブチ殺して早く帰ってメシ食いたいよ』だって。あの子らしいじゃないか。

そこで帰っときゃ良かったのに。中国が介入してきて『仁川上陸作戦』は激しい戦いになったのさ。そん時息子は死んじまったよ。国の為とは言え親はたまったもんじゃないよ、まったく。日本も大戦後は大変だったんだろうねぇ」

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「そうですか。息子さんは戦争で……」

弘の通訳で理解したすずは目に涙を浮かべ、同じ母親として共通の悲しみを覚えた。どこの国も悲しみをこらえて生きている人々は沢山いる。挫けちゃいけないんだと思った。

「私ね、朴ヒョナ。主人はホンギという名前だよ。なんだか今夜で友人になれたみたいね。先を急がないのならもう少しここに居たらどうだい?」

「ありがとう。私は、椋木弘、妻のすずです。お言葉に甘えるかもしれません。どうぞよろしくお願いします」

「さあ、明日もあることだし、部屋を案内するね。それから、すずさん。言葉は理解できないと思うけど『私たちはもう友人よ』と弘さん伝えてちょうだい」

「ありがとうございます」

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