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『ダウントン・アビー』脚本・原案ジュリアン・フェローズが読者の質問に次々回答!ファンに愛される登場人物の”その後”まで激白

MOVIE WALKER PRESS

英国貴族の壮麗な屋敷を舞台に、グランサム伯爵クローリー家とその使用人たちの生活を歴史上の出来事を織り込みながら描くドラマシリーズ「ダウントン・アビー」。その劇場版第2弾となる『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』が公開中。2010年から放送された本シリーズは、ゴールデン・グローブ賞やエミー賞など数々の賞に輝いた。脚本・原案を手掛けたのは、『ゴスフォード・パーク』(01)でアカデミー賞脚本賞を受賞したジュリアン・フェローズ。

MOVIE WALKER PRESSでは、Twitterにてユーザーから質問を募り、フェローズ本人に答えてもらう“AMA”(=Ask Me Anythingの略。ネットスラング風に言うと「〇〇だけど、なにか質問ある?」といった意味)を実施。本作の制作秘話はもちろん、これまで「ダウントン・アビー」シリーズに込めてきた想いや、世界中を魅了してきた物語はどのように生みだされていたのかまで、フェローズがたっぷり語ってくれました。

■予告編を拝見して、今回はダウントンだけではなく、フランスでの物語も登場しますね。とても楽しみにしております!フランスをもう一つの舞台に設定した理由を教えていただきたいです。(20代・女性)

それは時代考証から決めています。南仏コートダジュールのゴルフ=ジュアンにあるシャトー・ドゥ・ロリゾンというヴィラに関する本を読みました。そのヴィラを所有していたマキシン・エリオットはそこでウィンストン・チャーチルなどのセレブリティをもてなしていたことでも知られています。その本では、1920年代の南仏は夏のリゾート地として非常に人気が高かったと記されていたんですよ。ヴィクトリア朝時代、温暖な南仏は冬場に人気のリゾート地で、夏には暑すぎるとされていて、7~8月はホテルが全部しまっちゃってたほど。9月になると営業を再開していたそうです。私はこのことに興味を持ったんです。

それと同時期、プロデューサーのガレス・ニームは、今回の映画ではダウントンの人々をどこか別の場所、自分たちの安全地帯である土地を離れるような物語にしてほしい、と言われましてね。そこで私は南仏がふさわしいと思い、早速スタッフがロケハンをしてあの美しいヴィラを見つけ、私たち全員が南仏に恋に落ちた、というわけです。

ところが、撮影当時のフランスは、コロナウイルス感染症にまつわる入国規制がしょっちゅう変更されていたため現地に行けたり行けなかったり、ということを繰り返しました。最終的には当初の予定通り、南仏のロケが実現し、非常にすばらしいシーンに仕上がったと思っています。

■「ダウントン・アビー」シリーズを観て、戦争を無視せずシナリオにしっかり練り込まれていたことに驚きました。フィクションの物語であるからこそ、少しシナリオに混ぜる程度でも可能だったんじゃないかと思うのですが、登場人物達もそれぞれの形で戦争に関わり、お屋敷も以前の暮らしが一時的に出来なくなっていきましたね。時代の流れに背かず戦争という大変な史実を練り込む、そこにどういう気持ちや、苦労があったのでしょうか?(30代・女性)

もし自分に使命があるとしたら「昔の人はいまを生きる私たちと同じ」ということを説得力を持って伝えることだと思います。それぞれの時代でマナーや先入観、道徳観は大きく異なり、いまの私たちが見るとひどいと思うようなことも、その時代の彼らは悪いと思っていなかったし、その逆もまたしかりです。ただそれは、人間たちが常にその時代の社会に適応して生き抜いてきただけなんですよ。例えば、第一次世界大戦時は「乳幼児の死亡率は大変なものだったが、それはよくあることだったので、私たちが考えるほど当時の彼らは衝撃を受けなかった」とか。でも実際は、子を失った親は大変なショックでしたが、どうすることもできないことだったために、社会全体に与えたインパクトはそれほど大きいことではなかったとされただけなんです。戦争の時代は、すべての家庭、すべてのコミュニティに影響を及ぼし、戦争に関わりたくなくてもどうしても巻き込まれてしまうんです。

あなたがおっしゃる通り、私は実際に起きた事象を物語に取り入れることが大好きです。そして、観客がそれを見て、その史実に興味を持って自発的に調べてくれることを期待してるんです。特に戦争という題材に関しては、これだけ多くの登場人物が出てくる作品では、立場が違うのに誰もがその影響を受け、共通の経験として描くことができるため、ストーリーを描くのに非常に適したテーマだとも言えますね。私たちを結びつけるものは、私たちを引き離そうとするものよりも大事で、共に生きることの重要性を語らなければならないのです。

■ダウントンが好きすぎて1か月間ロンドンに留学し、ハイクレア城やバンプトン村を聖地巡礼したファンです!前作で登場した国王陛下の従者、リチャード・エリスさんがとても好きなキャラクターだったので今回登場しないと聞き、非常に悲しいです。なぜ退場させたのでしょうか?(20代・女性)

その理由は2つあります。一つは、当時もいまも、エリスやバローのような同性愛者が社会に存在する割合はそれほど変わらないと思いますが、1920年代の英国では、それを認めない社会だったので、ほとんどの当事者は嘘をついて生きなければなりませんでした。それがどれほどストレスフルなことだったか、いまの若い人たちに思い出させたかったんです。この20~30年の間に彼らの人権に関しては非常に進歩しましたが、その進歩の恩恵がどれほどのものかということを、いま一度理解してもらいたかったんです。

そしてもう一つは、バローのキャラクターについてです。エリスはバローとの人生よりも自分の人生のために結婚する選択をします。ですが、バローはそんなエリスを認める一方、彼自身は嘘をつく人生を送る人間にはなりたくない、と表現するチャンスが与えられたんです。しかも彼は、自分の人生を歩むために妥協せざるをえなかった人々に同情の念すら持っている。それを描きたかったんですね。

例えばですが、エリスとバローの関係がハッピーなものだったとしましょう。その場合、彼らはロンドンで別々のアパートを借りながらも、世間には隠れて恋を育んだことでしょう。それ自体全く悪いことだとは思いませんが、劇的に面白い話でもありませんよね。そのため、バローにはもっとドラマチックで彼らしい選択ができる物語を、この作品で用意しています。楽しみにしていてください。

■ジュリアン先生の作品は、多くの登場人物がその場の出来事に複雑に絡み合っていますが、アイデアが浮かんだ時はどのようにしてまとめていますか? また、脚本を書かれる時のルーティンなどがあればぜひ知りたいです!(20代・女性)

実は、私は体系化が上手なキャラではないんです。ライターチームとの作業ルームがありますが、そこにアイデアやあらすじを書いたポストイットをペタペタ貼っていくというような手法はとっていませんね。特にこの作品は登場人物が多い物語ですが、それぞれの物語を一つ一つ動かすわけにはいきませんからね。登場人物を組み合わせて物語を作ることが必要になってきます。

そして、私にとって重要なのは、物語の鍵となる最初のシノプシスです。脚本はプロデューサーに見せて、彼らのリクエストを聞き、OKが出るまで練り込んでいます。物語は作っていくうちにどんどんと変化していくものですが、その骨子となる最初のシノプシスが揺るぎないものでないと不安になるものですからね。

■人生の課題に直面する勇気が出ない時、「ダウントン・アビー」を見返しています。女性たちのたくましさにどれだけ励まされることか…私は、長女で、メアリーの性格にとてもリアリティを感じます。登場人物達のモデルになっている人は、いらっしゃいますか?(50代・女性)

はい。誰か1人を特定はしませんが、現実に生きている人物に影響されていますし、時には要素を取り入れることもあります。この作品の基本的なストーリーは、大きい土地を持つ一族の女性たちが中心です。彼女たちは、自分の生きる世界ではないところから来た人々から、あらゆることを学んでいますよね。そして、彼女たちはその学びによって新たな責任を負うことになります。これは実は、私の友人の実際のエピソードから着想を得たものでした。

例えば、メアリーの亡夫、マシューは中産階級の感覚を持った貴族で、ダウントンにおいてはアウトサイダーです。彼の知的感覚、科学的見地はメアリーに大きな影響を与えます。また、コーラもアメリカ人でダウントンの人々にとってはアウトサイダーですね。こういう2人の部外者は、ダウントンでの当たり前に疑問を呈する役割として登場し、ダウントンの内外をつなぎ、互いに受け入れるようになる役割を担ったんです。

私たち作家は常にこういうネタに目を光らせてるんですよ。まるでそれはリスのようなもので、気になるプロットやストーリーをみつけたら、ほっぺの袋に隠しておいて、必要な時に取り出してるんです(笑)。

取材・文/よしひろまさみち
 
   

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