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ホリプロの芸能プロデューサーが、文学の中の「マウント」についてモノ申す!

ホンシェルジュ

ドラマや映画などの制作に長年携わってきた読書家プロデューサー・藤原 努による、本を語る連載。幅広い読書遍歴を樹形図のように辿って本を紹介しながら、自身の思うところを綴ります。

#4では『やりなおし世界文学』という1冊をきっかけに様々な海外文学を読み返した時のハナシ。文学界における「マウント」や「自意識」について気付いたこととは。「トホホ……」なオチまでぜひお楽しみください。

マウントを取られたくない文学界の巨匠たち

 

「上巻読むのに4ヶ月。一気に3日で中下巻!」

新潮文庫版『カラマーゾフの兄弟』の帯にある金原ひとみの言葉ですが、こんなに短くてしかし空気が十分に伝わる書評というのも珍しいのではないかと個人的に思います。

ロシアの覚えにくい人名がたくさん出てきてなかなか覚えられないし、何度も挫折しそうになりながら何とか上巻を読み終え、でもその空気をつかんだら、残りの2巻はもう面白過ぎて一気!ということなのでしょうが、先に告白しておくと僕、藤原はドストエフスキーの作品に一冊も手をつけたことがありません。いつか読まなくては、と若い頃から思い続けているのですが、いざとなると腰が重くなってたどり着けないのです。金原さんの秀逸な言葉をもってしても、あんなにいろんな本を読んでいるであろう作家が上巻読むのに4ヶ月もかかるのだとしたら、僕なら一体どんなことになってしまうのか?

本好きを自称しながらその風上にも置けない所業だと自認しております。

日本文学に比べて海外文学の造詣が格段に浅い(こんな言い方が正しいのかどうかわかりませんが)僕にとって、読書界における大きな精神的壁が海外文学にあるのかもしれません。

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そんな僕ですが、この夏、たまたま書店で見かけた津村記久子の『やりなおし世界文学』という本を気になって購入しました。

著者津村 記久子 出版日

この本の帯に、翻訳家の岸本佐知子さん(この人のエッセイがすごく好きなのです)が伝えている言葉が僕的には何とも魅力的でした。

写真:藤原

 

津村さんのこの本を読み始めて、岸本さんと同様、「あー引き芸の人なんだ。すごくホッとする」と思ったのです。僕には「私なんて」という姿勢で文章を書く人への共感性がとりわけ強いようです。自信満々と程遠い感覚で文章を書く人が、それでも、面白かったんです、と書いていると何となく信用できると言うか。

 

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