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車いすラグビー・池透暢が銅メダルの世界選手権で見つけた、花形プレーヤーとしての厳しさと面白さ

パラサポWEB

試合は52対57で終了。敗れたと同時に、日本代表の連覇への挑戦も終わった。

日本から応援に駆けつけた人たちに手を振る選手たち

スターティングメンバーの池は、試合後「全員が必死に取り組んだ結果。勝つぞという気持ちが強すぎて、序盤に空回りしてしまった」と言葉を振り絞った。キーエリア付近で相手ローポインターにひっかけられて転倒するなどし、ボール保持権を相手に渡してしまう場面もあった。車いすラグビーはオフェンス優位の球技で、ひとつのミスが勝敗を分ける。一点差のゲームも少なくない。組織力の高いアメリカ相手に、前半だけで6点差も付けられるのは絶望的だった。

翌日は銅メダルのかかる3位決定戦。予選で接戦を演じたホームチーム、デンマークとの対戦だ。序盤から素早いトランジションでリズムを作った日本は第1ピリオドで4点リード。そのまま点差を保ち、61対57で快勝。見事、銅メダルを手にした。

池はまっすぐ前を向いてこう振り返った。
「いいラグビーができました」

笑顔をのぞかせた銅メダリストは、今大会で得た課題を口にする。
「アメリカ戦では、自分では強い気持ちで臨んでいたつもりだったが、メンタルを一瞬奪われていた。(チームメートの)羽賀(理之)に意見をもらい、周りからはそう見えていたんだと気づかされた。一生懸命やっていた悔しさもあったけれど、そういう悔しさを再認識することができ、自分を成長させてくれると感じました」

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パリに向けた課題はメンタリティ。日本は東京大会に加え、その前哨戦と位置づけられた「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」でも準決勝でオーストラリアに敗れており、「準決勝の壁」は高くそびえ立つようにも思える。だが、「そんなものはない」と言うようにオアーHCは首を振る。「準決勝が壁と言うより、メンタルの問題。コーチとしては、今もベンチで『ファイト』と声がけをしているし、今後もサポートしていきたいと思う。あと、メンタル面の専門のサポートを用意するかどうか、チームとしてもそういう話しているところです」

さらに、オアーHCは、4年に一度の国際大会を終えた池についてこう言及する。
「スマートであると同時に、ハードにプレーできる池は、強いリーダーシップで日本を世界一に引き上げてくれた。キャプテンはチーム全体のケアをしなくてはいけないから、池の負担を下ろしてあげたい。もし彼が望むのであれば、次のキャプテンを考えるときかもしれません」

銅メダルを手に、同じ所属の橋本(右)とオアーHCを囲む

車いすラグビーは、日本代表歴が最も長い島川慎一が「楽な試合はひとつもない」と言うほど、群雄割拠の時代になった。決勝は、プール2位同士のアメリカとオーストラリアの顔合わせとなり、予選で日本に敗れたオーストラリアが2大会ぶりに優勝を果たしている。

2013年に初めて国際大会で訪れたのがデンマーク。観戦に来てくれた子どもたちとの交流もあった

池は熱っぽく言う。
「多国のレベルの高さに、この競技がますますハイレベルになると思わせられた。そこに『勝たなければいけない』というより、自分たちも、それを超えられるように車いすラグビーから学んで成長し、見てくださってくれる方に還元する。これから車いすラグビーはそんな段階に入っていく。これ以上高めていくのは苦しさも伴うし、厳しさをもって進んでいかなければ、また涙をのむことになる。この競技に人生をかけてやっていく意味を感じられた大会になりました」

10年前、ロンドンパラリンピックの車いすラグビーをテレビで観て、車いすバスケットボールから転向した。当時もスーパースターだったライリー・バット(オーストラリア)とチャールズ・アオキ(アメリカ)はまだ決勝の舞台の中心にいる。「ハイレベルな試合ばかりだから、もう観客として観たいですよね」と冗談ぽく語る池の目には、すでに次に向かう覚悟が宿っていた。

text & photo by Asuka Senaga
key visual by Lars Møller for Parasport Danmark

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