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「劣等な楽器で時間をむだに」木の棒でピアノを侮蔑する父親に彼は

幻冬舎ゴールドライフオンライン

抗えぬ運命に絶望する彼に訪れた、唯一愛した女性との再会。次第に惹かれあう2人の時間が、30年の時を経て動きだす。※本記事は、チェ・ジョンシク氏の小説『ジャズ・ラヴァーズ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

突然、彼はヒョンソクが弾く〈ウェーブ〉を聴きたい衝動に駆られた。この曲もやはり聴いて覚えたのだろうと彼は思った。

「ヒョンソク、以前にも〈ウェーブ〉をよく弾いていたのか? 」

チュ先生が質問した。ヒョンソクは首を横に振った。チュ先生は重ねて質問した。

「〈ウェーブ〉の楽譜を見たことは? 」

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ヒョンソクはまた首を振った。

「では、ラジオで聴いた曲を耳で覚えて弾いたのか? 」

ヒョンソクはうなずいた。先生は顎でピアノを示した。ヒョンソクは少し躊躇ったが、ピアノへ向かって歩いていき、その前に腰を下ろした。彼が演奏を始めようとした時、窓の外でセミの鳴き声が聞こえた。ヒョンソクは立ち上がり、窓を閉めて戻ってきた。彼は、一度深呼吸をしてからピアノを弾き始めた。

彼の演奏は完璧で優雅だった。その上、容易に演奏しているように見えた。長い間その曲を演奏してきたかのように。彼の演奏は、原曲と比べても、遜色のない演奏だった。ただの素人ピアニストにすぎないというのに。ヒョンソクは、その曲が持つ特徴的なあの柔らかなリズムを理解していた。静かな湖の水面に投じられたなめらかな小石が、やさしく水面を跳ねるような、そんな音を理解していた。

生徒たちはお互いに顔を見合わせ、ヒョンソクが披露する技巧に驚いていた。ヨンミはヒョンソクに笑顔を向けた。

チュ先生にはほほ笑む余裕などなく、ヒョンソクが持つ才能に驚嘆していた。彼はその才能の意味を察した。彼は衝撃を受け、驚いた表情を浮かべながら心の中で考えていた。

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