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『初恋の悪魔』林遣都が味わう喪失感の物語に差した光 坂元裕二らしい切なさに満ちた脚本

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『初恋の悪魔』©︎日本テレビ

鹿浜(林遣都)と馬淵(仲野太賀)が雪松(伊藤英明)の元へと向かい、留守を預かっていた小鳥(柄本佑)が車を動かそうと外へ出ている間に、コレクションされていたハサミを持って、摘木(松岡茉優)に襲い掛かった弓弦(菅生新樹)。そこへ駆けつけて身を挺した森園(安田顕)。家に戻ってきた小鳥は玄関先についた血痕を見つけ、恐る恐る家の中へと入る。そして鹿浜と馬淵に電話を掛けるのだが、ハサミのコレクションルームで弓弦に襲われ拘束されてしまう。異変を察知して戻ってきた鹿浜と馬淵だったが、弓弦は飄々とした様子で二人を出迎えるのである。

参考:『初恋の悪魔』林遣都演じる鹿浜の人間的な成長 物語に散りばめられた数々の疑問点 

 9月24日に放送された『初恋の悪魔』(日本テレビ系)は最終話を迎えた。このドラマの終盤を費やして描かれてきたミステリーに、ひとつひとつ決着がつけられていく。一連の事件を起こしていた“シリアルキラー”の正体は弓弦であり、父である雪松はその隠蔽をおこなっていたということ。8年前に起きたアウトドアクラブでの事件の際に、雪松から被害者の少年の靴を脱がせて川に投げ込むよう言われたことから、弓弦はその後の事件でも被害者の靴を脱がせていたということ。そして、馬淵の兄の朝陽(毎熊克哉)を殺したのは、やはり雪松だったということ。

 自分の家で刑事として、シリアルキラーに手錠を掛ける鹿浜。非常に大掛かりな一連の事件の顛末は比較的あっさりとまとめあげられ、後半は鹿浜が味わう喪失感の物語へと徹していく。事件から1カ月の月日が流れ、家に転がり込んでいた馬淵と摘木(元の人格に戻っている)を追い出した鹿浜は、一人寂しい暮らしへと逆戻りする。ふと4人でカラオケで歌った「CHE.R.RY」を口ずさみ、馬淵たちがいたときのように部屋に靴下を撒き、家の模型を作って“5人”の人形を配置する。

 夢か現か曖昧なタッチで描かれる、別人格の摘木との別れのやりとりは、いかにも坂元裕二脚本らしい切なさに満ちた一連であり、このドラマが伝えたいことがすべて詰め込まれている。「世界中たくさんの暴力はあるし悲しいことはあって、僕が生きてるうちにそれがなくなることはないかもなって思います」と語る鹿浜が続ける、「大事なことは世の中は良くなってるって信じること」という言葉。そして「仲良くなれる人って、いて当たり前じゃないと思うんです」と語る別人格の摘木が続ける「大事なのはちゃんと自分のままでいることだなって」の言葉。

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 その直前の好きなものを羅列していく鹿浜と摘木の姿も然り、釈放されたリサ(満島ひかり)に摘木が会いにいくシーンで即座に“別人”であることを見抜くリサと、その後の喫茶店でのやりとりも然り。名言めいたひとつひとつの台詞の言葉選びよりもシチュエーションとしての奥行きの豊かさがこの最終話後半にはあふれていた印象だ。とりわけ馬淵から渡された新住所の紙を捨ててしまった鹿浜が、部屋の真ん中でゴミ袋をひっくり返して転がっていくリンゴを持ち上げた時の情感は卓越しており、改めてこのドラマ全体が鹿浜という人物のための物語なのだと気付かされる。

 ラストシーンでいつもの4人で自宅捜査会議を開き、模型の前でマーヤーのヴェールを剥ぎ取ろうとする。かなり多方面へと枝葉を広げていった終盤の展開から、警察署で日の当たらない者たちのユニークな推理刑事ドラマという序盤のスタイルへと回帰させる。それでもこの邸宅の地下には不気味な座敷牢のような部屋があるし、鹿浜という奇人は真っ当な刑事に復帰しているし、隣人もシリアルキラーではなかったし、彼らは友人であるという大きな違いがある。とても綺麗な物語の収め方であった。(久保田和馬)

 
   

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