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「北へ50km、東へ20km」の夫と息子の病院を行き来する母

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※本記事は、中村俊郎・眞知子・潤氏の書籍『なかむら夕陽日報【文庫改訂版】』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】笑顔で「できたんや」に困惑…音楽に出会った統合失調症の二男

縦の糸、横の糸

4 ピクセルとラボの仲間

二男が病後最初の仕事(週三日フルタイム)を辞めた後は、朝出かけて夕方戻るといった定期的に通える場がなくなってしまいました。再び仕事を探す力もなく、生活習慣も乱れてきます。たまたまハローワークで知った訓練に行くことを、長男と一緒に勧めました。迷い迷いの決断でしたが、翌二〇一六年の正月が明けてからの三カ月間に、面白い体験をすることになりました。

二男が受けたのは、ハローワークの求職者支援訓練(「ピクセル」でのパソコン技能訓練)です。同期生は二人のお姉さまです。先生は正司先生。まだまだ話せない二男は、その中で黙って勉強をして隅っこで弁当を食べていたらしいのですが、お姉さまたちは優しく構ってくれていました。というのは終了に近づくにつれ、頻繁にメールを交わしているからです。

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気になって聞いてみました。すると若い方のお姉さまの発案で、卒業の日に渡したい、先生へのサプライズを制作中だと言うのです。お礼のプレゼント、DVDについての連絡をし合っていました。出演者はこの四名と特別出演の校長先生。でも正司先生は盗み撮りされての出演です。

校長先生に悟空役を頼んで「かめはめ波」シーンを撮ったこと。その間、正司先生が部屋から出ないように、しとやかな年長のお姉さまはあれやこれやと四苦八苦して話題を絞り出していたとのこと、などを話してくれました。

私は面白く聞きました。最後のシーンには二男が作詞作曲した先生のテーマソングが流れるのだそうです。びっくりです。よくぞ二人のお姉さまは、物言わぬ息子にうまく関わってくれました。

仕事を探す気力のなかった二男が、ピクセルを終えた勢いで、病気を明かさず二つ目の就職を探しました。木に心ひかれて、また三カ月のトライアルで正規雇用というシステムに一念発起し、額縁屋さんを選びますが、今度はフルタイムな上に、春秋には褒章の発注で忙しくなり土曜も休めません。折しも採用が決まったのは春でした。

かなり頑張ったと思いますが表情が変わってきました。まだまだ二男は、相方と息を合わせたり手早く作業したりする力を取り戻せていないのですから。ひと月後腰痛で伊勢の整形病院へ入ります。当時は夫も津で入院していましたから、間に住む私は北へ五〇キロ、東へ二〇キロと二つの病院を行き来しました。

保険手続き等の会社との緊急対応は、回復期の夫と連絡を取りながら会社へ走りました。退院までが長引くと聞き、二男の避難場所にならないようにと事情を話して退院させてもらいました。綱渡りでしたがホッとしました。

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