村田諒太、ラスベガスで王座陥落。「何故、王者は敗れたのか」
村田諒太、ラスベガスで王座陥落。「何故、王者は敗れたのか」
  日本時間21日、米ラスベガスのパークシアターでゴングとなったWBA世界ミドル級タイトルマッチで、チャンピオンの村田諒太(帝拳)は同級3位の挑戦者、ロブ・ブラント(米)に大差判定負け。2度目の防衛に失敗し、王座から陥落...

 

 日本時間21日、米ラスベガスのパークシアターでゴングとなったWBA世界ミドル級タイトルマッチで、チャンピオンの村田諒太(帝拳)は同級3位の挑戦者、ロブ・ブラント(米)に大差判定負け。2度目の防衛に失敗し、王座から陥落した。
 村田本人にとっても、ファンにとっても、(世界中の多くのメディアやボクシングジャーナリストもこのような12Rの結果を予想していなかった)まさかの敗戦だったと言えるだろう。おもなブックメーカーのオッズも村田の勝利が1.11~1.22倍、ブラントが4.0~6.59倍と村田有利としていたのだ。

 

「まさかの」の理由は、ブラントがボクシング通好みの好選手ではあるが、派手やかなミドル級のトップ選手の中では少し“地味”な挑戦者であったこと。加えて、村田はこの試合をホップ、ステップ、ジャンプのステップに位置付けていたことだ。
試合前、帝拳ジムの本田明彦会長、浜田剛史代表は「勝つだけじゃダメ。ノックアウトを狙わせる」とはっきり公言していた。ボクシングの心臓部、ラスベガスでその実力をアピールし、ミドル級で村田を上回る存在である元3団体統一王者、ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)や、そのゴロフキンに競り勝った人気者、サウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)との対戦につなげる。この壮大なミッションを実現するために、ブラント戦は圧倒的な勝利が求められるというのである。
 だから我々もノックアウトを期待した。試合展開によってはKOが生まれないにしても、よもや負けるとは思っていなかった。過去の試合映像で確認したブラントは、それほど迫力があるわけではなく、不安を掻き立てるようないやらしさも感じさせなかった。しかし、いざ蓋を開けてみると、予想が甘かったと言わざるを得ない、そこには厳しい現実が待っていた。

 

 

 試合は初回からブラントがペースを握った。キーワードは手数とスピードだ。ブラントは先手、先手でジャブ、右ストレート、さらにはボディへとリズムよくパンチをつなげていった。2回の開始ゴングが鳴ったとき、村田の左ほほが早くも腫れ、鼻血まで出していた。こんな姿をだれが想像したことだろう。
 村田は3回から得意の右ストレートや左ボディを懸命に打ち込み、形勢を逆転しようと試みた。5回にはその右で挑戦者を追い込み、いよいよ形勢を逆転していくかに思えたのだが……。
 6回以降、村田はワンツーを主体に懸命に攻めたが、その多くは右対策を積んできたブラントに防がれた。ブラントは村田のプレッシャーをかわすように上体を動かしながら左右に回りコンビネーションを打つ、村田の右ストレートの打ち終わりにジャブなどを返しておきポイント的な印象を得る。終盤には打ち終わりだけではなく村田の動き出しにカウンターを合わせた。そして、村田はペースをつかめないまま、いたずらにラウンドを重ねてしまう。読み上げられたスコアは118-110に、119-109が2人。終わってみれば大差の判定負けだった。

 

 

 村田は自らの敗北を正面から受け止めていた。
「(ブラントは)思ったよりも速かった。右も読まれていたし、自分の幅の狭さを感じた。あっ、負けたなという感じ。今日はもう完敗ですね」
 翌日の記者会見で本田明彦会長は「全員の油断。陣営全体の負け」と厳しい現実を総括。練習段階から不調であったこともほのめかした。

 

 村田は常々「リングに上って拳を合わせてみないと相手のことはわからない」とは言っているが、あの日の12Rを見る限りでは、やはり村田陣営はブラントに対して、少し見込み違いをしていたのではないかと思えてならない。本来ならば村田本人も陣営も対戦者の分析はとても優れているし、相手を過小評価することはないはずだ。確かに9月には風邪のような症状で体調を崩し、スパーリングが出来なかった期間があったが、陣営に不安は感じられず、村田はテーマを決め試行錯誤しながら70Rを超えるスパーリングをこなした。しかし、あの試合ではブラントは予想していた以上にスピードがあり、手数が出て、スタミナが落ちなかったのだろうか。村田陣営の予想を遥かに上回るほどブラントは村田を研究し対策をねってリングに上がり、実行し、成功したのか。エンダムとの第2戦とブランダムラ戦が良かったからではないと考えたいが「練習をしっかりこなしていけば勝てる」との自信と思惑は、この日のラスベガスではあてはまらなかったのか。村田が実力を発揮できず、そのボクシングが空回りしていたのが残念でならない。

 

試合後23日の夜、羽田空港に着いた村田は、「試合内容もパフォーマンスも良くないし、タラレバは意味がない」「調整も含めて自分の実力であり、その試合で出たものが実力であるとして、受け入れるしかない」とし、「今後のことは自分一人では決められない。これから話し合って決めたい」。そしてブラントとの再戦のオファーがきたとしても「それも会長と話しをしてから」と語った。 

 

村田自身が「準備してきたことに後悔はない」と言うように、中学生のころから夢見たラスベガスのメインイベントで、全力を尽くして負けたのだから、それ自体は恥ずかしいことではない。一方で、水面下で進められていたゴロフキン戦というビッグプランは完全に白紙となった。
 では、村田はこの先、どのような道を歩むのだろうか。五輪金メダリストという肩書きを背負い、日本ボクシングのけん引役を託され、多くのスポンサーに支えられてきた村田が「もう楽になりたい」とグローブを吊るしたとしてもおかしくはない。逆に「このままでは終われない」と現役を続けることも十分にあるだろう。今回の試合の契約には再戦条項が盛り込まれており、村田が希望すれば、ブラントとの再戦は可能だという。
 村田がどのような判断を下すかはわからないが、ブラント戦が最後になると思うと、少しもったいない気持ちにはなる。今回の村田はいろいろな意味で出来が悪かったし、本当の実力はこんなものではないだろうから。

 

写真提供:AP/アフロ

 

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(更新日:2018年10月29日)

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