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あこがれの早大へ進学する九州国際大付の左腕・香西一希 「5連覇に挑戦し、勝利に貢献できる投手に」

週刊ベースボールONLINE

小学5年時に神宮で登板



九州国際大付高の左腕・香西は早大スポーツ科学部のスポーツ自己推薦入学試験に合格。来春からは神宮のエースを目指す[写真=宮原和也]

 11月6日。九州国際大付高・香西一希(3年)はあこがれの神宮球場で、早慶戦(2回戦、9対6で早大が連勝で勝ち点)を観戦した。

「感動しました。東京六大学の独特の応援スタイル。プレーの精度も、高校野球とは比べものにならないほど高い。閉会式まで、最後まで見て、福岡に帰りました」

 九州大会優勝校として出場した昨年11月以来となる、学生野球の聖地に魅了されたが、実は心中穏やかではなかった。

「ここで、プレーできるのか……」

 香西はまだ、受験生の身であったのだ。

 高取少年野球クラブに在籍した小学5年時に、全日本学童に出場して16強進出。一塁手兼投手として、神宮球場でも投げた。「学童なので、本来よりも前で特設マウンドでしたけど、素晴らしい球場でした」。同クラブのユニフォームのデザインはエンジ。ちょうどそのころ、早慶戦をテレビ観戦する機会があり「早稲田大学野球部、神宮でプレーしたい」と、具体的な目標として早大へのあこがれが芽生えた。

 百道中時代に在籍した糸島ボーイズでは2、3年時にジャイアンツカップ出場。全国大会にも2年夏(中堅)、3年春(投手)と大舞台を経験した。高校進学に際しては「福岡県内で一番、甲子園の可能性が高く、投手育成にも長けている」(香西)と、楠城徹監督(元西武スカウト部長、元楽天編成部長)が指揮する九州国際大付高へ進学した。

「スピードよりも、コントロールと緩急」と自らのスタイルを語る。最速135キロも、実際は130キロに届かないストレートが軸。172センチ。身長、球威がなくても、ヤクルト・石川雅規のように投球術で勝負するコツを熟知している。スライダー、カーブ、カットボール、チェンジアップ、ツーシームを駆使し、丁寧にコーナーに突くのが武器。2年秋の県大会、九州大会を制し、明治神宮大会4強、今春のセンバツでは8強へ導いた実績がある。

順風満帆の中でアクシデント



今春のセンバツでは8強進出。今夏の甲子園では背番号11を着け、3回戦進出に貢献した[写真=BBM]

 順風満帆の香西にアクシデントが起こったのは、4月末の春の九州大会準決勝(対神村学園高)だった。内野ゴロを打った際に一塁ベースを踏む際に左足首を痛め、約2カ月の長期離脱を余儀なくされた。夏の福岡大会では体調不良により、大会終盤に一時ベンチを外れた。エース不在の危機も、チーム全体が奮起し、激戦の福岡大会を勝ち上がり、春夏連続での全国切符。「皆が自分を『甲子園のマウンドに立たせたい』と。恩返しするつもりで、全力で腕を振りました」と、さまざまな思いを胸に、背番号11を着けた明徳義塾高との甲子園初戦(2回戦)では完投勝利(2対1)。高松商高との3回戦で敗退(1対2)も、6回2失点と持ち味を発揮した。

 楠城監督に「早大志望」を伝えたのは、夏の福岡大会前だった。「ケガをしてチームにも迷惑をかけていたので……。チームのために、力になりたかった」。自身の進路を優先することはできなかったという。楠城監督は早大OBで、あらゆるネットワークを活用し、受験の可能性を模索。早大スポーツ科学部のスポーツ自己推薦入学試験を目指すことになった。

 香西は夏の甲子園後、侍ジャパンU-18代表でプレーした。銅メダルを獲得したU-18W杯(アメリカ・フロリダ)から帰国したのは9月20日。出発前から準備は進めていたが、出願締め切りは同29日に迫っており、急ピッチで書類選考(スポーツ競技歴調査書)に必要な書類を用意したという。その後は、書類選考突破に備えて、第二次選考へ向けた小論文試験と面接試験の対策である。香西はボールからペンに持ち替え、猛勉強に励んだ。10月26日に書類選考をクリアし、第二次選考は11月5日に行われた。

「入試を終えた翌日の11月6日の早慶戦のチケットは、事前に手配していました」

 結果が出るまで、不安の時間を過ごした。11月11日、午前10時。Webサイトによる合格発表で、香西は自らの受験番号を確認した。

「楠城監督、西尾太一部長のほか、多くの先生方、関係者の協力により、合格することができました。心から感謝しています」

より熱が入る練習


 神宮への扉が開かれ、九州国際大付高の活動拠点である若松グラウンドでの練習も、より熱が入っている。1年春からの神宮デビューを照準に、トレーニングを継続。8月31日の大学日本代表との壮行試合(ZOZOマリン)では、先発して3回1安打1失点と、トップレベルの大学生相手での好投に自信を深めた。「自分のスタイルを磨き、4年後にはプロに行きたい」。ストレートのアベレージを上げながらも、緩急自在のピッチングを極めていく。

 目標は「チームを勝たせられる投手」そして「野手が守りやすいように、テンポ良く投げ込んでいきたい」と明るい表情で語った。

「早稲田は東京六大学でリーグ戦4連覇(2002年春~2003年秋)が最高成績です。その上をいく、5連覇に挑戦し、勝利に貢献できるピッチャーになりたいです」

 九州国際大付高での練習の合間には、後輩たちにアドバイスする場面もたびたび見られた。高校3年間で自ら考え、研究し、行動に移し、実践する過程を、何度も経験してきた。「自律」が求められる大学野球において、さらなる成長が期待できそうだ。

文=岡本朋祐
 
   

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