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讃岐うどんを盛り上げる香川「うどんタクシー」が、予想以上に難関試験だった

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「うどんタクシー」ドライバーの筆記試験の様子(画像提供:琴平バス)

筆記試験は9割以上正解すれば合格です。筆記試験に合格したら次は実地試験。試験官がお客として実際にタクシーに乗車し、ドライバーの言葉遣いや立ち振る舞い、案内するうどん店の説明内容などをチェックします。お客とのリアルな会話のやり取りがテストされるため、讃岐うどんの知識だけではなく、県内の観光情報をはじめ、幅広い「香川県」の知識が必要となります。

そして最後に行われるのは、うどんの手打ち試験。こちらは、お客から「運転手さんは実際にうどんを打ったことはあるの?」という質問が、思いのほか多いことから設けられた試験です。

うどんの手打ち試験(画像提供:琴平バス)

「自分でうどんを手打ちしたことがあるという経験は、車内での話題の一つとしてもとても役立ちます。それに、うどんは、小麦粉と水と塩というシンプルな材料で作られています。各店がどれだけの手間暇をかけてうどんを作っているか、その苦労を知るためにも、うどんの手打ち試験は欠かせないんです」(友成さん)

地元民もSNSで発信!かわいい行灯のタクシー

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うどんの手打ち試験をパスすると、晴れて「うどんタクシー」の専任ドライバーとして働くことができます。現在、琴平バスには7人の専任ドライバーがいて、「うどんタクシー」は毎日県内のどこかで稼動し、休日は2〜3台が運行しているという人気ぶり。車体も通常のタクシーと同じですが、「うどんタクシー」仕様のときは、行灯(あんどん)が「うどん」と書かれたどんぶりデザインのものに付け替えられ、車体にも大きく「うどんタクシー」と書かれたマグネットシートが貼り付けられます。

どこに止まっていても目を引く「うどんタクシー」の車体

車内には香川県のマスコットキャラクター「うどん脳」のぬいぐるみやうどんのオブジェが飾られ、座席シートやドライバーの制服のネクタイもうどんがあしらわれたものになるなど、讃岐うどんを楽しむためのおもてなしが徹底されています。

座席シートはだしとうどんと散らしたネギを表現。もしかすると「うどん脳」と一緒に讃岐うどんめぐりができるかもしれない

「『うどんタクシー』をご利用されるのは観光客が7割を占めますが、この車で走っていると、地元の方も手を振ってくれたり、信号待ちなどの停車中に写真を撮ってSNSで発信してくれたりと、皆さんに愛されていることが実感できてとてもうれしいです」(友成さん)

うどん店の評価も良好

観光客のタクシー利用で、うどん店への案内希望が多いことから始まった「うどんタクシー」。うどん店と連携することで、讃岐うどんを盛り上げる一助となり、結果として、お互いWin-Winな関係を築いています。以下、うどん店から届いた声です。

讃岐うどんに精通しているので、お客さんにしっかりと讃岐うどんの特徴を説明してくれます。「うどんタクシー」を利用して来ていただいた、ということで、お客さんと話すきっかけになるので私たちも楽しみですし、刺激を受けますね。他のお客さんの反応もいいですよ。駐車場に「うどんタクシー」が止まっていると、大抵の人が車体と一緒に写真を撮って盛り上がっています。そんな光景は見ていてこちらもうれしいですし、店としても活気づきますね。香川にいらっしゃる方は、このタクシーをどんどん利用してほしいと思います

「麺匠くすがみ」横田仁志さん

友成さん(右)と「麺匠くすがみ」の横田さん(左)。「うどんタクシー」SNSでアップする画像もしっかり撮影

「うどんタクシー」はYouTubeチャンネルも開設していて、そこでも讃岐うどんやうどん店をしっかり発信してくれているのでありがたいです。うちは社会福祉法人が母体の店なので、その意味でも取材に来てもらうと大きな宣伝になるんです。実際、お客さんの反応もとても良く、「YouTubeを見て来ました!」という方も多いですね。知り合いのうどん店からも「この間、出てたね!」なんて声がかかったりして、コミュニケーションのきっかけにもなっています。香川=うどんということで、うどん店みんなで盛り上げて、ひいては香川県全体を盛り上げていけたらと思います。「うどんタクシー」はその架け橋になっているのではないかと思います

「竜雲」松岡翔太さん

「竜雲」の松岡さん。「竜雲」は歴代の高松藩主松平家の菩提寺である法然寺の門前にある

より一層の認知・普及を図る広報大使

うどん店からの評価も高い「うどんタクシー」。県内のうどん店をめぐる「うどんコレクションスタンプラリー」に参加するなど、讃岐うどんを盛り上げる活動にも積極的に取り組んでいます。県内の大規模イベント「うどんウルトラマラニック」という、60kmをマラソンしながら途中のエイド地点で7杯のうどんを食べて完走を目指すというイベントでは、救護車としても参加しています。

「うどん」の文字が愛らしい「うどんタクシー」の行灯。通常は赤いどんぶりだが、金色のどんぶりを見ると幸運が訪れるらしい

「雨が少なく小麦の栽培に適していて、水は軟水。瀬戸内海産のおいしい塩があり、観音寺市の伊吹島では良質ないりこが水揚げされ、小豆島はしょうゆで有名です。だから、香川県の食として、うどんは古くから根付き、愛されています。店のスタイルもそれぞれで、スーパーや学校などに麺を卸す製麺所には、自分でどんぶりを持って行くという素朴な面白さがあり、県内に多いセルフタイプの店では、自分で湯がいたり、天ぷらを選んだりして、さっと食べて帰る『地元感』が味わえます。フルサービスの店はオーダーも配膳もお店の人がしてくれるので、ゆっくりとうどんを味わうことができます。こういった香川の讃岐うどんの“文化”を、もっともっと多くの人に伝えていきたいですね。そのお手伝いを『うどんタクシー』でちょっとでもできれば、と思います」(友成さん)

「竜雲」の「坦々つけうどん(ごはんつき)」1玉小950円(税込)。麺には全粒粉を使っている。うどんでつけ麺タイプは珍しく、香川県で最初にうどんをつけ麺アレンジした

全国でもまれに見る、県を挙げて推進する個性の強い食文化。讃岐うどんが全国区となった現在でも、「うどんタクシー」はさらなる魅力を発信すべく“うどん愛”にあふれた活動をしています。徹底したドライバーの育成の根底にあるものは、やはり「地元のおいしさをもっと多くの人に」という愛にほかなりません。

取材先紹介

琴平バス/うどんタクシー
HP:https://www.udon-taxi.com/
取材・文別役 ちひろ

コピーライター、ライター、編集者。東京生まれ。まち歩きフリーペーパー制作に長年携わる。旅や食、建築にまつわる執筆が多く、銭湯のフリーペーパーで10年以上執筆している。特にキリスト教会の建築・美術の愛好家で、24都道府県・約800軒の教会を訪ね歩いている。

Instagram: https://www.instagram.com/c.betchaku/
写真新谷敏司 企画編集株式会社 都恋堂
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