top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

阿部サダヲの存在感と演技力 『アイ・アム まきもと』が起こす“奇跡”に心癒される

Real Sound

 『アイ・アム まきもと』は柔らかな手ざわりのヒューマン・ドラマだが、誰にとっても他人事ではなくなった孤独死の現実を捉えつつ、人を人と思わずに合理化と効率化を進める現代社会の仕組みにNOを突きつけている作品でもある。その根底にあるのは、主人公・牧本の徹底した「利他の精神」であり、まっすぐに人の死を思う心にある。逆に言えば、牧本のようなイノセントさを持つ“変わりもの”でなければ、孤独死した人の死を悼むような非効率的なことは現代社会で許されないのだろう。

 この作品を支えているのは、何をおいても阿部サダヲの存在感と演技力である。世の中の常識から外れていて、はた迷惑なのに、おかしみがあって、愛らしい。悲しい出来事があっても、なんだか暗くなりすぎない。どこか“天使”にも見える牧本を今演じられるのは、やっぱり阿部サダヲだけだと思う。

 阿部サダヲと水田伸夫監督は、初主演だった映画『舞妓Haaaan!!!』(2007年)、『なくもんか』(2009年)、『謝罪の王様』(2014年)と続いて4度目のタッグ。これまでは宮藤官九郎脚本によるエキセントリックさをはらんだコメディーだったが、ウベルト・パゾリーニ監督『おみおくりの作法』(2015年)が原作、『鎌塚氏』シリーズで知られる倉持裕脚本による本作はオフビートなムードのドラマに仕上がっている。なお、水田監督は阿部サダヲも出演した坂元裕二脚本のドラマ『anone』(2018年/日本テレビ系)の演出も務めていた。このドラマで阿部サダヲが演じた小心でイノセントな男・持本舵は、牧本壮にどこか重なる部分がある。

 牧本がコツコツと積み重ねてきた行動が報われるクライマックスと、思いもよらない出来事、そしてラストに起こる“ある奇跡”が観る者の心を癒してくれる。『アイ・アム まきもと』は今こそ観ておくべき作品だと思う。観終わった後、確実に心の何かが変わっているはずだ。(大山くまお)

  • 1
  • 2

TOPICS

ジャンル