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「軽い気持ちで観れる映画こそ、いますごく大切」『犬も食わねどチャーリーは笑う』 香取慎吾&岸井ゆきのにインタビュー

MOVIE WALKER PRESS

「軽い気持ちで観れる映画こそ、いますごく大切」『犬も食わねどチャーリーは笑う』 香取慎吾&岸井ゆきのにインタビュー

香取慎吾が『凪待ち』(17)以来3年ぶりに主演を務め、草なぎ剛主演の『台風家族』(19)を手掛けた市井昌秀監督がオリジナル脚本でメガホンをとる、『犬も食わねどチャーリーは笑う』が現在公開中。表向きは結婚4年目の仲良し夫婦だが、裏では鈍感な夫に妻はイライラを募らせており、SNS上で妻たちが恐ろしい本音を書き連ねる“旦那デスノート”に投稿しては、日ごろの鬱憤を晴らしていた。そんなある日、夫もついに“旦那デスノート”の存在を知ってしまい…。ホームセンター勤務で筋トレが趣味の夫、裕次郎を演じる香取慎吾と、妻の日和に扮した岸井ゆきのに、本作の舞台裏やそれぞれの「映画の観方」について、語ってもらった。

■「おもしろい台本は一度読めば自然と頭に入ります」(香取)

――お二人が夫婦役で初共演されると聞いて気になったのが身長差なんです。33センチ差だそうで。

香取&岸井「へ~!」

――ということは、お二人としてはあまり気にしていなかった、ということですか?

香取「そこはあんまり。というより、お芝居してる時も全然気にならなかった(笑)」

岸井「言われてみれば、たしかにそうだったかも…? というくらいの感じですかね(笑)」

――では、お互い共演する前に思っていた印象と、実際に共演してみて感じたことは?

岸井「初めてお会いした時に香取さんから『僕、(台本)覚えてこないから』と言われて、『さすが、香取慎吾さんだ!』と思ったんですよね(笑)。ものすごく正直な方で、最初から最後まで、もうずっと“いつもみんなのそばにいる慎吾ちゃん”のイメージのままでした」

――香取さんは?

香取「いろんな作品で見かけるたびに『素敵な女優さんだなあ』と思っていた矢先に、今回この作品で共演できることになってうれしかったけど、できることならもうちょっとあったかい関係性の役柄でご一緒したかった気もします(笑)。撮影の合間もちょこちょこしゃべってはいたけど、次のシーンに備えてお互いにブレーキをかけるような感じもあったから」

――裕次郎はプロテインを飲んで筋トレに励むガタイのいい男ですが、今回、撮影前の役作りで身体を作り込まれたんですか?

香取「いや、僕はなにもしてないです。現場で、監督から言われたとおりにやっただけで…。筋トレとか大嫌いなんですけど、僕の場合は役のためになにかをするっていう発想がそもそもないんです」

――ちなみに、物語の後半、裕次郎が日和の働くコールセンターに乗り込んでくるクライマックスシーンも印象的でしたが、あの場面はかなりアドリブも入っているのでしょうか?

岸井「いや、全部監督が書かれた台本どおりのセリフでした」

香取「あのシーンは、結構動きも全部細かく決まってたよね」

――直前に台本を読み返しただけで、すぐにあそこまでのテンションでセリフを発せられるものなのかなあと。

香取「だって、おもしろい映画を観終わったあとに友だちと食事に行って感想を言い合ったりすると、1回観ただけでも細かい部分まで覚えてるじゃないですか。それと同じような感覚で、僕は1回台本を読めばだいたい覚えられるんです。…ってその話を前に演出家の三谷幸喜さんにしていたら、『つまり香取くんがセリフを覚えにくい台本はおもしろくないということですね』って言われちゃったんだけど…(笑)」

――(笑)。そういうことですか?

香取「ちょっとそういう感じもあります(笑)。だって印象的な場面とか重要なセリフって、みんな覚えてますよね? 『あのオープニング超カッコよかったね!』とか『あのセリフよかったね』って、全部話せるじゃない?」

岸井「たしかに!」

香取「コールセンターのシーンも1回読んだら、あの感じが自分でイメージできたから」

岸井「そう聞くと『なるほど、そういうことか!』と想像はできるんですけど、いざそれを現場で実際にできるかと言われたら、絶対にできないんですよ。香取さんは本当にすごい!」

――全然違うアプローチの二人が、あのシーンをエモーショナルに演じているわけですね。

香取「でもそこはやっぱり相手の俳優さんの出方によっても変わってくる。自分が思っていた以上のものになったりもするし。自分が想像していたのと違うお芝居をされると、『怖いなあ』と思ったりしますよね。あ、もちろん“いい意味で”ですけどね(笑)。僕はもともとお芝居が苦手というか、『あまり好きじゃない』とか言ったりもしてるんだけど、もし本当に嫌いだったら、別に無理にやらなくてもいいわけで。でも結局なんだかんだ言いながらやっている。それこそ草なぎ(剛)とも時々話すんですけど、お互いの作品を観たりした時に、『あそこのシーンのアレ、やっててすごい気持ちよかったでしょ!』とか『あの場面、すっごい気持ち悪かった!』みたいに、実際にお芝居をやったことがある本人たちにしかわからないような感覚を共有したりすることは、結構あるんです。僕が言ってる“気持ち悪かった”っていうのも、もちろん“いい意味で”ですけどね(笑)」

――“いい意味で!”って、劇中に何度も出てくる裕次郎の口癖ですよね。

香取「さすがにもうちょっとセーブしたほうがいいのかな?っていうくらい、これまで受けた取材で『裕次郎がダメなヤツ!』という話しかしてないんだけど(笑)。この作品は監督が自分で脚本も書いているし、裕次郎のキャラクターには監督自身が投影されているから、僕が取材で『裕次郎はダメなヤツだ』て言えば言うほど、監督にダメ出ししている感じになっちゃうんですよ(笑)。実際にゆきのちゃんから見て、裕次郎って男はどうなの?」

岸井「私は、日和も裕次郎もお互い様なんじゃない?って思う部分もあるんですけど、裕次郎みたいに、なにかと『いい意味で!』って言われたら、私も間違いなく嫌ですね(笑)。でも、実際の香取さんは裕次郎とは全然違って“いい男”ですから!」
■「映画は思いきり自己投影しながら観る派です」(岸井)
――劇中の裕次郎と日和のように、お二人もご自分の感情を吐きだしたり、面と向かって相手にぶつけたりはしないタイプですか?

香取「わりと限界までいかないと自分の感情を吐きだせないところは、裕次郎とちょっと似てるのかもしれない。自分でこらえちゃうというか、涙を流したりすることはほとんどない」

岸井「私自身、悩んでいる最中は誰にもなにも言わないです。映画を観ることでストレス発散をしているんですが、自分でもたまに『このやり方は不健康だなあ』と思うことがあるんです。映画の主人公と重ね合わせることで、自分のなかのモヤモヤを解消していたりするので」

香取「映画の登場人物に自己投影しちゃうんだ」

岸井「そうなんです。つい主人公と一緒に問題解決した気になってしまうんですが、現実の自分は映画館の椅子か自宅の椅子に座っているだけで、なに一つとして根本的な解決にはいたっていないから」

――俳優目線で客観的に観ている部分もありますか?

岸井「ないです! 常に完全に異世界に入り込んで観ています」

香取「へー!」

岸井「逆に言うと、途中でカット割りとかが気になり始めたりすると『この映画、私にとってはあんまりおもしろくないんだな』てことなのかもしれません」

香取「僕は映画を観ながら常にカット割りとかカメラ位置がめちゃくちゃ気になります。『ここは円形のレールかあ…』とか考えながら観てる(笑)」

岸井「え~!?すごい!」

香取「いや、別に全然すごくない(笑)。もうそんなふうにしか観られなくなっちゃってるだけで。でも一方で普通にちゃんと楽しめている自分もいるから、カット割りを気にして客観的に観ている自分と、主観で観ている自分とが、同時に観ている感じかもしれない」

岸井「たしかに私も『トップガン マーヴェリック』を観ている時なんかは完全に入り込んじゃって、自分が操縦している気分でわんわん泣くんですけど、あとからその映画のことを思い出すとカット割りも覚えてたりするから、潜在的に刷り込まれているのかもしれません」

――もはや自然とそういう観方ができてしまうと。

香取「僕なんかはもう、ずっとエンタメの世界で生きてきてしまった生き物なので(笑)。そういう観方が身体に染み付いちゃってるんですよね」
――では最後に、改めて本作の見どころをお願いします。

香取「この映画ってまさにいまの時代にピッタリの映画だと思うんですよ。ここ最近『この映画からこういう思いを受け取ってほしい』みたいな、いわゆるメッセージ性の高い作品が増えているような気がするんだけど、この映画にはそういったメッセージがなにもない(笑)」

――言い切ってしまって、いいんですか(笑)?

香取「いいんです(笑)。すごく軽く描いている」

――でも、観ていて結構しんどい部分もありましたよ。

香取「まぁ、たしかに(笑)。『これってホラー?』と思うようなところもありながら、コメディなのに泣けちゃったりするところもあって。皆さんの明日がなにか一つでも変わるような映画になったらいいなっていうくらいだから、作品としては全然重たくない。でもそれって、いますごく大事なことだと思うんですよね。現実世界ではコロナ禍だったり、近くで戦争が起きていたりして、とても一人では抱え切れないような出来事が多すぎる。でもこの映画は軽い気持ちで笑って観てもらえる。おいおい『あの映画よかったなあ』って思い出してもらえるようなものが作れた気がするから、そこがいいなと思っているんです」

――本作における新たな挑戦を挙げるとしたら、どこになりますか?

岸井「いままでにない経験をしたという意味では、肩車のシーンですかね」

香取「実はこの映画にはワイヤーアクションがあるんです。観た人は『どこで?』と思うかもしれないですけどね」

岸井「そう!ワイヤーアクションしてるんですよ(笑)!」

――香取さんの挑戦は?

香取「僕はいつも別に挑戦とかもあんまりしないんですけど…でもまぁ、普通はいくらカッコ悪い役のお芝居でも、カメラの前だとカッコつけずにいられなくて、どうしてもカッコよく写ろうとしてしまうものなんだけど、あえて今回はそれを極限までなくしていくっていうのが、自分なりの挑戦だったのかもしれない。といっても、わざとやるんじゃなくて、あくまで偶然に頼るというか。歩いている時にたまたま足が絡まってコケないかなぁとか、スマホをポケットから出す時にちょっと引っかからないかなぁとか思ったりするんだけど、僕は経験値が高いから、いつも自然ときれいに見えるような動作をしちゃうんですよ(笑)。それをなるべく外すようにするのが、自分でやっててもちょっとおもしろかった」

――なるほど、カッコ悪くて嫌な裕次郎を演じるのが、香取さんの挑戦だったわけですね。実は編集部の担当者とも「裕次郎がムカついてしょうがなかった!」と話していたところなんです。

香取「でしょう?」

岸井「わかる!」

――「スーパーアイドルの香取慎吾が演じているのに、ここまで観客をムカつかせられるのがすごい!」って(笑)。

香取「よかった! 最高の褒め言葉ですよ、それ」

取材・文/渡邊玲子

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