ドタバタと始まったヒドン里での夏があっという間に過ぎていく。太陽の日差しに照らされた美しい緑、心地よい夜風と虫の音、カラカラと音がする自転車にゆっくり走る軽トラック、レトロなコーヒー店、おせっかいだけど温かい街の人たち、犬のヌルンジや動物たち、桃のように甘酸っぱい恋……。観る度にほっと一息つきたくなるような『田舎街ダイアリーズ』(Netflixで配信中)が最終回を迎えた。
参考:チョン・リョウォン×イ・ギュヒョンの法廷ドラマ 続きが気になる『弁論をはじめます。』
獣医師のハン・ジユル(チュ・ヨンウ)と警察官のアン・ジャヨン(パク・スヨン/Red Velvetジョイ)、ヒドン里の青年会長でジャヨンの幼なじみイ・サンヒョン(ペク・ソンチョル)の三角関係にジユルの元カノのチェ・ミン(ハ・ユルリ)が加わり、気まずい雰囲気が漂いぎくしゃくした関係が生まれてしまった前話。最終章では、それぞれに出した答えが他の誰かの背中を押す形となる。
まずは幼なじみの関係。ジャヨンが告白の返事をできなかった理由は、断ることでサンヒョンを傷つけたくなかったから。その考えがずるくて卑怯だということも分かっているから余計に苦しかったのだろう。けれどそれ以上に、ジャヨンを理解していたのはサンヒョンの方だった。告白して、振って振られたからといって終わる関係にはならないと不安を払拭し、幼なじみから“兄”にポジションを変更して恋を応援する。どんなジャヨンでも受け止め、愛するのがサンヒョンの愛なのだ。
そして、ミンは自分を愛してくれたジユルはもういないのだと気づく。ジユルへの想いではなく、都合よく美化された思い出に執着していたと気づいたようだ。サンヒョンと同じように、相手に求めるのではなく、自分の気持ちを受け入れることが次に進む第一歩となるのかもしれない。
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15年前の“秘密の友達”は“秘密の恋”に発展し、晴れて恋人となった2人はただただ甘い時間を楽しむ。ヒドン里の人たちに知られないためのスリルあるデートはさらに胸のドキドキを加速。初めての恋にはしゃいでときめくジャヨンのリアル彼女感は、こちらが恋に堕ちてしまいそうになる。
ジャヨンに心情の変化も見られた。母親がいなくなり一人で生きてきた環境で、周囲から“愛情に飢えている”“可哀想な子”と思われているのも知っていたし、世話焼きで“いい人”でいたのは「嫌われたくない」という不安もあった。ジユルと恋をしてから“もっといい人”になりたいと言ったのは、「嫌われてもいい」からもっと周りに恩返ししていきたいという意味だろう。ジユルという存在が何よりもジャヨンを強くしてくれるのだ。
ジョイが演じるジャヨンがリアル彼女なら、チュ・ヨンウが演じたジユルはリアル彼氏と呼んでもいいだろう。都会からきた合理主義で淡白な男が、ヒドン里そしてジャヨンに少しずつ心を開き笑顔が増え、恋のスイッチが入ると積極的に攻め、恋人になれて嬉しそうにはにかむ姿がかわいらしい。
本作でロマンス初挑戦となったチュ・ヨンウは、新人俳優としても大きな前進となったはずだ。次回作となる2023年放送予定のKBSドラマ『オアシス(原題)』では、チャン・ドンユン(『ノクドゥ伝~花に降る月明かり~』)やソル・イナ(『社内お見合い』)らと共演。今度は恋のライバル役として新たな魅力を発揮してほしい。
サンヒョンは、好きな人の恋愛相談をうっとおしそうな顔をしながらちゃんと話を聞いてアドバイスまでする人の良さで、最後に心を掴んできた。視聴者に「幸せになってほしい……」と願わせたら恋の二番手役としては成功だ。ロマンスやラブコメだけに限らず、さまざまなジャンルで演じるペク・ソンチョルを見てみたいと思わせる活躍ぶりであった。本作はフレッシュな俳優たちの今後の飛躍に期待したいドラマとなったとも言えるだろう。(ヨシン)