top_line

気持ちいい!サクサク進む爽快パズルゲーム
「ガーデンテイルズ」はここからプレイ!

車いすラグビー・池透暢が銅メダルの世界選手権で見つけた、花形プレーヤーとしての厳しさと面白さ

パラサポWEB

死力を尽くして、車いすをプッシュし、激しいプレッシャーをかけ続ける――池透暢は、日本のハードワークの象徴だ。10月、デンマーク・ヴァイレで開催された車いすラグビー世界選手権。日本が初めて世界一を獲った前回大会で、名将ケビン・オアーヘッドコーチ(HC)が「影のMVP」と評した池は、今回もエースとして、キャプテンとして、強い日本代表をけん引した。

もう一度、ワールドチャンピオンに

現在、42歳。池が初めてパラリンピックに出場したリオ大会で一度ピークに達した“フィジカルの進化”は、今もなお止まらない。2大会連続の銅メダルに終わった東京大会以降も、地元・高知でトレーニングを積んで体力アップを図る。近年は、車いすの工夫にも注力。一体感を高めてスピードを出すために、お尻の型取りをしたバケット(座面)を使用し、車高を試行錯誤するなどした。

「パリで金メダルを獲得するために、自分たちがやってきたことがどこまで通用するか、何が不足しているかを確かめる大会」
こう位置づけて、池は本大会に臨んだ。優勝がすべてではないが、もちろん連覇を目標に掲げていた。

高さとパスの正確さが武器の池
photo by Lars Møller for Parasport Danmark

しかし、大会前、池の障がいクラス分け「3.0」が再評価の対象となることが発覚。懸念されていた「3.5」に上がることなく、大会序盤には従来の持ち点に落ち着いたが「これまでの努力や工夫は何だったというショックもあった」と明かしている。

また、現地でも2戦目で車いすのバケットが割れたり、予選最終戦でストラップが切れたりするなど波乱が続いた。幸い車いすの予備を持ってきており、事なきを得たが、少なからず動揺があったように見えた。

予選は全勝で1位通過

広告の後にも続きます

12ヵ国が争う世界選手権は、8チーム出場のパラリンピック以上にタフな戦いが強いられる。この1年、日本代表チームとしても、ライン(コート上の選手の組み合わせ)のバリエーションが増え、ミッドポインターや若手も世界トップレベルに近づいた。「他チームと比べ、ベンチの厚みが日本の強みになっている」とはオアーHCの言葉。とくに控えメンバーだった「池の後継者」橋本勝也の成長は著しく、東京パラリンピックでチーム1プレータイムが長かった池をベンチで休ませることができる目論見もあった。それは、決勝トーナメントの最終局面で、エースの池がフレッシュな状態で強豪と対峙できることを意味していた。

強い気持ちで臨んだアメリカ戦のティップオフ

事実、多彩なラインで戦う日本代表は、強かった。2つにプール分けされた総当たりの予選では、初対戦のコロンビア相手に白星発進し、地元デンマークにオーバータイムの末、勝利。ポイントゲッターのザチャリー・マデルを擁するカナダ、格下のブラジルに連勝した後、今大会で優勝したオーストラリアにも快勝した。プール全勝の1位通過で、別プール4位のニュージーランドに勝利。ここまでは思い描いたシナリオ通りの展開だった。

「全勝は素直に素晴らしいこと。でも、明日からの戦いはここまでの勝利とは関係ない。『崖っぷち』の気持ちで戦う。もうあんな思いはしたくないですから」

準決勝の壁

円陣で選手に語りかける池

池が思い起こすのは東京パラリンピックの準決勝だ。日本が対戦成績で圧倒していたイギリスとの試合で、高いディフェンス力によりロングパスが切り裂かれ、リードを許して流れを取り戻せなかった。日本に対抗心を燃やしていたイギリス戦の前に、キャプテンとして選手たちの気を引き締める行動を起こすべきだったのではないだろうか――大会後も、池は葛藤した。

迎えた準決勝の前日、準々決勝でニュージーランドに勝利した後、「この後、『崖っぷち』でということをみんなと話そうと思っているが、みんなも同じ気持ちを持っていると思う」とした池。「日本代表は(東京大会から)この1年で、ひとりひとりのメンタルをコントロールするスキルが上がっている。頼もしいチームになってきているんです」と落ち着いた表情で語った。今大会の日本代表は東京パラリンピックと同じメンバーであり、当時の悔しさを共有する。実際に、同じ準々決勝後に報道エリアで話を聞いた乗松聖矢も、同じように東京大会準決勝に触れて気を引き締めていた。

アメリカ戦では池が大量のトライを挙げたが……

そして準決勝。対戦相手は3年ぶりの対戦となるアメリカだった。「ワーク、ワーク、ワーク!」。会場の音響に負けないオアーHCの大きな声が鳴り響く。序盤で立て続けにミスを犯した選手たちを鼓舞する声だ。日本代表は第1ピリオド終了時点で3点のビハインド。その後、成すすべなく、点差を広げられて、オアーHCの声が響く光景は、くしくも、東京大会と同じ様に映った。

  • 1
  • 2
 
   

ランキング(スポーツ)

ジャンル