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「夫の女遊びは、いつものこと。それに私も…」おしどり夫婦の妻が告白した衝撃の事実とは

東京カレンダー

― イイ男はすでに売約済み ―

婚活戦国時代の東京で、フリーの素敵な男性を捕まえるなんて、宝くじに当たるくらい難しいと言っても過言ではない。

待っているだけじゃ『イイ男』は現れない。

これだと思う人を見つけたら、緻密な戦略を立ててでも手に入れる価値がある。たとえその人に、彼女がいても…。

◆これまでのあらすじ

大手IT企業に勤める凛(30)は、大学時代に憧れだった先輩の悠馬(31)に再会するが彼女がいた。悠馬を好きになった凛は略奪を試み、彼女と別れたタイミングで付き合えることに。しかし罪悪感から不安が拭えず、悠馬と喧嘩になり距離を置く。

▶前回:元カノと「友だちになった」と連絡を取り続ける男。今カノが、激怒するとまさかの反応で…



「いやー、まさか、こんなとこで会うなんてな」

品川駅で偶然会った凛と隆也は『サラベス』に移動した。

見るからに落ち込んでいた凛を、隆也が半ば強引に誘ったのだ。

「俺、昼食べてなくてさ。“エッグベネディクト”めっちゃうまそう!凛ちゃんなんか食べたいもんない?」

隆也がいつもよりテンションを高くして、凛を少しでも元気づけようとしているのが伝わってくる。

凛もその気持ちに応えようと明るく振る舞うが、隆也には全て見透かされている気がした。

「無理に笑わんで、ええで。ただ俺が一緒にいてほしかってん」

隆也は優しく微笑んだかと思うと「うわ、俺めっちゃかっこつけてるやん!キモいとか思わんといてや」と捲し立てた。

凛が思わず「ふふっ」と小さく笑うと、安心したような表情を見せる隆也。

「あのさ、何があったんか知らんし、今はこんなん言われても混乱するだけかもしれんけど…」

そう言うと、先ほどのおどけた顔から真剣な表情になった。

「俺さ、凛ちゃんのこと好きやねん。気づいとったかもしれんけど」

突然の告白に、凛は頭が混乱して言葉が出てこない。

「言うつもりはなかってんけど、最近の凛ちゃん見てたら幸せそうじゃないから。

凛ちゃんに好きな人がいるのはわかってる。俺のことは、その人に振られたときの滑り止めくらいに思ってくれたらええなって」

隆也は最後に恥ずかしそうに微笑む。


「滑り止めなんて…隆也はモテるしいいヤツだし、他に本命に思ってくれる人がたくさんいるじゃない」

「俺は…凛ちゃんがいいねん。まあ、入社してからずーっと凛ちゃんだけをストーカーのように想ってたわけじゃないで。

いいなと思う子と何人か付き合ったけど、でもダメなんよ。結局本気になれんかった」

隆也の気持ちに、凛はいたたまれない気持ちになる。

凛が口を開こうとすると、慌てたように言った。

「あ、別に返事とかいらんで?とりあえずさ、今は“たとえフラれても、他に私を好きな人もいるし!”くらいに思ってほしかっただけ。

だからさ、何があったかはわからんけど、元気出してや」

先ほどまで谷底に落ちたように辛かったが、隆也のおかげで凛は少し救われた。





「わー美味しそう」

数週間が経ったある日。

就業後に凛は涼子を『ROZZO SICILIA』に誘った。

「今日は突然誘ってすみません。ちょっと話したくて」

「ちょうど私も、凛ちゃんに話したいことがあったの…」

涼子の長いまつ毛が伏せた目に影をつくる。

「お先にどうぞ」と促されて、凛は悠馬と距離を置いたことを報告した。

「涼子さんに“罪悪感に押しつぶされるな、彼のことを信じて”って言われていたのに、どうしても信じられなくて。

奪い取った分、いつか自分にしっぺ返しが来るんじゃないかって、今さら怖くなったんです…」

凛の言葉を静かに聞いていた涼子は、落ち着いた声で「そうよね」と頷いた。

「実はさ…凛ちゃんに謝らないといけないことがあるんだけど…」

涼子は一息置くと、食べている手を止めた。



「実は私たち夫婦…うまくいってなかったの。凛ちゃんも噂に聞いたんじゃないかな。圭吾の浮気のこと」

彼女の口から夫の噂のことを聞き「本当だったんだ」と凛は唖然とした。

「あれね、今に始まったことじゃないの。それにね、私にも夫以外に会っている人がいたの」

「え!?」

突然の告白に驚きを隠しきれず、凛は思わず大きな声を出した。

「ただね、こうなった原因を作ったのは、彼のことを信じきれなかった自分。

彼が元カノに戻るんじゃないかとか、他の人にも奪われるんじゃないかとか思って苦しくて。それで彼を責めてしまったの。今の凛ちゃんより、もっとひどかったと思う」

涼子はそう言うと、手を膝の上に置き凛の目を見た後、顔を下に向けた。


「本当にごめんなさい。初めから略奪恋愛なんて勧めるべきじゃなかったね。でも、凛ちゃんなら、私とは違う答えを見つけられる気がしたの…」

「そんな…」

涼子に裏切られたような同情するような、複雑な気持ちになった。



「でも涼子さんにも他にいるって、どうして…?」

「他と言っても、遊びに行くだけだけど。それで何とか心のバランスを保ってたの。

けど凛ちゃんを見ていて、私も昔のことを思い出したのよね。どうしても圭吾と結婚したかったあの頃の気持ちを」

その言葉に、凛もこれまでのことを思い返した。

悠馬のことが好きで好きで仕方がなかった純粋な気持ちを。

それなのにいざ手に入れてしまうと、今度は離したくない一心で、彼を疑ってばかりいた。

「私はさ、圭吾ときちんと向き合おうと思ってる。

寂しいからって、他の誰とデートしても、心の穴は埋まらないの。彼じゃないとダメみたい。

凛ちゃんはどうする?」

涼子は凛の方を見ると、全てを受け入れた顔をして微笑んだ。

彼女の告白に「もっと早く教えてくれていたら」という思いを抱かなかったわけではない。

けれど素直にすべてを打ち明けてくれた涼子を、凛は責める気になれなかった。

帰り際、涼子が振り返って言った。

「凛ちゃんはさ、今ならまだどちらにも行けると思う。

悠馬くんを信じ切る道か、別の人を探す道か。どちらにしても、後悔しない選択をしてね」

別の人、という言葉に一瞬“隆也”の顔が浮かぶ。

「涼子さんは…もし過去に戻れるとしたら、圭吾さんと結婚していましたか?」

「んー…うん。同じ選択をしてたかな」

涼子は幼い女の子のように屈託なく笑う。その笑顔を見て凛は、彼女ならこの先も大丈夫だろう、と感じた。

何となく家に帰りたくなかった凛は、恵比寿駅にあるスタバでソイラテを頼み、テラス席で思いを巡らせた。

悠馬を信じてもう一度向き合い直すか、それともお互いの幸せを考えて、別々の道を行くか…。

ひんやりとした空気が混乱した頭を静め、温かいコーヒーがじんわりと体を優しく温める。

凛はフーッと大きく息を吐くと、スマホを取り出した。



「近々どこかで少し時間取れない?」

LINEを送ると、すぐに「わかった」と返事が来た。

― これでいいんだ。もう後ろを振り返らない…。

そう心に決めると、凛はすっきりとした顔で家へと向かった。




「お疲れ」

金曜日の夜。待ち合わせ場所のカフェに凛が呼び出したのは、隆也だった。

「来てくれてありがとう」

「全然。俺今日東京やったから」

緊張感が漂う中、注文したコーヒーが来ると、凛の方から口火を切った。

「あの…今日呼びだしたのは、この間の返事をしようと思って」

「うん」

大方予想がついていたように、隆也は茶化すことなく優しく聞いた。

「隆也の気持ち、正直にいうと薄々気づいていた。でも確信はなかったから、直接言われて驚いたし嬉しかった」

「うん…」

周りはガヤガヤと人の声で溢れていたが、2人の空間だけが切り取られたように喧騒が消える。



「隆也と一緒にいたら楽しいんだろうなって思う。

でも……私やっぱり悠馬さんが好きなの。隆也が、色んな子を見たけどやっぱり私がいい、と言ってくれたみたいに、私は、悠馬さん以外考えられないみたい」

凛の話を静かに聞いていた隆也は、目線を下にそらして「そっか…」と柔らかく答えた。

「ん、わかった。多分そうなんやろなって思ってた。凛ちゃんのそういう一途でまっすぐなところが好きやった」

「…ありがとう」

こんな時にまで優しい言葉をかけてくれる彼に、胸が締め付けられる。

「でも俺、返事いらんって言うたやん?それなのに呼び出されてフラれるなんて、凛ちゃんは、鬼か!?」

「え、ごめん…」

焦った凛が不安そうな顔をすると、隆也は急に大きな声で笑った。

「冗談やん、凛ちゃん真面目すぎるわ!これからも、よき友達として皆でご飯でも行こうな」

「もちろん。ありがとう」

凛が笑顔を見せたことに安心したのか、隆也は時計を見て「んじゃ俺、もう行くわ」と早々に帰った。

凛が1人で店に残っていると、LINEが一通届いた。開けてみると、それは悠馬だった。

「今日会って話せないかな?」

1ヶ月ぶりの彼からのLINEに緊張する。

「私も会って話したいです」

凛は、震える手で返事をし、すぐに赤坂駅へと向かった。

待ち合わせ場所につくと、スーツ姿の悠馬が既に待っていた。

彼の顔を見た途端、これまで会えなかった間の不安や寂しさが押し寄せ、涙が溢れてきた。



思わず彼の元へと急ぐ。

そして彼と向き合うなり、凛は人目も憚らずに言った。

「悠馬さん!私ともう一度、付き合ってください」

あの時はごめんなさい、やっぱり大好きです、あなたを信じます…いろいろな言葉が頭を駆け巡ったが、出てきたのはこの一言だった。

あまりの凛の勢いに、悠馬は、一瞬呆気に取られていたが、すぐに笑顔になる。

「はい、こちらこそ。今日は俺もそう言おうと思って、連絡した」

目尻を下げて愛おしそうに微笑む悠馬に、我慢していた涙がポロポロとこぼれ落ちた。

略奪恋愛したからには、この先も同じように、不安から相手を疑ったり、自責の念に駆られることがあるかもしれない。

それでも、自分が選んだ選択に責任を持って、自分を信じて生きていこう。

もしかしたら報いを受ける日が来るかもしれない。でも、それもすべて受け入れよう。

凛はそう心に誓うのだった。

Fin.


▶前回:元カノと「友だちになった」と連絡を取り続ける男。今カノが、激怒するとまさかの反応で…

▶1話目はこちら:「何考えてるの!?」食事会にしれっと参加する既婚男。婚活を妨げ大迷惑なのに…


 
   

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