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黒島結菜が『ちむどんどん』で誕生させたニューヒロイン像 高まる『クロサギ』への期待

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『ちむどんどん』(写真提供=NHK)

 半年にわたって放送された朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)が無事に最終回を迎え、ヒロイン役を務めた黒島結菜がゴールテープを切った。筆者個人としては、本当に見事な走りぶりだったと感じている。黒島は近年の朝ドラ市場において、比嘉(青柳)暢子というニュータイプのヒロイン像を誕生させたと思うのだ。

【写真】『スカーレット』で八郎(松下洸平)に近寄る三津(黒島結菜)

 『ちむどんどん』といえば、物語の展開や登場人物の言動に対し、最後の最後まで視聴者のさまざまな意見が飛び交う作品だった。しかしそこには、目まぐるしく変化する社会情勢も少なからず影響していたのではないかと思う。コロナ禍に入って以降、半年単位で放送される朝ドラはスケジュールがずれ込み、参加する者たちの誰もがそうだが、特に看板を背負う俳優は相当なプレッシャーを感じているのではないだろうか。

 黒島の朝ドラ出演は、2014年から2015年にかけて放送された第91作『マッサン』、2019年から2020年にかけて放送された第101作『スカーレット』に続いて3度目。それも自身の出身地である「沖縄」を舞台とした記念碑的な作品での主演である。『ちむどんどん』の看板はさぞかし重かったことと思う。彼女は暢子として、お茶の間を前に笑顔を絶やさず、座長として個性の強い俳優/キャラクターたちの先頭に立って走り続けたのだ。いくら脚本に記された暢子の性格的なものによるとはいえ、これをアグレッシブに表現してみせる黒島の快活な演技のブレなさは、毎朝目にしていて気持ちのいいものだった。

 この暢子の特徴として挙げられるのが、猪突猛進型のヒロインだということ。彼女は一度「こう」だと決めたなら、すぐさまそうせずにはいられない性分だ。場合によっては人の意見も、周囲の視線だって気にしない。父を早くに亡くし、母・優子(仲間由紀恵)に女手ひとつで育てられた四兄妹の三番目である彼女は、責任感の強い姉・良子(川口春奈)と心優しく引っ込み思案な妹・歌子(上白石萌歌)にはさまれた次女。あたたかな“沖縄コミュニティ”や、誰よりも純粋で自由奔放な無頼の徒である兄・賢秀(竜星涼)の存在は、彼女のあまりにも真っ直ぐな性質や、何事にも“ちむどんどん(ワクワク)”できる性格に多大な影響を与えていたのは間違いないだろう。

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 天真爛漫な性格といえば、多くの朝ドラのヒロインに当てはまるものだ(もちろん、描かれる時代背景などによって例外もある)。暢子が天真爛漫だったかといえば、たしかにそうもいえるが、彼女に関してはもっと違う何かだった。“場合によっては人の意見も、周囲の視線だって気にしない”と先述したが、まさにこれだ。厳しい声が上がるほど“やりすぎ”なところも正直あったとはいえ、暢子はどんなときでも自分の意志を貫こうとする女性だった。社会性や協調性ばかりが求められる現実を生きている身からすると、彼女のような姿勢は全面的に支持したい。私たちの現実ではなし得ない生き方を暢子はしていたのである。

 『カツベン!』(2019年)で演じたサイレント映画時代の初々しい若手女優役や、『明け方の若者たち』(2021年)で演じた現代の等身大のヒロイン像など、黒島が務め上げてきたキャラクターは多岐にわたるが、思い返せば朝ドラ『スカーレット』で演じた松永三津という女性も、強烈な自我を持つ存在だった。そして短い出番ながら、ドラマの展開をかき乱した。黒島は身の回りの人々を翻弄する役どころがじつに上手い。その究極の姿が暢子だったのだろう。

 演技とは基本的に、他者との“やり取り”だ。そこでは当然ながらそれ相応のコミュニケーション力が必要とされる。であれば、他者を置き去りに、あるいは翻弄しなければならない演技というのは、これはまた異なるコミュニケーション力が必要とされるはず。ヒロインがただ一人で突っ走るだけではドラマとして成り立たない。黒島は暢子という、ニュータイプのヒロイン像を誕生させたのだ。そんな彼女は息つく間もなく、この秋クール放送の連続ドラマ『クロサギ』(TBS系)に顔を見せる。しかもポジションはヒロインだ。“『ちむどんどん』以降”の黒島結菜は、果たしてどのような演技を展開するのだろうか。

(折田侑駿)

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