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『竜とそばかすの姫』が描く新たな『美女と野獣』 重なる“ベル”と2人の物語の違いとは?

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『竜とそばかすの姫』©︎2021 スタジオ地図

 『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送延期となっていた細田守監督作『竜とそばかすの姫』(以下『竜そば』)が、ついに9月23日に放送される。

参考:『竜そば』のベルから『ONE PIECE』のウタへ メディアの進化から見た“音楽アニメ”

 主人公・すずはインターネット上の仮想世界<U(ユー)>で歌姫・ベルとして絶大な人気を集める。主人公の「ベル」という名前や、ベルが正体不明の凶悪な風貌の獣のアバター・竜との交流を深めることなど、本作がディズニーの長編アニメーション『美女と野獣』から着想を得ていることはファンの間では周知の事実だ。(※)

 実際に<U(ユー)>でベルが歌う姿を観て、「ディズニープリンセスに似ている」と既視感を抱いた人も多いだろう。それもそのはずで、本作のベルのキャラクターデザインを担当したのは『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンツェル』でもキャラクターデザインを手がけたジン・キム(Jin Kim)。つまり『竜そば』は細田守監督の解釈で徹底して作り込まれた、現代版『美女と野獣』なのだ。

 今回はディズニー版『美女と野獣』との比較を交えながら、『竜そば』に受け継がれたヒロイン像について考えていく。なお、一部物語の核心に迫るネタバレを含む描写があるので注意願いたい。

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■なぜ『竜そば』では美女と野獣は結ばれないのか

 『美女と野獣』と『竜そば』には、共通点も多いが物語のラストに明確な違いがある。『美女と野獣』のベルは、魔法が解けて野獣の姿から人間へ戻った王子とハッピーエンドを迎える。一方で、『竜そば』のベルは野獣を救ったことで1つの物語を終えて、現実の恋へと踏み出すかのような描写でラストを迎えるのだ。

 『竜そば』が公開直後に賛否両論を呼んだ理由の1つとして、ラブストーリーとしての消化不良への言及が相次いだ。典型的な「王子と姫が結ばれる」ストーリーが好きな筆者としても、正体は誰であれ、野獣と恋心を通わせる展開を密かに期待していたことは否めない。

 しかし、ヒロインが問題を解決していくことのカタルシスが必ずしも恋愛に結びつかないことは、見ず知らずの人と繋がれる世界というストーリーラインがあるからこその、新しいヒロインの持つ強みであるようにも感じられた。SNSのフォロワーと親しくなったり、掲示板で同じような悩みを持つ人を探したりと「知らない人と心を通わせられるインターネット空間」のリアルを私たちは知っている。そこで恋愛感情が芽生えることももちろんあるが、親愛や友情が生まれることもあるだろう。

 本作の野獣の正体は、すずが目星をつけた大人たちからは大きく予想が外れた、まだ14歳の子供であった。良くも悪くも、相手の正体を知らなくても、心を通わせることができる昨今。そんなリアリティを持って「美女と野獣」のフィクショナルな寓話としての良さを再構築した結果、「美女と野獣は結ばれない」ラストになったのではないか。

■すずにとっての「アンベイル」の意味

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