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【小説】「半世紀前までは森の国だったのに…」変わりゆく根釧

幻冬舎ゴールドライフオンライン

舞台は北海道・根釧原野。時代の流れとともに酪農が拡大し、人間たちのみかけの暮らしがよくなった一方で、シマフクロウとサケの母なる川・ニシベツ川は汚染されてしまった。この現実を目の当たりにしたニシベツ実業高校・酪農科と水産科の生徒たちは、互いに意見をぶつけ合いながら、問題解決に向けて奮闘する。実際の調査をもとに描かれた、地域社会の未来を切り開こうとする若者たちの成長物語。※本記事は、草野謙次郎氏の小説『ニシベツ伝記』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

一.朝

早朝のニシベツ川河岸沿いの河畔林には、うっすらと、もやがかかっている。川の近くにはニレの大木がいくつも並んでいて、その下にはヤナギが繁っている。ニレの芽が少し膨らみ、ヤナギの芽はもう緑色の小さな葉を出しかけている。川から少し離れた少し高いところには、カシワの大木が天に向かって荒々しい枝を伸ばしている。カシワの芽はまだ硬いままだ。

カシワの大木たちが並んでいるさらにその先は、草地になっていて、草地越しにニシベツ実業高校の校舎が見える。この河畔林に、一二mの長さのカスミ網が川に対して平行に八枚張られている。川に向かう小鳥たちがカスミ網に刺さるようにかかっている。

川北は、小鳥たちの羽根や足を痛めないように、まずそっと足をつかみ、羽根にからんだ網の糸をそっと外し、安心させるために手のひらでそっと包むようにつかみ、腰に下げている鳥袋にそっと入れた。

近くにいる原田も、手際よく小鳥たちをカスミ網から外していく。すべての小鳥を網から外し、いくつかの鳥袋に入れると、川北と原田はカスミ網場あみば種の作業小屋に戻った。

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「川北、どうだった?」

戻ってきた川北に、作業小屋からポイントカウント法で出現した鳥の種類を計測していた安達が双眼鏡片手に問いかける。

「この通りだぁ」

川北は鳥袋の鳥が逃げないように気を付けながら、安達に中身を見せる。

「なんだ、またアオちゃんばっかりかよ」

「ポイントカウント法の結果と変わらないなぁ」

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