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9回4点差を大逆転サヨナラ勝利の仙台育英 この秋も本物の強さになってきた夏の覇者

週刊ベースボールONLINE

神宮大会への特別な思い



仙台育英高は沖縄尚学高との明治神宮大会2回戦[11月19日]で勝利。この試合も須江監督のベンチワークが光った

 仙台育英高(宮城)は今夏の甲子園で、東北勢初制覇。みちのくの悲願を達成した。

 旧チームから甲子園のマウンドを経験した140キロ超の投手3人を含めて、野手もセンターラインを軸に経験者が多く残った。傍から見れば、秋も安泰、と見えた。当然のように今秋の県大会でも優勝候補の筆頭に挙がったが、現場の指導者としては悩みが尽きないところである。

 下関国際高(山口)との甲子園決勝を制したのが8月22日。新チームの始動は、全国のどの学校よりも遅い。毎年、V校が直面する現実を仙台育英高・須江航監督は回顧する。

「自分たちで、本当の意味で勝ち取ったわけではない。先人のトライの先に、そういう流れがあっての優勝でした。メンバーは下級生が中心で(周囲は)『来年も強いぞ』と。ところが、最初の練習試合では、良い結果が出ませんでした。(新チームで四番の)齋藤陽も『思ったよりも弱いです』と……。人が変わる。だからこそ、簡単に『連覇』とかは言えない。毎回、初優勝(への挑戦)だと思っています」

 時間は待ってくれない。仙台育英高は「日本一のチーム内競争」を目標としており、準備期間を設けてベンチ入りメンバーを編成していく方針がある。「突貫工事でした」(須江監督)。事実、東北高との県大会決勝は1対2で敗退と、発展途上の段階にあった。

 しかし、そこは経験値とベンチワークがカバー。仙台育英高は東北大会を制した。「夏春甲子園連覇」への挑戦権を事実上、手にしたのである。東北地区代表として臨む明治神宮野球大会には、特別な思いがあった。

「東北の高校野球は夏以降、練習試合を通じても非常に伸び盛り、意欲を感じる。次は自分たちがやってやるぞ! と。1校でも多くの東北の高校が全国の舞台を経験してほしい。(近い将来)どこかの学校が、優勝できるのではないかと思っています。今回は何とか、1枠を持ち帰りたいと考えていました」

 明治神宮大会の優勝地区には「明治神宮大会枠」が与えられる。つまり、来春のセンバツの選考における一般選考枠が1校増える。東北地区であれば規定の「3」から「4」へと増枠されるのである。

「本当の意味での底上げができた」


 沖縄尚学高との2回戦は9回表を終えて、0対4とリードを許していた。

 三塁ベンチで指揮する須江監督は、最後になるかもしれない9回裏の攻撃を前に「いろいろな東北地方の人の顔が浮かんだ」と明かす。仙台育英高は驚異の追い上げを見せる。相手の守りのミスも絡み、5長短打を集中し、サヨナラ勝ちを収めた(5対4)。遊撃手の主将・山田脩也(2年)をお手本に、見極めと判断を徹底。まさしく打者7人、一人ひとりがつないだのである。須江監督は手放しで喜んだ。

「ずっと投手陣におんぶに抱っこ。野手の成長、チームの成長。すごいと思います」

 なぜ、終盤に粘れたか。須江監督は補足する。

「東北大会からここまで約1カ月、腰を据えてチームづくりができた。結果的にメンバーは大きく変わらなかったですが、良い競争ができました。本当の意味で底上げができた」

 18人の特性を慎重かつ、細部まで突き詰めたメンバー選出こそ、仙台育英高のチーム力の基盤となる。5対4で勝利した三塁内野席では、控え部員が心の底から喜んでいる光景が印象的だった。全部員51人が束になって戦う。公式戦を重ねるごとに、この秋も、仙台育英高の強さは本物になってきた。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳
 
   

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