top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

障害を持つ弟のために「介護士」になった女性の葛藤とは?

幻冬舎ゴールドライフオンライン

どんな困難があろうとも痛みを分かち合い、それでも生きることを愛する者たち――。切なくも温かい、ハートフルなヒューマンドラマ。※本記事は、袴田正子氏の小説『飛蝶 刻(とき)を旅する者たち』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

2020年 夏の風子

幸多は散歩が大好きだ。窓辺によく立つのは外が見えるから。

昔も家の窓から身を乗り出して声を上げたりして、苦情の種を撒いた。

マスクを嫌がる幸多に、かけないと連れて行かないと強引にかけさせ外に出ると、日差しがとても強い。幸多には可哀想だが、散歩は早めに切り上げたほうが良さそうだ。

丈夫そうに見えるが、幸多はよく熱を出す。幸多に限らず、ここの施設の子たちは総じて抵抗力が弱い。もしクラスターでも発生すれば重症になる子も多いだろう。

広告の後にも続きます

そうなったら、こんな小さな施設はすぐ潰れるから、みんなかなり神経質になっている。

その上、子供たちは親が週末会いに来られないので荒れていて、職員のストレスもピークに近い。

いつものようにハウスの入り口の看板の前で幸多が立ち止まった。白地にピンクでエンジェルハウスと書かれた字の周りを小さな天使たちがラッパを吹いたり、花を持ったりしながら舞っているこの看板を幸多はとても気に入っていて、必ずここで立ち止まる。

看板の奥にある施設の上の夏空には雲一つない。白い壁と青い屋根のこのエンジェルハウスは施設にいる子の親の設計。メルヘンチックな看板もやはり、子供を預けるイラストレーターが描いてくれた。

エンジェルハウスは、障害児を持つ親たちが彼等の老後を心配して金を出し合って作った施設だ。同じような子を持つ親が土地を提供してくれたので、こんな葉山の環境のいい所で周りも気にせず格安に使用出来ている。

今は公的資金も出るようになってなんとか軌道に乗ってきて、新しい園児を受け入れる余裕も出来た。

  • 1
  • 2

TOPICS

ジャンル