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『”それ”がいる森』相葉雅紀に聞いた仕事観「ふと自分の変化を感じられる瞬間を大切にしたい」

MOVIE WALKER PRESS

『リング』(98)、『事故物件 恐い間取り』(20)など、ジャパニーズホラーの第一人者として知られる中田秀夫監督の最新作『“それ”がいる森』(9月30日公開)。物語は、田舎で農家を営む田中淳一(相葉雅紀)のもとに、東京で暮らしているはずの息子、一也(上原剣心)が突然訪ねてきたことから始まる。しばらくの間、淳一と一也はともに暮らすことになるが、近隣の森では怪奇現象が多発し、町では住民の不審死や失踪が相次いでいた。“それ”と呼ばれる得体の知れないなにかが、人々に恐怖をもたらす。本作にて8年ぶりの映画主演、およびホラー映画初主演を務める相葉雅紀に、本作の見どころはもちろん、初挑戦に際しての心構えや仕事観、役者のやりがいについて聞いた。
■「何事もじっくり考えたうえで伝えるようにしています」

本作を「ホラーであると同時に人間ドラマでもある」と話す相葉は、ホラー初挑戦だと意気込みすぎず、普段どおりに役のイメージを膨らませていった。バラエティ番組で、農家を営む人々と関わる機会が多かったことは、淳一の役作りに活きたと振り返る。「僕、農家さんの手を見るのが好きなんです。なんというか…説得力があるんですよね」と、演じる際には手を土で汚し、農家の人々への敬意を込めた。

“説得力”という点においては、淳一の父親としての成長も重要と考えた。相葉いわく「ニュートラルな人」である淳一。「義父とソリが合わず、そこで反発して闘うわけでもなく、自分が家を出ていく。その選択が、淳一という人を表していると思う」と分析するが、息子との再会や奇怪な出来事との遭遇をきっかけに変化していく。この点については監督と話し合い、「『ここから、淳一のなかに責任感が芽生えていったと思う』というポイントを決めて、わかりやすく変化を演じた」という。

監督とセッションを重ねながらも、相葉が心掛けているのは、台本どおり演じること。そのなかで「台本どおりにやりたいんだけど、『どうしても、ここがつながらないんだよな』とか『ここ、難しいな』ということがあった時には、『僕はこうしたい』という意見を監督に持っていきます。意見を交わしたうえで、監督が求めるものに柔軟に応えたい」と話す。その時大切にしているのは、伝え方だ。「一つ、言葉が違えば印象が変わってしまう。思ったことをすぐ言うのではなく、じっくり考えたうえで伝える」。これは、相葉が日ごろから気をつけていることでもあるという。

中田監督からは「目を見開く、驚いた時に息を吸うといった、感情の動きを表現する方法を教えていただきました」と、恐怖のアウトプットについて指南を受けた。また、監督は演出にあたり、リアクションの大きさや緊迫度を数字で表すといい、相葉はこの演出について「演じやすかった」と振り返る。「小数点まで使うんです。すごいな、細かいなって思いました」と笑った。中田組の印象について「とにかく楽しそう」と、いきいきと話す相葉。「みんながテンション高く『もっとこっちの角度のほうが良いかな?』と話し合っていて。まるで小学生が、好きなものを手に取って遊んでいるような感じ。本当にホラーが好きなんだなと思ったし、僕も見ていて幸せになりました。こんなにも熱を持って、楽しそうに撮る現場に参加できたことがうれしかった」。作品にも、そうした熱が反映されているはずだと手応えを感じている。

■「どの仕事でも常に緊張感を忘れずにいたい」

主演として、現場を引っ張る立場だった相葉。しかし「座長だからこうしなきゃ、という気持ちはなかったです。どの現場にも、熱意と愛情を持っています」と、気持ちは常にフラットだ。一方で、「なんでも緊張感を持ってやりたい」と、仕事への向き合い方について語る。

「作品のことを真剣に考えていれば、緊張感は自然と生まれますし、なにより怖さを感じます。というより、“怖い”と思わないとダメだと思う。なにをやるにしても、経験を重ねても、適度な緊張と怖さはずっと持っていますね」。『NHK紅白歌合戦』の司会、天皇陛下の即位を祝う国民の祝典――いくつもの大舞台に立ってきた相葉だが、それでも毎回、緊張に襲われるという。今作への参加にあたっても同様だ。「緊張してしまうのはもう、どうしようもない。だけど準備を重ねて、『ここまでやったんだから失敗してもいい』とあきらめられるくらいまで自分を持っていく。そうすると、大丈夫になる」と、自身のマインドを明かす。そして「失敗してもあまり引きずりません。ゆっくりでもいいから、前に進んでいたいんです。走らなくてもいいから、止まりたくはない」と、仕事観を真摯に語った相葉。「まさに今日、こういった取材も緊張します。ビビリなのかもしれないけど(笑)」と交えるジョークや受け答えからも、初心を貫く相葉の程よい緊張感とまじめな姿勢が感じ取れた。

そうした相葉の朗らかさもあってか、現場はアットホームな雰囲気だったと振り返る。「(一也の担任、北見を演じる)松本穂香ちゃんには、『このお酒、美味しいから飲んでみて』って紹介しました。いま思えば、プレゼントすればよかったな。申し訳ないことしちゃった(笑)」と、取材中に後悔。「僕は、自分が好きなもの、いいなと思ったものは、紹介したりプレゼントしたくなるんです。いつも嵐のメンバーに紹介していたんですけど、撮影のころはメンバーがいなかったものだから(笑)。穂香ちゃんがターゲットになってしまいました」と、ほかにも置き型のスピーカーなど、松本にはいろいろなものを紹介したという。

息子役を演じた上原剣心については「すごく根性がある子。僕に出来ることがあるならしてあげたいと思っていたけど、監督ともしっかり意見を交わして、『もう1回、もう1回』とめげずに挑んでいる姿を見て、大丈夫だなと思った」と、現場での上原の姿を思い浮かべ感心した表情で語った。相葉がジャニーズ事務所に入所したのは中学2年生の時、現在の上原とほぼ同じ年ごろだった。当時の自分と上原を比べ「上原くんはしっかりしているし、ハングリーですよね。僕のころにも、そういう気持ちを持っていた子はいたかもしれないけど、少なくとも僕にはなかった。本当に、部活の延長線上という感じで、仲間と楽しい時間を過ごしている感覚でした」と振り返る。相葉も過去には、上原と同じようにジャニーズの先輩と共演し、その背中を見て学んできた。なかでも大きかった出会いについて問うと、長瀬智也の名前を挙げた。「ドラマに出始めた最初のころ、長瀬くん主演の作品に出させてもらったことがあるんですけど、すごく甘えさせてもらいました。当時、長瀬くんの車の隣に乗せてもらったり、勝手に長瀬くんの楽屋に入って待っていたり(笑)」と、楽しそうに振り返った。

取材時は、舞台『ようこそ、ミナト先生』を終えたばかり。改めて、役者のやりがいについて「特に舞台は、やっているときはすごく辛いし、稽古も大変。怒られ続ける日々ですから。映画もそうですが、思うように演じられることってなかなか少ないんです。それでも、ふと自分の変化を感じられる瞬間がある。そうして乗り越えた時や、芝居に手応えを感じた時にはやりがいを感じますし、楽しいです」と語る。そして「出来上がったものを観てくださった方から感想をもらうと、やってよかったなって本当に思う」とし、『“それ”がいる森』は、ホラーが苦手な人でも観られると思う」と繰り返した。というのも、「ラジオにメッセージをいただくんです。『ホラー映画に初挑戦なんですね。私は怖くて行けないけど頑張ってください』みたいな。でも…観られると思うんだよなぁ。本当に、大丈夫だと思います」と、多くの人に届けたい思いだ。普段ホラーが苦手だという人も、この機会に新しい扉を開いてみてはどうだろう。

取材・文/新亜希子
 
   

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