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一体、何を見せられているのか? 『LAMB/ラム』茶一郎レビュー

映画スクエア

 本作いろいろなテーマを読み取ることができると思いますが、大きくは「人は過去の喪失とどのように向き合っていくのか」という奥さんの物語が記憶に残りました。この主人公である奥さんマリア、旦那の弟ペートゥルはキリストの使徒ペトロからでしょう。思えばこの『LAMB/ラム』のオープニングは聖夜から始まります。聖夜に羊人間アダちゃんを母羊を身籠った。しばしば映画において「羊」「子羊」はキリストと重ねられますが、そう考えるとアダちゃんはキリストか?神秘の子羊か?マリア、ペトロ、子羊とやたらに全編に張り巡らされたキリスト教的なモチーフ、やや本筋の母親の喪失の物語とは有機的には絡まない表面的な印象も抱いてしまいましたが、聖母マリアが処女受胎、神から子を授かりましたが、この『LAMB/ラム』のマリアは神から子を奪ってくるというキリスト生誕を超変化球的に語ろうとする何とも気持ちの悪い「現代の聖書」だという事が見えてきます。

 ただし聖書と異なってフォーカスされるのはキリストたるアダちゃん以上に母親マリアだという点は、同様にキリスト生誕を変化、逆転させたホラー映画史上最も有名な作品『ローズマリーの赤ちゃん』、『ローズ“マリア”の赤ちゃん』とやろうとしている事は似ているのかなという感じですね。本作の宗教的な要素は、かなり観客が寄り添って解釈しないといけないですが。

さいごに

 この少し狂った「大人のお伽噺」であり、居心地の悪いブラックコメディ・スリラーであり、気味の悪い「現代の聖書」としても見る事ができるという『LAMB/ラム』ですが、軸となるのは「人は過去の喪失とどう向き合っていくのか?」。トンデモない、これは衝撃的としか言えない展開に観客を持っていきますね。ある種、自らの癒しのために子を奪って、自然を搾取していた羊飼いである主人公たちに対する自然からのカウンターパンチと言うべきでしょうかね。ちょっとこんなぶっ飛んだ映画があって良いのか?これはぜひ映画ご覧になってみてください。気持ちの悪く、狂った映画だった今週の新作『LAMB/ラム』でございました。

【作品情報】
LAMB /ラム
公開中
配給:クロックワークス
©️2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSO

茶一郎
最新映画を中心に映画の感想・解説動画をYouTubeに投稿している映画レビュアー

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