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子どもが自力で組み立てるサッカーボールでSDGs

パラサポWEB

「ある企業の協賛で、元プロサッカー選手を呼んでサッカークリニックのイベントを開催した時のこと。元選手の優れたテクニックを見る前にMY FOOTBALL KITの組み立てを子どもたちにしてもらいました。タイとミャンマーの子どもたちも招待したんですが、いつの間にか自然とコミュニケーションが生まれていたんです。だから、その後のゲームでも別に何か言ったわけでもないのに、国籍関係なくみんなが混じり合って楽しんでいたのにはびっくりしました」

SDGsを学んだことがMY FOOTBALL KITの発想の源

そもそも、このMY FOOTBALL KITは、どのような経緯で生まれたのだろうか。きっかけは、新卒でモルテンに入社した内田氏が、会社の戦略を考える研修に参加したことにある。

「当時モルテンは、それまでアディダスしか取っていなかった、UEFAヨーロッパリーグという世界的なサッカー大会の試合球契約を初めて勝ち取ったところでした。その後、AFCというアジアサッカー連盟の試合球契約も取り、その勢いに乗ってどのように事業を伸ばしていくべきか、選抜された社員が外部から講師を招いての研修を受けていました。今までにない大きな契約だからこそ、同じようなビジネスモデルではなく、いろいろな可能性を考えるように心掛けました」

内田氏は、この研修で初めてSDGsの概念に触れた。SDGsの17の目標とそれに紐付いた169のターゲットを読み込んでいったとき、世界、とりわけアジアで目にした子どもたちの姿が脳裏に浮かんだ。衣服を丸めてボールにし、裸足で蹴っている子どもたちのためにモルテンができることは何か。それを突き詰めて辿り着いたのが、組み立て式のボールを子どもたちに送って「質の高い教育をみんなに」(SDGsの目標4)を実現し、ボールを作るメーカーとして「つくる責任・つかう責任」(SDGsの目標12)を果たすことだった。

「SDGsと出会うことになった会社の戦略研修では、とにかく自分がやりたいことを目指さないとだめだと教えられました。やりたいことと、できること、求められることをする。求められることには、会社から求められることのほか、社会から求められることも含まれます。この3つが重なり合うところを目指すことがやりがいにつながっていくんです」

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内田氏自身、プロのサッカー選手になりたくて大学時代までサッカーを続けていたが、残念ながら夢は叶わなかった。だからこそ、MY FOOTBALL KITにかける思いがある。

「研修の講師の方に言われた、寝ても覚めても考えてしまうようなテーマを目指すようにというアドバイス。私にとってそれはサッカーです。サッカーをしていなかったら今の自分はなかった。サッカーが成長させてくれたという実感はすごくあります。一人ひとりの子どもたちが成長できるようなテーマ、夢を追いかけるきっかけが平等に与えられない世界は嫌だなと思いますし、そんな状況は何とかして変えたい。すべての子どもたちが成長のきっかけをもつことができれば、世の中は変わると思うんです。私は、プロのサッカー選手になる夢を叶えられませんでしたが、だからといって夢がいきなりなくなったわけではありません。サッカーで成長させてもらったからこそ今、当時と同じ熱量でMY FOOTBALL KITという新しい夢に向かうことができています」

企業の事業の延長線上に活用したケースも

MY FOOTBALL KITは、ボール1個いくら、何個送ればいくらというような、普通の商品の売買とは異なるシステムで運営されている。企業でも団体でも個人でも、こういうところにこういう形で贈りたいとか、極端なことを言えば贈り先が決まっていなくても、どのような形で取り組みたいかによって、協賛にはさまざまな方法がある。たとえば、水道の工事やトラブルに対応している広島のある企業は、その事業の延長線上でMY FOOTBALL KITを活用しているのだそうだ。

「その企業は、MY FOOTBALL KITをある幼稚園に贈ることにしたんですが、ボールの組み立ての前に、まず紙芝居で水の大切さやSDGsへの貢献について子どもたちに伝えたいという希望がありました。とはいえ、本業とは違うことをするのは慣れていないので、最初の5回は私たちが一緒にやって、感覚を掴んでいただきました。ちょうど先日5回目が終わり、今後は冬に向けてどうするかをお考えになるそうです。このようにMY FOOTBALL KITを、事業の延長線上に置いて、SDGsに企業としてどう貢献しているのかを子どもたちに伝えながら事業を拡大していく。この企業のケースは、会社の仕事とMY FOOTBALL KITが有機的に結びついて効果を生み出している良い事例だと思います」

モルテンは、このようにただ組み立て式のサッカーボールを作るだけではない。SDGsにどのように貢献していくか、企業として社会課題に取り組んでいくかを協賛企業とともに考えている。

「みなさんに共通しているのは、このような支援を単発で終わらせたくないという気持ちがあることです。どこかでイベントをして、花火を打ち上げておしまいというのではなく、持続的にこういった支援を繋げられるような枠組みを作るにはどうしたらいいかというような相談を受けます。一方で、プロジェクトを続けて間もなく2年になりますが、さまざまな課題が見えてきているので、それを解決するには製品なのかサービスが良いのか、考えている途中です。私たちの事業もボールを開発しておしまいではありませんので、期待していただきたいと思います」

MY FOOTBALL KITは、自分で組み立てるのが前提ではあるが、実は視覚に障がいがあっても組み立てられる。内田氏が以前参加した活動では、一番早く組み立てたのが目が見えない子どもだったのだそう。触覚で、穴が2種類、突起が2種類あることがわかったとき、それを繋げればいいのだとすぐに理解したらしい。ブラインドサッカーをしているその子は、指導者に「目が見えるようになることは不可能なんだ。今あるものを最大限に生かすようにしなさい」と言われたことをきちんと胸に刻んでいる。MY FOOTBALL KITにできることは、まだまだ無限にありそうだと感じた。

text by Sadaie Reiko(Parasapo Lab)
写真提供:モルテン

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