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出口のない暗闇の中を走り抜けた孤独な少年の慟哭。重松清『疾走』レビュー

ホンシェルジュ

重松清の小説の中でも一際重苦しく陰鬱な衝撃作、『疾走』。
本作は史上最強の鬱小説であり、トラウマになったと述べる読者も多く、平凡な少年・シュウジが一身に受ける迫害や、絶望的な展開にとことん打ちのめされます。
今回は重松清『疾走』のあらすじや魅力を、ネタバレ考察を交えご紹介します。

『疾走』の簡単なあらすじと登場人物紹介

主人公は陸上部に所属する中学生のシュウジ。足が速いのが取り柄で走るのが好きな少年です。

シュウジは会社員の父、専業主婦の母、高校生の兄の四人家族。彼が生まれ育った地方都市には差別が存在し、海沿いに暮らす「浜」の子たちは「沖」の住民を蔑んでいました。

ある時、進学校に通っていた兄・シュウイチが事件を起こします。シュウイチは好成績を維持し続けなければいけないプレッシャーに負け、そのストレスを放火で発散していたのです。

兄が放火で逮捕された事でシュウジの家庭は崩壊。世間の中傷に耐えかねた父親は蒸発、母親はギャンブルに溺れ、一切の家事を放棄します。

それでもシュウジは学校に通い続けますが、犯罪加害者家族として過酷な迫害に晒され、クラスメイトには無視を含むいじめを受けるなど、息苦しい日々を強いられることに。

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孤独なシュウジの心の支えは沖の教会の神父と、同級生のエリでした。

やがてシュウジは遠縁の親類に引き取られたエリを追いかけ東京に来ますが、その途中に立ち寄った大阪で、幼い頃に親しくしていた女性・アカネと再会。

アカネはヤクザの新田と結婚しており、シュウジに目を付けた彼は、凄まじい暴力と犯罪の現場に引きずり込みます……。

著者重松 清 出版日2005-05-25

地方都市にはびこる見えない差別が可視化される絶望

『疾走』は西日本の地方都市が舞台。

この町は干拓地に造成された住宅地「浜」と、干拓地ができる以前から存在した集落「沖」に分かれており、浜の人間は沖の人間を見下していました。

新旧住民の対立。

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