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『ちむどんどん』は暢子が“呪い”を解いていく物語だった 最終週でたどり着いた“青い鳥”

Real Sound

『ちむどんどん』写真提供=NHK

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第24週「ゆし豆腐のセレナーデ」のサブタイトルは素敵な響きを感じるが、実際はゆし豆腐はコメディに使用されていた。第23週では賢秀(竜星涼)と清恵(佐津川愛美)が結ばれ、第24週では歌子(上白石萌歌)に智(前田公輝)がついにプロポーズ。歌子は幼いときから智一筋だったので長い長い片思いであった。

参考:草刈正雄&草刈麻有、『ちむどんどん』第122話出演 「楽しく撮影する事が出来ました」

 『あさイチ』(NHK総合)にゲスト出演した高瀬耕造アナが「アベベの呪い」が解けたと語り、もうそれ以上の解釈はないと感じた。さすが高瀬アナ。アベベとは比嘉家で飼っていた豚でアババとアベベがいて、最初にアババを子供たちが泣きながら食べた。でも歌子はけろっと「アベベはお正月に食べるの?」と聞いてそのブラックな無邪気さが面白かったのだが、食べられた豚の呪いが比嘉家――そして躊躇なく食べた(?)歌子にかかったため、恋が実らなかったという解釈は楽しい。

 歌子との関係をはっきりさせるべく智が比嘉家の食事会にやって来ると、暢子(黒島結菜)はなんでゆし豆腐を持ってこなかったのかと騒ぎ出す。サブタイトルのゆし豆腐はこのためのものだった。その後も暢子は歌子と智が抱き合いそうなタイミングでなかに割って入ると歌子を自分で抱きしめる。ちむどんどんすることに正直に、心の赴くままに動く暢子なのであった。

 話を戻そう。呪い、といえば、智がなかなか自分から言い出せないとき、歌子が歌を歌いだす。<つらい思い出は歌で消えるよ>という歌詞に、智はこれまで描かれてきた以上に傷ついていたのかなと筆者は思った。勝手に暢子と結婚するつもりになってひとり相撲のすえ振られて恥ずかしくて恥ずかしくて人を好きになることがこわくなって。でも歌子の歌を聞くと自分の若気の至りが消えていく。歌子の歌は智にかかっていた呪いをも解いたのだ。

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 呪いという言葉は便利である。昔の童話は魔法や呪いでほぼなんでも片付けてきた。『ちむどんどん』を重子(鈴木保奈美)の言う「南の島からやってきた女の子の冒険」譚として捉えると、数々のお金に関する問題などが曖昧でも気にならなくはなる。

 第119話で暢子がやんばるに和彦(宮沢氷魚)と健彦(三田一颯)と共に移住し、野菜を育てて生きていこうと考えることも、青い鳥を求めて旅をしてきたけれど、すぐそばに青い鳥がいたと知るという童話『青い鳥』的な構造と考えることができるだろう。

 暢子の冒険は、第15話からはじまっている。走ることが得意で、食べることが大好きで、男子にかけっこで勝ってはサーターアンダギーを戦利品としてもらっていた。それがじょじょに男女の身体的な違いによって走りで勝てなくなりアイデンティティが崩壊、「この村も沖縄も自分が女だということも全部大嫌い」と優子(仲間由紀恵)にぶちまける。そのとき優子は「この村に生まれて、女に生まれてよかったと思うときが来ると思うよ」と諭す。

 あれから何年も経過して、暢子は「この村に生まれた。女の子に生まれた。それは誰にも変えられない。それがいま、うちはうれしくてうれしくてたまらないわけ」と言い、やんばるに帰ることを決める。やんばるで就職しないで東京で料理人になりたくなって(ちむどんどんして)。恋愛にさっぱり興味のなかった暢子が和彦に恋人がいても抑えきれない恋をして(ちむどんどんして)結婚して子供も生まれて、イタリア料理の修業をしたけど沖縄料理の店をやりたくて(ちむどんどんして)、やんばるに戻って生活も仕事もしたくて(ちむどんどんして)、ちむどんどんするままに(心のままに)行動していくのは、父・賢三(大森南朋)が第3話で、「行き当たりばったりの人生」「大和世(やまとゆー) 戦世(いくさゆー) アメリカ世(あめりかゆー)とそのときの状況に合わせていく。そうやって生き抜いてきた……」と語っていたことそのものだ。彼もまた民謡歌手を目指し料理人を目指しながらも最終的にやんばるに戻った。暢子は賢三の道をなぞっている。

 なんとなく80年代になったばかりのまだ昭和にしては、地方に移住して農業する2022年あたりの若者の価値観みたいなムードが漂ってきて、時代感覚がよくわからないのだが、それもまた魔法の世界と思えば気にならない。

 東京での暢子がなんでも思うまま、うまくいっていた理由は魔法に守られていたのだろうか。最初のうちはシークヮーサーの魔法に頼っていたが、いつの間にかシークヮーサーがなくても魔法が使えるようにパワーアップしていたのかもしれない。

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