男子の国枝慎吾、女子の上地結衣が準優勝した、2022年の全米オープンテニス・車いすの部。男女シングルスはドロー数が「8」から「16枠」に 拡大されて日本選手8人が出場し、大きなインパクトを残した。
そしてもう一つ、この競技の未来にとって大きな意義があったのは、ジュニア車いす部門(男女シングルス、ダブルス)が初開催されたこと。グランドスラムレベルの大会で初めてであり、そこでも日本人選手の躍進があった。
ファイナルセットでリードするも……
ジュニア車いす部門・女子シングルスに日本選手としてただ一人出場した高室侑舞(ゆま)。 今大会では一回戦を6-3、6-4で、準決勝を4-6、7-5、6-3 で勝利。10日(現地時間)に行われた決勝では、17歳のジャジ・モレイラ・ラナイ(ブラジル)と対戦した。リラックスした様子でプレーするラナイに対し、高室は第1セットを落とし、第2セットは序盤の硬さの取れた高室が圧倒。ファイナルセットでは高室が6-5とリードし、第12ゲームではマッチポイントを迎えて優勝を目前にする。しかし、タイブレークに持ち込まれて5-7、6-2、6-7で敗れた。
敗れたとはいえ、終始堂々としたプレーに、観客から惜しみない拍手が送られた。だが、意外にも「こんなにたくさんのお客さんがいる中で自分のプレーを披露したことはないので、ずっと緊張していました」と試合後はリラックスした表情で話した。

今年5月の車いす世界国別選手権(チーム戦)に出場し、国際大会出場の経験はあったが、個人戦としては初めて挑む国際大会がグランドスラムという大舞台になった。
広告の後にも続きます
「いざ試合となったときは、ネガティブにはならないように、(ボールが)入る、入らないではなく、楽しくやることを意識しました」
会場の広さ、観客の多さに圧倒されながらも、「試合の途中で応援してくださる方たちの声は聞こえた」と冷静な一面もうかがえた。
試合を見守っていた姉の高室冴綺が試合直後、落胆する妹を長い時間かけてしっかりと抱きしめ、声をかけている姿が印象的だった。

実は姉の冴綺は東京パラリンピックに出場した車いすテニスプレーヤーで、自身も今大会の車いす部門でグランドスラム初出場を果たしている。
競技者として先輩である姉の目には、はたから見ていても緊張していたのがわかったという。
「準備の面で『こういうときはどうしたらいい?』という相談を受けました。それでも、妹は自分でしっかりと戦い切る準備はしていたのかなと思います」
そんな冴綺の隣で侑舞本人は笑う。
「なるようにしかならないと思っていました」