トラブルはフードの散乱だけではない。最もショックだったのが「アカウント停止」の処分だ。
「配達員には自己紹介ページがあるのですが、ウーバーを始めた目的について、ふざけ半分で『新しい出会いのため』と書いたら、誰かに通報されたんでしょうね。いきなりアカウントを凍結されて働けなくなってしまったんです。また、こちらがマジメに配達していても、AIに『不正な時間稼ぎ』と判断されて処分を受けたことも。誤解が解けて今はこうして働けていますけど、やはり怖いですよ」
やや手こずっているのが、最近増えている看板のないデリバリー専門の「ゴーストレストラン」だ。
「地下駐車場の奥とか、雑居ビルの中とか、とにかく場所がわかりにくいんですよ。ようやく現地にたどりつくといろんな店舗名のプレートがドアの前に貼ってあるんです。ひとつの厨房で10店舗分以上のメニューを作っていることもあって、『よくできるなぁ』と感心しちゃいますよ」
広告の後にも続きます
自由気ままな仕事に見えても、配達の仕事は客商売という一面もある。
「失礼ながら、ホームレス一歩手前のような格好で配達している人を見かけたこともあります。でも、運んでいるのは他人様の食事。不快な思いをさせたくないので、匂いには特に気をつけています。夏には汗やら雑菌やらの匂いを消すために、Tシャツは熱湯につけてから洗濯していました。やはりフードを届けた時に『ありがとう』って言ってもらえるのがうれしい。体が動くうちはこの仕事を続けていきたいですね」
真鍋さんはこう言うと、夕方からの配達に向けて注文が取れそうなポイントへと電動自転車を走らせた。
ここまでがフードデリバリー配達員のリアルな経験談だ。もしも興味を抱いたら、公式サイトなどで登録方法などを調べてほしい。
オオハシーズ氏は配達員を志す高齢者にこうアドバイスを送る。
「やはり体力的な問題があるので、普通のママチャリでは長く続かないかもしれません。電動アシスト付き自転車をオススメします。また、スピード重視の若者向けに見られがちなスポーツバイクも、実は体への負担が少ないので、体力増進を図りたい方は試してみてもいいかもしれません」