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「今年こそ地の利を生かして日本一を」…オリックス本拠地キーパー・岩田陽介さんの願い

ベースボールキング

「今年こそ地の利を生かして日本一を」…オリックス本拠地キーパー・岩田陽介さんの願い

◆ 猛牛ストーリー 【第37回:岩田陽介さん】

 連覇と、昨年果たせなかった日本一を目指す今季のオリックス。監督・コーチ、選手、スタッフらの思いを「猛牛ストーリー」として随時紹介していきます。

 第37回は、本拠地・京セラドーム大阪のグラウンドを整備している岩田陽介さん(47)です。




 昨年の日本シリーズは、第1戦・第2戦と第6戦・第7戦がパ・リーグ出場チームの本拠地球場での開催でしたが、コロナ禍などの影響で日程が延びたこともあり、第6戦以降は京セラドームが使えず、オリックスは準本拠地であるほっともっとフィールド神戸で戦いました。

 今年はクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜けば、日本シリーズの第3戦~第5戦は京セラD大阪で試合が行われるとあって、岩田さんは「万全の準備をするので、地の利を最大限に生かせる本拠地で日本一を」と熱望しています。


◆ 能見投手兼コーチとは同郷

 9月30日のロッテ戦。逆転優勝のために負けることの出来ない本拠地最終戦を、岩田さんは違った感慨を持って見守っていた。

 兵庫・豊岡市出身で、出石町(現・豊岡市)出身の能見篤史兼任コーチとは同郷。少年野球の「五荘エンゼルス」時代には、4歳年下の能見が所属していた「小坂プラッキーズ」と対戦したこともある。

 その能見が今季限りでの現役引退を表明。本拠地でのリーグ戦最後となる登板と、引退セレモニーが試合後に控えていたのだ。

 2-2の8回からエース・山本由伸の後を継ぎ登板した能見が、安田尚憲を直球ばかり4球で空振り三振に仕留め、マウンドを降りたことを見届けると、岩田さんは「立場は違いますが、同じフィールドに立てたことには感慨深いものがあります」。試合を裏舞台で支えるキーパーから、野球人の顔がそこにはあった。


 能見と京セラドームとの縁は深い。

 初登板も京セラドームで行われた2005年4月3日のヤクルト戦。ほかにも2007年の初完封や、2018年の初セーブもこの地で達成している。

 オリックスだけでなく、京セラドームをホームとして使用する阪神からもマウンドの仕様には要望があり、能見の希望は「固いのは好きでないので、軟らかめに」だったそうだ。


◆ 腕が問われる“マウンド作り”

 岩田さんは、神港学園から社会人野球の河上薬品-阿部企業、クラブチームの全播磨硬式野球団(現・YBS播磨)などを経て、ゴルフ場の芝生や競技場、サッカー場などのスポーツターフを扱う「グリーンシステム株式会社」(本社・大阪市)に入社した。

 全播磨時代には、右のサイドスローとして全日本クラブ選手権に出場。西武ドーム(現・ベルーナドーム)のマウンドに立ったこともある。

 2004年まではグリーンスタジアム神戸(現・ほっともっと神戸)を担当。2005年からは京セラドームで10人近くのスタッフをまとめるチーフとなった。


 人工芝がメインの京セラドームで、キーパーの腕が問われるのはマウンド作り。

 野球規則により、マウンドの傾斜は投手板の前方15.24センチから本塁に向かって182.88センチまでの勾配は30.48センチごとに2.54センチと決められており、各球場は同じ仕様に定められている。

 それでも、投手の口から「球場によって高さや固さが違う」という声が出るのは、本拠地の投手に合わせたマウンド作りや、最高の舞台を整えるというキーパーのこだわりがあるからだという。

 「京セラDのマウンドは、約10年前から土と粘土質の土、粘土の3種類に水を配合して作っています。難しいのが水加減です。土は乾燥していると固まらないので、粘りを出すために水の量を調整するのですが、そのバランスが崩れると試合中に投手が踏み出した脚の接地部分が掘れ過ぎたりします」

 基本的な配合割合はあるものの、球場内に吹く風による乾燥を逆算したり、野球規則の範囲内でホームチームの先発投手の好みに応じて固さや柔らかさも調整したりする。


◆ 「料理と同じですね」

 失敗もあった。バランスの取れる限界に挑戦しようと考えて「水加減を攻め過ぎた」ところ、予想以上に柔らかくなってしまったという。幸い、投手からのクレームはなかったが、祈る思いで試合を見守ったそうだ。

 「レシピはありませんが、温度や水加減が大事になるマウンド作りは料理と同じですね」と岩田さん。練習中には、投手のスパイクの裏もチェックする。

 「爪の本数や長さ、爪の位置や並び方など形状を見ています。土の食いつきが悪いと踏み出した脚が本塁方向に滑ることもあるので、マウンドを仕上げる際の参考にしています」という。


 整備をする時間とイベントなどのリハーサルが重なる時には、兵庫県・明石市の自宅から午前5時に球場に着いて仕事を始める。

 きれいにならした後は、試合開始時間から逆算して仕上げに撒くジョウロ(15リットル)を2杯から4杯に増やすなど、水の量も変えている。

 「グラウンドの不具合で試合を止めることは絶対にあってはいけないこと。ミスをした時には取り上げられますし、しんどい仕事ですが翌日に選手らから『良かったですよ』と言ってもらえると、疲れも飛びます」


 後継者も育っている。

 経験者として採用された蔓(ふじずる)俊光さん(25)はマウンドを任され、松井祐也さん(28)は二軍の試合が行われる杉本商事BS舞洲の整備を担う。

 京産大野球部出身の松井さんは、野球専門誌に掲載された岩田さんの記事を読んで調理師から転身。「裏舞台の方が向いています」と岩田さんの背中を追う。後輩には「失敗して覚えていけばいい」とアドバイスを送る。


◆ 「京セラドームで日本一を決めてほしい」

 昨年の日本シリーズは、コロナ禍でリーグ戦の日程が延び、ヤクルトが本拠地として東京ドームを使用。オリックスも6戦目以降はほっともっと神戸が舞台になった。

 ほっともっと神戸もグリーンシステムが整備をしており、6戦目の前日には岩田さんがマウンドを掘り返してイチから作り上げ、同日夕方からのヤクルトの練習に間に合わせた。

 ヤクルトの伊藤智仁投手コーチからは「よく半日で仕上がりましたね」とねぎらいの言葉をかけられたそうだ。


 ほっともっと神戸での寒さなどは、相手チームも同条件。グラウンド整備も万全に行えるとはいえ、慣れ親しんだ本拠地の方が、ホームチームが有利に戦えるというのは疑いがないところ。

 「屋外のほっともっと神戸に比べ、風雨などに影響されることのない京セラドームの方がより細かい整備ができます。CSファイナルステージを勝ち抜き、今年は地の利を生かすことが出来る京セラドームで日本一を決めてほしいですね」

 パ・リーグのファイナルステージは、12日(水)から京セラドーム大阪で開催。その先にある「SMBC日本シリーズ2022」は22日(土)からセ・リーグ球団の本拠地で開幕となり、オリックスがCSを勝ち進んでいれば、25日(火)からの第3戦以降は京セラドーム大阪での戦いとなる。


取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

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