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『赤いナースコール』最後に生き残ったのは? 最終回の結末から考察ドラマの進化を考察

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ドラマプレミア23『赤いナースコール』©「赤いナースコール」製作委員会

 9月26日に放送された『赤いナースコール』(テレビ東京系)最終話では全ての真相が明かされ、終わらない悪夢のような幕切れとなった。

 参考:【写真】電動ノコギリ男に関与していたアリサ(福本莉子)

 313号室の患者たちが殺された理由が、2年前のコンビニ殺人事件の復讐であることを知ったアリサ(福本莉子)は、翔太朗(佐藤勝利)の病室へ急ぐ。真っ暗な病院で生き残った人々がうごめき、関係者の口から真実が語られる。玲子(渡辺真起子)はアリサに犯人の正体を明かし、榎木田(鹿賀丈史)は翔太朗に連続殺人のあらましを話して聞かせる。“チャイコフスキー犯”石原(板尾創路)は工藤(池田鉄洋)に自らが成し遂げた犯罪についてとうとうと述べる。持ち去った身体の一部は「戦利品」ではなく、「命のはかなさを教えてあげたお代」。サイコパス特有の歪んだ自意識は、最後まで一貫していた。

 2年前の殺人事件で殺された被害者は大学生の三上誠一(大門崇)で、榎木田と元妻・西垣(浅田美代子)の実子であり、玲子が自分の子どもとして育てた。犯行時に接客した店員が後藤田(森田甘路)で、滝中(橋本淳)、下塚(大水洋介)もそれぞれ目撃し、店内にいた松井(木村了)は誠一が殺される様子をスマホで撮影していた。彼らは関わり合いになることを恐れて警察に通報せず、結果的に誠一は見殺しにされた。

 誠一の事件はテレビでも報道され、世間は殺された誠一を「正義中毒」「自業自得」と中傷。週刊誌も大々的に取り上げ、記事を津田(山本浩司)が執筆した。二次被害は収まらず、記事をベースにしたドラマのプロデューサーが山之内(小堀裕之)、シナリオを手がけたのが翔太朗だった。死者を罵り、遺族に追い討ちをかける風潮は現実でも目にする。第三者として口を出すなら、どうして殺される前に助けようとしなかったのか。関わり合いになることを恐れる一方、無関係なはずの人間が心ない言葉を浴びせる。形を変えて続く暴力の連鎖に対抗するため、直接的な報復に至ったという動機には説得力があり、ドラマに真実味を与えていた。

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 大方の視聴者は電動ノコギリ男が榎木田という結末を予想していたが、アリサの関与は意外な盲点だった。アリサが後藤田を殺した犯人を知っていて言わなかったのは、事前に榎木田と接点があったため。知らないように振る舞っていたのは全て演技だった。アリサ役の福本莉子に、私たちはまんまと騙されていたことになる。アリサが共犯だとわかると様々なことが符合する。第4話で翔太朗は一度殺されかけたが、榎木田はアリサの反応を見て翔太朗を殺すことを諦めたのではないか。後藤田に翔太朗と榎木田がつながっていると吹き込まれたアリサは、計画が翔太朗にばれていないかと心配したに違いない。

 アリバイがないことや姉・渚(岬あかり)の写真、二重人格説などでアリサの関与は疑われていたが、決定的な証拠はなく最終話での種明かしとなった。第1話の翔太朗が見た夢と恋愛要素を絡めた点は技ありだった。翔太朗が生き埋めにされる夢はアリサの報復を匂わせており、以降の展開を通じて視聴者はアリサが加害者側にいる予感を抱く。翔太朗とアリサが恋人関係にあることは、事件の関係者を同じ病室に集める仕掛け、アリサを隠しておく煙幕、翔太朗を最後まで生き延びさせる理由になっており、運命に引き裂かれる2人というドラマチックな要素も付加していた。

 『赤いナースコール』という作品全体を通して、考察ドラマの進化と定着を感じた。榎木田の「なかなか狙い通りには当たらんもんだ」というセリフがドラマを観る側の考察を指すかはさておき、最終的な着地点を見越して各話のラストにショッキングなシーンを配置し、「これまでで一番難しい」という声も上がるほどミスリードで視聴者を翻弄した。女の子とおもちゃのサルなど未回収の伏線もあるが、脚本家である翔太朗を主人公にし、患者たちとの会話でそれまでの伏線を整理して誘導するなど、視点を共有する工夫も見られた。

 地上波の限界に挑戦し、可能性を広げたことも特筆される。轢死や焼死、チェーンソーなどの殺害方法、血のりをふんだんに使ったセットや切断死体の特殊造形など効果的な画づくりでスプラッター要素を追求した。これらは、残虐描写そのものより、コンプライアンスに配慮しながらどこまで表現できるか見極める点に狙いがあったと推察される。こうした凄惨なシーンを支えていたのが全編にわたって漂うそこはかとないユーモアで、意外性と安心感を生むバランスは池田鉄洋や森田甘路ら俳優陣の貢献が大きい。

 『赤いナースコール』というタイトルは、血を想起する視覚イメージと往年の名作ドラマの定番感を備えていた。ナースコール自体にさしたる意味はなかったが、謎めいた響きが関心を喚起し、持続させる象徴的なネーミングだった。(石河コウヘイ)

 
   

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