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『ドライブ・マイ・カー』に続きA24×Apple TV+ドラマ出演 西島秀俊の海外進出の可能性

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西島秀俊

 9月6日に最終回を迎えた『ユニコーンに乗って』(TBS系)の“小鳥さん”が反響を呼んだ西島秀俊。今をときめく映画スタジオ・A24が制作するApple Originalシリーズ『Sunny(原題)』に出演することも決定している。やはり濱口竜介監督作『ドライブ・マイ・カー』が第94回アカデミー賞で大きな注目を浴び、主演の西島の演技が絶賛されたことが大きいだろう。

 『ドライブ・マイ・カー』は、第94回アカデミー賞で日本映画初となる作品賞を含む4部門にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞するという快挙を成し遂げた。西島に関しては「主演男優賞にノミネートされるべきだった」という多くの海外ファンからの意見も。何より、ニューヨーク・タイムズ紙がその年を代表する俳優を選ぶ企画に、唯一のアジア人として彼を選出している。ちなみに西島がこういった“日本人初”の快挙を果たすのは、これが初めてのことではない。2017年にはファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニ本人直々からの指名で、広告モデルに抜擢された。その後、4シーズンも連続で起用された日本人は、彼以外にいない。

 西島のキャリアはとても長い。子供の頃から映画が好きだった彼は大学生の時、ドラマ『はぐれ刑事純情派5』(テレビ朝日系)で俳優デビューを果たしてから、数多くの作品に出演してきた。彼自身、映画美学校に通っていたこともあるほど、シネフィルであるのも周知のこと。しかし気鋭監督のアート系作品に出演するほか、お茶の間のトレンディドラマへの出演も多いことが印象的だ。国内では最近だと『ユニコーンに乗って』の小鳥さんはもちろん、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)の筧史朗、『真犯人フラグ』(日本テレビ系)の相良凌介など、ソフトな役を演じがちなイメージがあるが、海外から見える西島は、おそらくもっとシャープでメランコリックな存在だろう。

 海外からの認知が高い黒沢清監督の『ニンゲン合格』で映画初主演を果たした西島。黒沢とはキャリア初期からの長い付き合いで、その後も楳図かずお原作の『蟲たちの家』や、日韓合作のホラー映画『LOFT ロフト』、『クリーピー 偽りの隣人』などに出演。ホラーやサスペンスなど、顔の表情が曇っているような役柄が多い印象だった。同じく海外でも高く評価されている北野武の作品『Dolls』でも、捨てた婚約者の面倒を見ることになる主人公を好演。『ドライブ・マイ・カー』で彼が打ち出した主人公像も、妻を失い、喪失感と虚無感を抱えるメランコリックなものだった。そんな彼の表情の演技も海外からの高い評価につながったわけだが、『Sunny(原題)』では『セレステジェシー』などで知られるラシダ・ジョーンズ演じる主人公の夫を演じることに。

 しかし、この夫役が“ただの夫役”ではなさそうだ。彼が演じるのは、優秀なロボット工学者「Masa Sakamoto」。なんと息子と共に謎の飛行機事故で行方不明になるのだ。ジョーンズ演じる主人公・スージーは京都在住のアメリカ人だが、夫が行方不明になったことから彼が働いていた電子機器メーカーが製造した家庭用ロボット「サニー」を、彼女の喪失を埋めるためにプレゼントされる。そこからサニーと二人で友情を育みつつ、徐々に西島演じる夫や息子に何が起きたのかを探ろうとしていく、というのが大まかなあらすじらしい。監督はNetflixシリーズ『ワンダーラスト:幸せになるためのセラピー』(2018年)を手掛けたルーシー・チェルニアク。本作の原作『ダーク・マニュアル』は日本在住のアイルランド人作家コリン・オサリバンの著書ということで、日本で暮らす外国人独自の視点がシリーズにも生かされることだろう。

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 『ドライブ・マイ・カー』をきっかけに、西島の世界進出的な動きはより増えてくるはず。もともと、イラン人監督アミール・ナデリの映画『CUT』に出演した経験もあって、それもこれが初めてというわけでもない。さらに、これまでヴェネチア国際映画祭を中心に、何度も彼は海外の映画祭に出席している。むしろ、彼の海外進出は“ようやく”と言えるものかもしれない。ただ、そこで気になってくるのは「どこまで進めるのか」だ。『Sunny』も、単発の映画ではなくシリーズ(ドラマ)作品ということで、撮影期間も長いだろう。海外の監督やキャスト陣とともに仕事をすることが初めてではないにしても、長期的な撮影現場で求められるのは円滑なコミュニケーションだ。現在、世界で活躍する日本人俳優……例えば、『ブレット・トレイン』でもその勇姿を見せた真田広之や、同じく知名度の高い渡辺謙のように、ハリウッドで活躍できる存在になるためには、どうしても英語力が問われてしまう。しかし、その心配はご無用。すでに2011年、ヴェネチア国際映画祭で『CUT』のプロモーションインタビューを受けている際に、彼の流暢な英語が披露されていたからである。

 彼の英語は、それこそ時々単語などに詰まっているものの、ネイティヴが話すような自然な口語表現が多く、意思疎通は難なくこなせる印象だ。

 英語ができれば、おそらく話は早い。また今回、制作にA24が絡んでいることにも注目。というのも、本スタジオは近年アジア系の作品/俳優をかなりプッシュしているような印象だ。特にアカデミー賞作品賞にノミネートされた『ミナリ』や、スタジオ史上最大のヒットと名高いミシェル・ヨー主演の『Everything Everywhere All At Once(原題)』など、アジアに視点を向けた作品が高評価を得てきた潮流にいる。そんな中での西島のキャスティングは、当然かもしれないし、やはり配信後にはさらなる海外オファーが重なる予感がするのだ。

 渡辺謙も真田広之も、日本人俳優がより世界進出しやすい地盤を整えてきた先人。ただ、なんとなく刀が登場するアクション映画など“海外が思う日本”的な作品でのキャスティングが目立ってきた。だからこそ、西島のような「サムライ」的なイメージが皆無なカメレオン俳優が海外でどんどんオファーをもらうようになることに、さらなる意義を感じるのである。是非、期待したい。(ANAIS)

 
   

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