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元妻の家に行ったら既に別の男がいて…。その光景を見た元夫が思わず取った行動とは

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元妻の家に行ったら既に別の男がいて…。その光景を見た元夫が思わず取った行動とは

雑誌から抜け出したかのような、美男美女の夫婦。

豪邸に住み、家事や子育てはプロであるハウスキーパーに任せ、夫婦だけのプライベートタイムを満喫する。

世間は、華やかな暮らしを送るふたりを「プロ夫婦」と形容し、羨望のまなざしを送っている。

法律上の契約を不要と語り、「事実婚」というスタイルをとる、ふたりの行く末とは?

◆これまでのあらすじ

慎一と美加は、SNSで多くのフォロワーを集める事実婚のインフルエンサー夫婦。しかし、慎一は美加が元夫・緑朗の子を妊娠したことを知り、別れを決意。そんな彼にハウスキーパーの里実が近づくも、その現場を娘に見られてしまい…。

▶前回:高級マンションの最上階が汚部屋だった…。家政婦が見てしまった、美人妻の裏の顔



Vol.11 最悪で最善の決断


慎一は、焦っていた。

なぜなら、小学校から帰宅したばかりの娘の華に、ハウスキーパーの里実に迫られている場面を見られてしまったからだ。

「お、おかえり」

慎一は、サッと里実から体を離し、何事もなかったかのように華を出迎えた。

「ねえ、お腹減ったー。ごはんなに?」

華は何も言及しないが、その声はどこか震えている。里実も取り繕うように平静を装った。

「あ、ジャージャー麺があります。すぐ食べられるように準備してあるので、用意しますね」

「えー、ジャージャー麺。またぁ?」

慎一も同じセリフを里実に言ったにもかかわらず、「そんなこと言うんじゃない」と思わず華を叱ってしまった。

だが、ここで慎一には予想外の出来事が起きた。焦りで言葉が強くなりすぎてしまったのか、華が突然泣き出してしまったのだ。

「ご、ごめん、華」

「パパのバカー!」

結局、そのまま華は自室にこもってしまった。

慎一の横では、里実が他人事のように微笑んでいた。


やさしい嘘


「え、そんなことが…」

華が寝た後、慎一はこれまでの里実との顛末を正直に美加に報告した。

「実は、最近、里実さんが僕に過剰にアプローチをしてくるようになっていたんだ。それで危険を感じた僕の方が、彼女に退職を促した…」

「そして、里実さんに慎ちゃんが誘惑されている現場を華が見てしまった、と」

「現場といっても、少々触れられただけだよ。何もしていない」

美加の方が、残酷な裏切り行為をしているはずだが、慎一はなぜか後ろめたく、おどおどしながら経緯を説明していた。

「まぁ、これは事故よ。仕方ないわ。私はかまわないけど、華のケアをしないと」

しかし、ここで華への信頼感を回復したとしても、今後離れてしまう身であるということを慎一は思い出した。

― 結局は、他人になるんだよな…。

「…」



そのとき、究極の案が、慎一の頭に浮かんだ。

華は嫌な気分になるだろうが仕方ない。愛する妻と娘を守りながらも、ふたりから離れるための名案だと慎一は確信し、それを口にした。

「ごめん、前言撤回。何もないというのは嘘。実は何度も彼女と関係があった」

「え?」

「内緒にすることは、もうできないと思うから白状するよ」

もちろん、そんな事実はない。これは、慎一がついた、真っ赤な嘘だ。

美加の世間でのイメージを保ったまま、仲良し夫婦が突然別れる。

そんなショッキングな事実を世間に自然と納得させるためには、「自分が悪者になる」この手段が最適だと慎一は考えたのだ。

恐らく慎一の元には、彼女のファンから激しい攻撃が来るだろう。だが、美加に対する余計な詮索は避けられる。これ以上の決断があるだろうか、と慎一は思った。

里実には退職金代わりにいくらか包んで、話を合わせてもらうつもりだ。彼女なら喜んで乗ってくれるはずだ。

しかし、美加から出てきた言葉は意外なものだった。

「え、彼女だけは、無いな、と思っていた、のに…」

「どういうこと?」

「いや、なんでも」

― 彼女の能力を認め、信じていたわけではなく、実は見下していた?

人のことは言えないが、このセリフを聞き、美加の腹黒さを改めて認識したような気が慎一はした。

「ごめん。だから僕は近々ここを出て行こうと思う。広告の契約が終わったら、インスタライブで別れることを発表しよう」

「本当に?…それがあなたの答えなの?」

美加は、自分のこともあるからか、反論ができないようだ。

我慢しない、強要しない、個人を認めること。

それがふたりのルール。慎一は、その権利を行使したまでだ。だが、美加が納得できないと感じているような不満げな顔を見て、慎一は気づく。

お互い理解し受け入れていたと思っていたふたりのルールが、所詮は片方の妥協で成り立っていたことに。



惚れた弱みに付け込まれた。

恐らく、美加も最初の結婚では緑朗に対しそうだったのだろう。

愛し合っていたはずなのに、自分自身が我慢ばかりの結婚生活に耐えられなくて、ふたりは破綻した。

やはり僕らは似た者同士なのではないか、と慎一は思わず苦笑いする。

その笑みで、美加もつられ笑顔を見せる。凍り付いていた場が、にわかに和らいだ。

美加は、冷蔵庫に向かい、「お腹すいた」と里実が作ったジャージャー麺を取り出す。

夫が関係を持った女(嘘だが)が作った料理を、平気で食べられる天真爛漫さ。

― やはり、美加は自分には受け止められない…。

人を惹きつけ、トップに立つ人物には、常人の価値観を超越した大胆さがある者も多い。

きっと、慎一が美加に惹かれていたのは、凡人の自分にはない、美加の常人離れした感覚に憧れを抱いていたからなのだろう。

慎一は彼女への恋心を、そう結論付けることにした。


ほどなくして、新居が決まったタイミングで、慎一は美加と暮らしていた代々木上原のマンションを離れることになった。

3年ぶりの悠々自適のひとり暮らし。

事実婚の解消のために住民票も異動したのだが、手続きのあまりのあっけなさが逆に慎一の胸に沁みた。

― これで美加の人生の記録から、僕の存在が消えることになるんだな…。

だが、これでお腹の子どものことで、もう悩む必要もないことに慎一は安堵していた。

美加に聞いたところによると、緑朗はお腹の子どもの認知をし、華に対しては然るべきタイミングが来るまで黙っているつもりだという。



引っ越し後、慎一はしばらく何もやる気が起きなかった。

できるだけ晴れやかな気分になろうと、海を臨む有明のマンションに居を決めたが、周囲にはファミリーの姿が多く、心が余計沈んでしまう。

慎一は、ただただ家の中でボーっとして時間を埋める日々が続いた。

そんな生活の中で慎一が気にしていたのが、全く情報を更新できない自身のInstagramアカウントの存在だ。

フォロワーからは異変を心配するコメントが寄せられているが、まだ何も言えない。

関係各所への調整もあり、公表まであと少し時間を要する。それまでの辛抱だ。

― でも、少しは投稿しておかないと、マズいよな。

慎一は気持ちを切り替えようと、重い体を無理やり起こした。荷物をほどこうとすると、ふと気づいた。

美加が暮らす家に置いていく予定だった、家の鍵が見つかったのだ。

「いい機会かもな…」

慎一は、Instagram投稿用の写真を撮影しなければという強迫観念もあり、前の住居へ車を走らせるのだった。



慎一が、前住居へ到着したのは夜の19時過ぎ。

ポストをのぞくと、郵便物は一切入っていなかった。時間的にも美加と華が帰宅していることを確信しながら、そっと玄関の扉を開ける。

「ん?」

リビングからにぎやかな声が聞こえてきた。誰か来ているのだろうか。男の声も混じっている。

リビングの扉のガラス窓から、慎一は中を覗いた。

「お父さん!食べすぎー!」

「残すの勿体ないだろ。ほら、華も肉を食べなさい」

焼肉の匂いを家中に漂わせながら、美加と華、そして緑朗で鉄板焼きのプレートを囲んでいるようだ。



「華、焼きそば作るぞ。美加も2人分食べなきゃな!」

「私はもうお腹いっぱいよー」

美加も華もシャツに短パンのラフな部屋着姿で、3人は楽しそうに笑い合っていた。

他人には一切見せられない『映えない姿』であったが、そこには幸せそうな家族の肖像があった。慎一がつけ入るスキは一切ない。

慎一は、玄関に鍵を置く。Instagram用の写真を撮ろうと訪れた慎一だったが、そんな考えはもう消え失せていた。

― サヨナラ、美加…。

どん底の気分のまま、慎一は誰にも気づかれずに家を出ていった。


▶前回:高級マンションの最上階が汚部屋だった…。家政婦が見てしまった、美人妻の裏の顔

▶1話目はこちら:1度結婚に失敗した女が次に選んだのは、収入も年齢も下の男。彼とだったら、理想の家庭が…

▶Next:9月28日 水曜更新予定
次回最終回。インスタライブで別居を公表する二人。その裏で里実が暗躍し…


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