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藤井風「damn」MVを観て 自問自答と前向きなゆるさに象徴される生き方

Real Sound

藤井風「damn」

 藤井風の「damn」がデジタルシングルとして9月30日にリリースされた。同曲は今年発売した2ndアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』の収録曲。YouTubeではリリースに合わせてMVも公開されている。

(関連:【動画あり】藤井風「damn」MVを観て

 MVは冒頭、鏡に映る藤井風のクールに決め込んだ表情から始まる。藤井は髪を綺麗にセットし、そのまま自信たっぷりにステージで歌を披露する。だがどうやら観客は退屈そうだ。客席からは冷ややかな視線を浴びせられ、犬にまでじっと見つめられる始末。藤井は一旦楽屋に戻り、顔を洗って再び会場に登場。するとステージには立たずに、自ら水をかぶって外に飛び出した。ジャケットを脱いで踊る姿は少々滑稽だが、徐々に気持ちが吹っ切れ、やがて生き生きとした表情で全力ダンス。最後は変顔と謎のポーズを見せて映像が終わるーー。

■常に自問自答し続ける彼らしい一曲

 序盤のレトロな世界観から、中盤は屋外、そして終盤は現代の渋谷のスクランブル交差点へと舞台を移し、ラストは大きなスタジアムのスタンドへと向けて踊るという一連の展開は、過去→現在→未来といった時間軸の流れを容易に想起させる。その中で、自身の過去の作品(具体的には「帰ろう」「きらり」「燃えよ」のMVの舞台)を挟み込むことで、本作は自分自身の成長をテーマとした、自己批評的な側面が強い作品になったと言えるだろう。

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 元々この「damn」という曲は、彼のこれまでの活動の集大成的な意味合いが濃い。特に印象的なのが、2番後にがらりとサウンドが変化するパートである。ここで彼は、今までの自分が歌ってきたことを俯瞰的に見つめ直し、自問自答しつつ未来へと歩み出す宣言をする。

 〈全て流すつもりだったのにどうした?〉というのは、「帰ろう」の〈ああ 全て流して帰ろう〉に対してだろう。〈何もかも捨ててくと決めてどうした?〉というのは、「きらり」の〈何もかも 捨ててくよ〉についてだ。そして〈明日なんか来ると思わずにどうした?〉というのは、「燃えよ」の〈明日なんか来ると思わずに燃えよ〉に対応している。

 過去に自分が歌った歌詞を現在の自分に照らし合わせ、どれだけ実践できているのか検証し、その上で〈全部まだまだこれからだから/いつかあんたに辿り着くから〉と歌う。過去の自分が掲げた“理想”に近づくために、目を向けるのは今の自分。脈のように打つビートの上で、自分自身に語りかけるような歌声で、いわば自己と対話を重ねながらもがき成長する姿を、ある意味ドキュメンタリー的に描いたこの歌は、活動を通して常に自問自答し続ける彼らしい一曲だ。

 今回のMVは、過去をまとめ上げ、自分を見つめ直して前へ進む、そんな彼の生き方を象徴するような作品である。

■今年の藤井風から感じる“前向きなゆるさ”

 こうした作品のコンセプトに至った背景には、現在の彼のモードがあるように思う。今の彼には、肩肘張らずに進んでいきたいといった“前向きなゆるさ”を感じる。それこそMV冒頭の“カッコつけた藤井風”を自ら否定するような、いい意味での軽さがあるのだ。

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